King & Prince「MAGIC TOUCH/Beating Hearts」のカップリング曲「雨音」と「Seasons of Love」の歌詞をもとに、小説を書きました!
私は曲の歌詞からストーリーを構成する“歌詞小説“と言うものを描いています。
しょうれんの間で揺れてください…!
前のお話はこちら。↓
イケメンすぎる痴漢?
「まじで!ありえへんでしょ!?駅員さん達もどう思います!?俺みたいなイケメンが、こんな地味な女のケツ触りたいと思います!?客観的に見て、どう考えたって、ないでしょ!」
大声を上げてしまったので、そこらにいた人のちょっとした騒ぎになってしまい、私とその彼は次の駅(もともと降りる予定の駅だったのでちょうどよかったのだが)で降ろされ、駅員室に連れていかれた。
「お嬢さん、本当にこの彼だった?」
「このレベルのイケメンが、君ごときの女の子に痴漢しないでしょう」と駅員さんの顔にはっきりと書いてある。
「後ろを確認しないで手を掴んでしまったので…」
私も、「さすがにこの彼はないだろう」と思い始めていて、しどろもどろになる。
すると別の駅員が、40代くらいの冴えないオヤジを連れて駅員室に入ってきた。
「今、駅の改札を切符も入れずに突破して、かなり慌てて、通行人とぶつかって倒れて騒ぎになっていました。事情を聞こうとしたら、かなり取り乱していたので連れてきました」
「あーこのおっさん!さっき俺の隣に立ってた人や!」
「そういえば…私も見覚えある!」
おじさんが私の顔を見て、顔面蒼白になって駅員さんの腕を振り払って暴れ出しそうになり、2人がかりで押さえつけられる。
駅員「痴漢、しましたね?」
おじさんは無言でうなだれた。
そして、もう1人顔面蒼白の人物…私だ。
ゆっくりとロボットのようにカクカクカク…と首を横に向けると、隣にたたずむそのイケメン君の頭から、怒りのオーラが湯気みたいに頭から立ち上っているのが見えた気がした。
「無実の人間に冤罪をかけて、どうしてくれるん?」
イケメン君の仕打ち
「重い〜!手が限界ー!」
痴漢の濡れ衣を着せてしまったことに平謝りする私に彼が命じたことは、自分の荷物を持って家まで送ること。
傘を忘れてしまったらしいので、傘に入れてあげること。(本日2回目)
当然、断れる立場ではないため、ひぃこら言いながら、2人分の荷物を持って執事のように傘をさす。
2人分の荷物は結構重いし、何より彼が結構身長が高いので、それに合わせて傘をあげている二の腕がプルプルしてくる。
「おいっ!ちゃんと傘上げろや!さっきから頭に当たっとんねん!」
言われた直後はしっかりと傘をあげるけど、また手が疲れて下がってくると彼の頭にカツンカツンと当たって、舌打ちされる。
「あぁ~っもうええわ!よこせ!」
腰をかがめていることにイラついたのか、彼が私の手から傘をぶんどる。
ひぇーん、怖いよぉ~…あれ?
しかも関西弁だから、余計怖いんだよ。
なんでこの人関西弁なんだろ?私と同じで転校生なのかな?
「岸花凛…」
突然、フルネームを読み上げられ、「ヒェッ!?」と変な声を上げる。
「な、なんで名前…!?」
「ここに書いてあるから。」
彼は、傘に書かれた名前を指さした。
「ふん。なんや、甘ったるい名前なやぁ。俺は、甘いもんは嫌いやし、男に守られて生きていくのが当然とか思うとる甘えた女がいっちばん嫌いやからな!
お前みたいに、男がみんな自分のこと狙ってると勘違いして痴漢痴漢騒ぐ女もな!」
「いや、痴漢されたのは本当だし!
それに男に守られて当然とか思ってないから!ちゃんと文句も言わずに、こんな重い荷物持ってんでしょーが!」
とは言ったものの、そりゃ紫耀くんのように
「女の子は黙って男に守られてればいいんだよ!」
とか言ってくれたほうが、そりゃ嬉しいけどさ…。
はぁぁ~。
さっきの紫耀くんとの幸せな相合傘とは真逆の所業…。
さっきまでのロマンチックでキュンキュンした気持ちはいずこへ…?
「ふん!持ち物に名前とか、小学生か!」
「名前書いといたら、あなたみたいになくしたりしないんですー!
で、そっちは?」
「は?何がや?」
「勝手に人の名前知って、ずるいじゃん。名前、教えてよ。」
「なんで会ったばっかのやつに、教えなあかんねん!絶対嫌やわ」
「ずっる~!」
「しかも今日限りでもう会うこともないねんから、名前なんて教える必要ないやろ」
ま、それもそうか。
あれ?
でも、さっきからなんかだいぶ歩きやすくなったなーと思ったら、そうか、彼が傘をさしてくれているからだ。
濡れないように、しっかりと私寄りにさしてくれている感じ。
「ちゃんと私にも傘さしてくれるんだ?」
もしかして、口は悪いけど、意外にいい人…?
「はぁあ!?勘違いすんなや!お前のためにやってる訳やないで!?俺の荷物が濡れたら困るからさしてるだけや!」
「はぁ~っ!?」
なんだよ、全然いい人じゃなかった…。
「ここ」
洗練された顔に似合わない、古びたアパートわ指差す。
歩いている途中から、まさかとは思っていたけど、たどり着いたそのイケメン君の家は、かなり私の家の近所だった。
こんな性格の悪い奴が、近所に住んでるなんて最悪…。
「はい、荷物どうぞ」
「ご苦労さん」
荷物を渡して、代わりに傘を受け取る。
「ずいぶんと、不用心ですね」
「はあ?」
「見ず知らずの人間に、自宅を教えるなんて。」
そう言って、不敵な笑みを浮かべてみせた。
「お、お前…!何かする気やないやろうな!?」
「さあ、どうでしょう~?自宅知っちゃったんで、嫌がらせとかやろうと思えばし放題だけど、どうしよっかな~」
そう言って、不敵な笑みを浮かべながら走り去ってやった。
へへーんだ!仕返しだよ~!
別に何かするつもりはないけど、これで不安な気持ちに駆られるがいい!
か弱い女の子に、重たい荷物を持たせた罰だもんね!
(まぁ、根本は私が悪いんだけど…)
ちょっとしたいたずらだよ~だ!
「あんのアマぁ…!」
最後にちょっとした仕返しをしてすっきりした気分で走り去る私は、彼が体の右半分をずぶ濡れにしながらも、私に優先的に傘をさしてくれていたことなんて、知る由もなかった。
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