キンプリ妄想歌詞小説「Seasons of Love」20話「宙 (ソラ)」気づいたら手の中の1番大切なものが飛んでいった

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私の小説はキンプリの楽曲の歌詞をもとにストーリーを構成しています。

今回は「宙 (SORA)」です!

またソラって思いますよね?「Koi-wazurai」の小説でも2回も使っていました…だってこの曲好きすぎるんだもん(^_^;

そしてソラを初めて聞いたときに、最初に浮かんだストーリーが実はこのお話でした。芸能界に挑戦するために、地元の彼女を置いていて、後からすごく後悔すると言うストーリー。

「言葉が宙に待って」とか「君に届いて」とかの歌詞が、アーティストが誰かに思いを込めて歌を歌っている様子を連想させたので…。

 

 

2/21続きをアップしました!

最近、山田くんがキンプリを可愛がってくれている話題で盛り上がっていたので、山田くんのお名前だけお借りしました。

この小説ではご本人のキャラクターや本当にあったエピソードなどを盛り込んだ演出をこころがけていますが、山田くんに関しては全面フィクションです。(山田くんの情報あんま知らないので。スイーツ男子ってとこくらいです)

 

そして、なんか今回、どこで切っていいかわからず、めっちゃ長くなってますが、一応「宙」の世界観のシーンまで…。

 

これの前のお話はこちら

 

Seasons of Love King & Prince歌詞小説ソラ

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選ばれし者(紫耀サイド)

「紫耀!あんたさっき共演した若いアイドルに電話番号聞かれて、渡したって言うじゃない!?あんなわけわからないの相手にするのやめなさい!」

 

 

ちっ、早速マネージャー、社長にチクリやがったな…。

 

 

紫耀「別にちょっとぐらいいいじゃん。俺だって、熟女専じゃねーし」

社長「だから、そのためにうちの会社の福利厚生があるんでしょう?」

紫耀「そういうの、全然ときめかないんだもん…」

社長「贅沢言わないの!」

紫耀「へいへい、で?今日は何件?」

社長「今日はこの後、トーク番組の後、2件ね。どちらもVIPだから失礼のないようにね」

紫耀「ほーい。あー、体力持つかなぁ〜?」

社長「そこは心配してないから」

紫耀「いやいや、社長と出会った頃から、俺だってもう年取ってるし」

社長「何言ってんのよ、年を重ねてますます色気が増してるじゃない?」

 

そう言って社長が、撫でるように俺の体を触った。

 


 

花凛と別れたあの日から、もう3年が経っていた。

東京に出て、1年後にはデビューが実現した。

 

 

 

「いやぁ~、デビューしてから本当にすごい勢いですよねぇ!平野くんなんて、上京してからたった1年でデビューしてるんだから、本当にシンデレラボーイですよねぇ。なんでも社長直々に見出されたとか?まぁ、このルックスですからねぇ、世間がほっとかないですよ。ほんと、”選ばれし者”って感じですよねぇ!」

 

今日はグループでトーク番組に出演している。

司会の方が、ほとんど経歴のない短い年表を示しながら解説している。

 

 

確かにはたから見たら”大抜擢”とか”トントン拍子”というやつなんだろう。

みんな俺の事を「何でも持ってる」と羨む。

 

その裏に何があるかなんて知らずに…。

 

 


 

 

最初の相手は社長だった。

花凛とちゃんと付き合っていきたくて勢いでレンタル彼氏を辞めてしまった時、廉の父親に「代わりに廉を働かせる」と脅され、早急に金が必要だった。

レンタル彼氏の客だった社長には、再三「芸能界に興味はないか」と誘われていて、相談してみると、その場で100万円ポーンとキャッシュでくれた。

 

 

その代わり、社長を抱くことを条件に。

 

 

もうそういった汚い世界から抜け出そうと思って相談しているのだから、もちろん抵抗はあったが、 社長とはレンタル彼氏時代に何度も関係を持っていたから、そこまで抵抗はなかったとも言える。

 

とにかくこれが最後。

これでやっと抜け出せる。

そのためにこの金が必要。

この金がなければ、廉があの汚らわしい世界に引きずり込まれてしまう。

 

俺には拒否する選択肢などなかった。

だから社長を抱いた。

 

 

「合格」

 

 

終わった後、社長は満足そうに微笑んだ。

「何が?」と少し疑問に思ったが、今の”行為”に対して「満足した」という意味なのだろうと軽く考えていた。

とにかく最後の仕事を終えたと思うと、ホッとしていた。

それが始まりだとも知らずに…。

 

 

 

それからは、社長がアポを取ってきた相手を次々に抱いた。

大御所の女優や大物司会者ばかり。

 

「うちの平野をよろしくお願いします」

社長は俺を貢ぎ物かのように差し出す。

 

 

俺が満足のいく”仕事”をすると、その司会者の持っている番組のゲスト出演が決まったり、大御所女優とのドラマの共演者にキャスティングされる。

 

芸能界は周りを淘汰するほどの容姿を持っているものが生き残れる場所だと思っている人は多いだろう。

しかし、芸能界を目指しているような人はみんなそこそこのレベルには達している者たちばかりだ。

それでは、同じ顔面レベルの中でどうやって爪痕を残すか?話術かお笑いセンスか?

 

人気が出るための条件なんてシンプルだ。

視聴者はたくさん見れば見るほどその人を好きになる。

つまり、画面に映ってから何をするかではなく、とにかく画面に映ることが大事なのだ。

いかに多く、その席に座れるか。

その席に座ることさえできれば、ただにこにことしているだけでも一定の効果はある。

つまり、その席を獲得するための”夜の仕事”こそが、俺の一番の仕事と言えた。

 

 

ある時、社長が言った。

「私がどうしてスカウトのために、レンタル彼氏を利用してたかわかる?」

 

それは以前に「街で顔だけを見てスカウトするより、話術や色気など人を惹きつける力がわかるから」と言っていた。

 

 

 

 

「お金のために、自分を売ることに抵抗のない人材が欲しいからよ」

 

 

 

あぁ、そうか、そういうことだったのか…。

そういう意味で俺は「合格」したのか。

 

 

 

自分のルックスを求めてくれる人がいるなら、こんな俺でも、ちゃんとした方法で金が稼げると思ってた。

 

でも違ったんだ。

ちっとも抜け出せてなんていなかった。

 

 

 

「それにね、あんなバイトをしているのは、ワケありばっかでしょ?どんなに嫌でも辞められない。

女を惹きつける魅力があって、お金のために自分を売ることに抵抗がなくて、ワケありだから何があっても途中で逃げたりしない。

そういった条件が揃った人材が一気に見つかる、あんな最適なスカウトの場はないわよ」

 

 

全然“選ばれし者“なんかじゃなかった。

”どこまでも堕ちていける人間”として合格しただけなんだ。

 

 

やっと抜け出せたと思ってたどり着いたその場所は、もっと頑丈な柵に囲まれた鉄の檻だった。

 

 

やっぱり、一度道を踏み外した人間は、もう二度と普通の道には戻れないんだ…。

 

福利厚生(紫耀サイド)

「紫耀、紫耀!あの子、グループ辞めさせられたらしいぞ」

楽屋に入るとメンバーが話しかけてきた。

音楽番組の最中にこっそりと「連絡先教えてください」と、俺に言い寄ってきたアイドルの女の子。

その後連絡して、1度だけ関係を持った子。

そういえば最近見かけない。大人数アイドルだから1人くらい減っても全然わからなかった。

 

俺に言い寄ったことでうちの社長からの制裁が下ったのだろう。

今までにも俺に手を出そうとした女の子が何人か、この世界から葬られている。

まぁ「俺が手を出した」とも言えるのだが、社長からすれば「うちの大事な商品に手を出して」ということになるのだろう。

 

以前、なんてことのない若手アイドルとのツーショットを撮られてしまったことがあり、そのスキャンダルをもみ消すために、当時、映画で共演していた女優との熱愛の噂を捏造した。

映画の公開が近かったため、いい番宣になるし、その女優さんが誰もが羨むお人形のような可愛らしい顔をしているにも関わらず、サバサバとした性格で、女性からの好感度が高かったため、彼女との熱愛報道は逆に俺の株を上げると事務所は考えた。

 

女優さんの事務所と相談の上、そちらの方向で動くことになり、週刊誌は本が売れれば事実なんてどっちでもいいので、言われる通りの熱愛記事を書いた。

正直、名も知らぬアイドルとの熱愛よりも、よっぽど話題性があり、本が売れる。週刊誌にとってもいい話だったのだろう。

 

嘘ばっかだな。

 

 

この世界に入って、外に見えていることのほとんどは、事実とはかけ離れていることを知った。

 

キラキラ王子様スマイルで世の女の子たちに夢を売る仕事でも、裏ではこんなに汚れているんだから…。

 

 

メンバー「お前が好き勝手やるから、そのたびに社長も大変だよなー。お前も福利厚生使えばいいのに」

紫耀「えー、俺そういうのやだ」

メンバー「全く社長の”スペオキ”だからって、わがままだなぁ。やだとかじゃなくて、そうしなきゃいけないの!俺らに自由なんてないんだから!

そういや、お前がちょいちょい手、出してるのって、清楚系アイドルばっかだよな?そっち系が好きなの?福利厚生にもそういう感じの子いるよ?」

 

いやいや、そういう仕事してる時点で清楚系じゃないから。

「福利厚生」とは、うちの会社が所属タレントの為に雇っている女の子たちのこと。

うちの会社は男性アイドルのみを扱っている。

熱愛スキャンダルが一番御法度。

しかし、俺たちだって若い男。

性欲は止められない。

だから、選り取りみどりの美女を雇って、その中で遊ばせる。

もちろん雇われている女の子たちは、みんな、口止め料も含む高額な給料を貰っており、俺達との関係を口外することは絶対にない。

この福利厚生の存在自体、世間には知られることはない。

確かに雇われている女の子たちはみんな美女でナイスバディで、そんじょそこらの若手アイドルよりもレベルが高いくらいだ。

でも…

 

そんなの、”女版、俺”じゃん。

 

 

彼女たちも、誰もが羨むような容姿を持って、男を喜ばせるスキルを持って、それなのに、なぜそんな特殊な仕事をしているのか?

きっとワケありで金が必要で、今の場所から抜け出せない。

どこまでも堕ちていく。

 

 

そんな自分を直視するのが嫌で、俺は福利厚生を1度も利用したことがなかった。

 

 

当然、そんな商売女に性欲を処理してもらわなくても、いくらでも言い寄ってくる女はいる。

だからといって、寄ってきた女に片っ端から手を出しているわけじゃない。

完成された大女優じゃなくて、なんとなく素朴さの残る、どこにでもいそうな控えめさ、でもよく見ると可愛くて清楚感がある、そんな子に、ほんの少しの期待を感じて誘いに応じることはあった。

でも、ベッドの上に来るなり、急に豹変して、大喜びで俺の体にむしゃぶりついてくる姿なんて見せられるとげんなりするんだ。

 

 

やっぱり、花凛じゃない。

そんなのわかりきっていることなのに…。

 

 

 

あ、まただ…。

頭の中に雨音が響く。

あの日から時々出る症状だ。

あの日、花凛と、花凛との思い出の残るあの街を捨てて、東京に出てきてからずっと。

 

 

 

小学校の頃、雨が降ると花凛と相合傘で帰れるからワクワクした。

高校で花凛と再会した日も雨だった。

久しぶりに2人で相合傘をして、手を繋いで笑いながら走った。

雨音と花凛の笑い声が混じり合って心地良い。

 

 

だけど、もうそれはもう二度と手に入らない。

それに気付き、目の前が真っ暗になる…。

 

 

 

「紫耀、大丈夫か?またあの症状?1回本当に病院行った方がいいぞ?」

メンバーが心配そうにのぞき込む。

 

 

病院じゃ治らない。

金のため、廉のため、花凛に恥じない汚れない自分になるため。

俺には色々と守らなければいけないものがあって、そのためにたったひとつだけを手放した。

だけど、その手放したたった一つこそが、唯一手放してはいけないものだったんじゃないのか?

 

 

あの日、花凛を捨てた後悔が頭の中に雨を降らす。

きっとこの後悔が消えるまで、この症状は治らない。

そして、その後悔が消えることは、きっと、一生、ない…。

 

 

選択肢という名の

持ちきれない風船を握りしめて

気が付いたら手の中の

1番大事なものが飛んでいったんだ

King & Prince「宙(ソラ)」

作詞:田鹿ゆういち、作曲:田鹿ゆういち・Octobar

暴かれた秘密(海人サイド)

廉「あー、何でせっかくの休みを海人なんかと過ごさなあかんねん」

海人「それはこっちのセリフだよ!買い物付き合ってって言うから付き合ってやってるのに」

廉「はぁ~、今頃花凛、どうしてるかなぁ~?昔の同級生と再会して、何か始まっちゃってたりしてたらどうしよう~!同窓会ラブって一番怖いやん!?ヒーッ( ゚Д゚)」

 

 

廉と姉ちゃんが付き合い始めてから約3年。

2人は基本休みの日は毎回会っててめちゃくちゃラブラブだ。

ラブラブと言えばそうなのかもしれないし、なんだか少しでも隙間を作るのを怖がっているようにも見える。

今日は、姉ちゃんは小学校の同窓会があるので会えなくて、廉が俺を買い物に誘ってきた。

海人「まぁ、平気っしょ」

廉「そんな適当なことを!」

適当ということもない。

だって、姉ちゃんが再会して何か生まれる可能性があるの紫耀だけだもん。

紫耀が同窓会に来ているはずがないし。

 

紫耀は、アイドルになると言ってこの町を出て行ってから、1度も地元に帰ってきていない。

家族にも、お金を送るだけで、全然連絡もしてこないみたい。

廉と姉ちゃんが付き合い始めてから、なんとなく家では紫耀の話は禁句みたいになっていて、テレビに紫耀が映ると、”家族でテレビを見ていたら突然ラブシーンが始まっちゃった状態”みたにに空気が凍る。

だから、廉にも「紫耀、どうしてる?」とか聞けない。

でも、テレビでは毎日のように紫耀の顔を見るから、いつも楽しそうに笑っていて、みんなに愛されていて、誰もが羨むほど仕事も人生も順調なことは分かっているから、みんな聞かなくても安心している。

地元に帰ってこないのも、それだけ仕事が忙しいということなのだから、むしろ喜ぶべきことなのだろう。

 

 

てか、なんかさっきからすっげえちらちら視線を感じる…。

まぁ、普段もそうだけど、廉と一緒にいるとさらに相乗効果で俺達は目立つらしい。

 

「あのー…」

さっきまで俺たちを見てひそひそキャッキャと話していた女子グループの一人が恐る恐る話しかけてくる。

やっぱり来たか、逆ナンだ。

 

 

「今ってぇ、お時間あったりとかしますかぁ?」

上目遣いで首を斜めにかしげながら、思いっきりぶりっ子しながら話しかけてくる。

 

 

結構かわいい子だったし、男二人で一日過ごすのもつまらないから、ちょっとくらい遊んでもいいかなあなんて俺が返事をしようとしていると、横から廉がめちゃくちゃ怖い顔で、女の子を威嚇した。

 

 

廉「全っ然時間ありません!俺、これから彼女にプロポーズしようと思ってるんで!」

「は?え?プロポーズ…?あ、はい、すみませんでした…」

 

 

女の子はびっくりしたような、「何を言っているんだ、こいつ?」と不審者を見るような顔でそそくさと去っていった。

 

 

海人「ちょっと、断り方、独特すぎない?何、プロポーズって。どういうギャグ?」

廉「いや、ギャグじゃなくて本気。俺、花凛に改めてプロポーズしようと思ってんだよね。今日指輪買おうかなって思って、お前、誘ったの」

海人「は!?ちょっと待って…だって廉、まだ大学生になったばっかじゃん?」

廉「だから18歳になるのずっと待ちわびとったから。もう結婚できるし。」

海人「いやいやいや、早まりすぎだって!」

廉「ええやん、俺らもう”婚約約”してるから。18歳になったらもう一回指輪渡して、正式に婚約するって決めてん!」

海人「”婚約約”?何言ってんの?」

廉「いつかちゃんと婚約しようねっていう約束。でもさ、指輪は新しくするかどうか迷ってんねん。

付き合うことになった時にな、1回指輪あげたんやけどさ。

花凛の理想のサプライズの演出やとかゆうて、クマに指輪はめてさ。それからずっと花凛、クマ、バッグにつけてるやろ?多分相当嬉しかったと思うんよなー。そこまで大切な思い出と思ってくれてるのに、指輪新しくしちゃっていいものかどうか…」

海人「え…」

 

 

そのクマって、確か紫耀が姉ちゃんにあげたやつ…。

 

 

廉「ん?何、今の”え”って?」

海人「えっ!いやいや、何でもない!」

廉「いや、今、絶対、変な間、あったやん!海人く~ん…!?」

 

 

 

こうなった廉に、逆らえるはずがなかった…。

 

暴かれた秘密(花凛サイド)

電車を降りて駅の階段を降りると、廉が待っていた。

花凛「え!迎えに来てくれたの?」

 

 

いつもだったら、私を見つけたら急にぱあっと笑顔を見せる忠犬ハチ公なのに、今日はなんだか表情が硬い。

 

 

花凛「廉?」

廉くんに駆け寄り、顔を覗き込む。

 

 

 

廉「紫耀、来てた?」

小さな声で、廉がつぶやく。

花凛「え?」

廉「同窓会、紫耀来てた?」

花凛「え…来るわけないじゃん、どうしたの急に?」

廉「今日、紫耀が来るかもしれないって期待して、行ったんやないの?」

花凛「廉?何言ってんの?」

 

 

急に何を言い出したのかわからない。

今まで紫耀くんの話題なんて出すことなかったのに。

 

 

廉「帰ろう」

廉くんは私の手を取ると、グイグイと引っ張って歩き出した。

無言で歩く廉くんの背中からは、なにやら怒りのオーラが出ていて、なんとなく怖くて話しかけられなかった。

踏切のところまで来て、その行き先から、うちに送ってくれるのではないのだとわかった。

 

 

花凛「あれ、どこ行くの?」

廉「うち」

花凛「お母さんは?」

廉「今日出かけてていない」

 

 

なんとなく嫌な予感がした。

いつも会うのはウチか外だった。

廉くんの家の方が、お母さんが仕事で誰もいないことが多いのに、2人ともなぜか廉くんの家で会おうとは言わなかった。

 

 

廉くんの家は狭い。

会うなら部屋で会うことになる。

紫耀くんと一緒に使っていた部屋。

紫耀くんと初めてした部屋。

 

色々思い出してしまいそうだから行きたくなかった。

多分廉くんも同じ気持ちだったと思う。

 

 

最悪のプロポーズ(廉サイド)

花凛を部屋に引っ張り込むと、強引にベッドの上に突き飛ばした。

花凛は驚いた顔で俺を見上げている。

 

 

昔はカーテンで区切って、紫耀と2人でこの部屋を使っていた。

今はカーテンは取っ払って1人で使っている。

紫耀が使っていたベッドはもうない。

 

使わないベッドをそのまま置いておくには、この部屋は狭すぎるという理由で処分してもらったが、本当の理由は違った。

視界の中にあのベッドが入るだけで吐きそうになった。

紫耀と花凛が愛し合っていた光景が、デジャヴのように鮮明に蘇ってきて、俺は何度もうなされて、夜、目を覚ました。

 

 

ベッドがなくなっても、この部屋に花凛を連れてくるのは嫌だった。

 

 

廉「クマ、紫耀に買ってもらったものやったんやな。」

低い声で静かに呟くと、花凛が驚いたように目を見開く。

 

 

廉「何も知らんと、俺がそのクマに指輪つけて、花凛の理想を叶えてやったーゆうて喜んでるの見て、どう思った?

本当は紫耀のことが忘れられなくてずっと肌身離さず持ち歩いてたのに、俺との思い出っていうカモフラージュができて、都合良かった?」

花凛「違うよ…私は、本当に廉くんが指輪くれた時、すごく嬉しくて、それで…」

 

 

花凛の横に転がっていたバッグを持ち上げ、思いっきりクマを引きちぎった。

花凛「あっ…」

俺の手の中で握りつぶされたクマを見て、花凛の顔が悲しそうに歪む。

 

 

廉「本当はずっと紫耀が忘れられなかったんやないん!?ずっと紫耀のことを思い出しながら、俺と付き合ってたん!?」

花凛「そんな…ちが…」

廉「ヤってる時も、紫耀のこと思い出してた?俺と紫耀、どっちが良かった?」

 

どんなに不自然に紫耀の話題を避けたところで、結局、俺たちは紫耀の呪縛から逃れられない。

それだけ、あいつの存在は大きい。

 

 

 

強引に唇を押し付けながら、一つずつ胸のボタンを外していく。

少し怯えたように体を固くしながらも、花凛は拒むことはせずに受け入れている。

 

そうやろ?だって花凛は俺の彼女なんやから、ええやろ?

 

 

花凛「えっ…ちょっ、廉くん…!?」

突如、俺の肩にグイっと花凛の手が突っ張り、抵抗を感じる。

スカートをまくしあげて、パンツを脱がさず雑に横にずらし、申し訳程度に手でまさぐっただけで、いきなり挿れようとしたからや。

 

 

花凛「ダメだよ、ちゃんとつけて…!」

廉「ええやん」

花凛「ダメ、今日、危険日だから!子供できたらどうすんの!?」

廉「そしたら結婚するし」

花凛「何言ってんの!?」

 

最悪のプロポーズや…。

こんな予定じゃなかったのに…。

 

 

もっとちゃんと、花凛が喜んでくれるようなサプライズを計画して、新しく買った指輪渡して、花凛が嬉しそうに笑って…

そんなプロポーズをするつもりやったのに…。

 

 

花凛「やだ…っ、やめて…っ!ほんとに今日はダメだから…!」

抵抗する花凛の両手をひねり上げて片手でホールドし、有無を言わさずねじこんだ。

ちゃんと濡れてくれていることに、安心する。

 

いっそ、子供ができてしまえばいいのに。

そしたら、花凛はずっと俺のそばにいてくれる?

それ以外に、花凛を縛っておく方法が、花凛の心を紫耀から引き離す方法が、俺には思いつかなかった。

 

 

 

「やだ…っ!廉くん、やめて!こんなのやだよ…っ」

無心で腰を振っていて、気付くと花凜は顔を覆って泣いていた。

ハッとして動きを止める。

 

 

全身の力が抜けて、花凛の手を離すのと同時に、一気にしぼんで花凛の中から押し出された。

その隙を逃さず、花凛は立ち上がり、自分のバッグと床に転がっていたクマを拾い上げ、逃げるように部屋から出て行った。

花凛「廉くん、ひどいよ…」

最後に小さく残して言った花凜の言葉が、胸を突き刺す。

 

 

 

廉「なんで…っ、なんで…っ!こんなに好きやのに…!ちゃんと好きになってくれてるって、信じてたのに…っ!!」

俺は下半身だけ裸のみずぼらしい格好で、花凛の温もりの残るベッドを何度も何度も叩いた…。

 

自由を求めて(紫耀サイド)

全国ツアーの地元公演が決まった。

今までやってきた、大都市メインのツアーから更に規模を広げ、俺の地元でも公演をすることになった。

 

 

「ここって、紫耀の地元だろ?地元は盛り上がるぞ~?知り合いとかも来たりするしな!」

 

目の前でとてつもなく美しい顔でスイーツを頬張っているのは、同じ事務所の先輩の山田くん。

最近とても可愛がってもらっている。

 

 

地元とは言っても俺達が住んでいたのはもう少し田舎の駅で、そこらの人は買い物をするとなると電車に乗って隣町まで行く。

そう、花凛の誕生日プレゼントを買いに行ったあの街。

 

 

知り合い、来るかな?

地元で連絡とってるやつなんて、ジンしかいないけど。

 

 

東京に来てから1度も実家には帰っていない。

金を送ることが、元気だという便り。

 

 

実家に帰りたくないのは、どういう顔をして廉と会ったらいいかわからないから。

廉が花凛と付き合い始めたらしいということは、ジンから聞いて知っていた。

 

 

「ん?」

山田くんが、俺の視線に気づいて顔を上げる。

無意識のうちに、山田くんの首元に視線が行ってしまっていたようだ。

首元に光るネックレス。

 

 

紫耀「だ、いじょうぶ…なんですか?」

 

 

実は数日前、山田くんの初の恋愛スキャンダルが出たばかりだ。

山田くんがしているネックレスと、人気モデルのネックレスがお揃いであることをファンが特定し、SNSで拡散され、大騒ぎになっている最中なのだ。

初の地元公演も気になるが、今は山田くんのことが心配でならない。

 

 

ファンの特定能力はすさまじいものだが、それにしても聡明なタイプの山田くんがこんなうかつな”やらかし”をするなんて、ちょっと意外だった。

彼女とおそろいのものをつけるのはいいにしても、メディアに映る時は外せばいいだけのことだったのに。

 

 

山田「実はさ、これ、わざとつけたんだよね。」

紫耀「えっ、なんでそんなこと」

山田「普通に週刊誌に嗅ぎつけられても、事務所からの圧力があるから、報道はされないだろ?」

 

 

確かに。今までも、俺のスキャンダルを何度もみ消してもらったことか。

 

 

山田「だから、事務所の圧力の届かない、SNSで拡散してもらおうと思ったんだ」

紫耀「え、だからなんで」

山田「強行手段。俺さ、彼女と結婚したいと思ってるんだよね。」

紫耀「け、結婚!?」

山田「ここまで騒ぎになったら、むしろ結婚するほど真剣交際でしたっていうほうが印象がいいから、事務所が許してくれるんじゃないかと思って。

もちろん、傷つけたファンもいる。でも、中には祝福すると言ってくれているファンもいるんだ。

アイドルなのに、自分の恋愛をファンに知られる形で出してしまうのはルール違反だとも思う。

でも、彼女は年上だし、いつまでも待たせるわけにはいかない。ファンも大事だし、アイドルとしての自分も大事だけど、やっぱり一番大事なのは、彼女なんだ」

紫耀「でも、そんなことして、もし仕事続けられなくなったら…」

山田「結果、出せばいいんでしょ?きっと、ついてきてくれるファンはいる。

俺は、彼女もファンも、どっちも諦めない。」

 

 

あまりにも断定的に発せられる山田くんの言葉に、すぐに言葉が出てこない。

 

 

山田「紫耀はさ、結構いろんなとこに手だしてるみたいだけど、本命とかいないの?」

紫耀「本命なんて…いたって、事務所が交際許すしかないし、好きになるだけ無駄じゃないですか。俺らに自由なんてないし」

山田「そりゃ、俺たちはアイドルでいるために、いろんなこと手放してきたけどさ、それでも、事務所になんと言われようと、この思いは貫き通すって決めてんだよね。

持ってるもの全部奪い取られて、がんじがらめの檻の中に入れられたってさ、たったひとつでいいから、これだけは絶対!!ってものまで諦めなくたっていいだろ?

いくら自由を奪われたって、俺ら、人形じゃないじゃん。

意思も感情もある、一人の人間なんだからさ」

 

 

山田くんの言葉がズドンと胸に来た。

絶対に渡したくないもの。

諦めなくてもいい…?

 

 

山田「さて、と。そろそろ行くかな」

山田くんが立ち上がる。

 

 

紫耀「山田くんっ!!」

ガターンと椅子を弾き飛ばして立ち上がったので、山田くんがビクッとして振り返った。

 

紫耀「ま、負けないでください!!俺、応援してますから!!!」

 

 

見せてほしい。

想いを貫いた結果を。

そしたら俺も…俺だって…。

 

 

山田「おう」

山田くんは、スイートな笑顔を向けて、ひらりと手を振って去っていった。

自分の願いを託すような気持ちで見送ったその背中は、勇気と希望と満ち溢れているように見えた。

 

 

自分が立ち上がる勇気さえ持てば、

自由は、手に入るんだ…。

 

 

 

だけど、その数日後、山田くんのことを心配している余裕なんてないほどの大型スキャンダルが、自分のグループに投下されるとは、この時は思いもしなかった…。

 

スキャンダル(花凜サイド)

「チケット無駄になっちゃうから、一応来たけどさー、ほんと最悪!!マジで、もうファンやめよっかなー」

「でもさ、紫耀くんだけ使ってなかったって逆に株あがるじゃん?」

「私は箱推しだったからショックだよー」

小学校の同級生と、紫耀くんの所属しているアイドルグループのコンサートに来ている。

本当はこの前の同窓会の時に「一緒に行かない?」と誘われたけど、断っていた。廉くんに悪いような気がしたし、テレビに出ていてもなんとなく見るのを避けていたから、曲もよく知らない。

だけど、廉くんとあんなことがあって、しかもその後廉くんは謝ってこないどころか全然連絡してこなくて。

なんかすごくムカついて、あてつけのように友達に電話して「やっぱりライブ行く!」と伝えた。

そしてこれまた当てつけのように、引きちぎられて壊れてしまったストラップ部分を修理して、バッグにあのクマをつけてきた。

 

紫耀くんたちは全国ツアー中で、初めて私達の住んでいる近くの町でも公演することになったのだ。

しかし、直前に衝撃的なスキャンダルが出た。

 

なんでも事務所お抱えの女の子たちを雇っていて、所属タレント達が好きなだけ女遊びができるようにという”福利厚生”があったらしい。

言ってみれば無料で使い放題の風俗みたいな。

そして、紫耀くんのグループのメンバーは4人が同じ女の子をお気に入りとしていて、4人ともその子と関係を持っていた。だけど、紫耀くんだけはその”福利厚生”を使うのを嫌がって、1度も所属の女の子と関係を持ったことがない、という記事が週刊誌に掲載されたのだ。

 

確かに衝撃的なスキャンダルではあったけど、紫耀くんが利用していなかったということに少しだけほっとしていた。

でも映画で共演した綺麗な女優さんと噂になったこともあったし、誰か本命がいるというだけのことかもしれない。

 

 

記念すべき 初めての紫耀くんにとっての地元公演なのに、空席がたくさんあった。

それに、来ているお客さんがすべて好意的な気持ちで来ているわけでもなかった。

心ない言葉が書かれたうちわを掲げて、ブーイングを送っているファンもいた。

 

それでも紫耀くんたちは、懸命に笑顔をふりまいていた。だけどやっぱり辛そうだった。

 

 

本当は、今日、ステージでキラキラしているアイドルの紫耀くんを目の当たりにして、本当に違う世界の人になったんだって思い知れば、ほんの少し残っていた自分の中の紫耀くんへの未練を断ち切れるんじゃないかって思ってた。

それなのに、そんな辛そうにしないでよ。

紫耀くんが幸せそうにしていてくれなきゃ、気になっちゃうじゃん。

ブーイングを受けながら健気にファン一人ひとりに丁寧に笑顔で手を振る姿なんて見せられたら、胸がキューっと痛くなる。

 

「まぁ、私たちは元同級生のよしみで、ちゃんと応援しようよ!」

と友達が言って、みんなでライブの前に紫耀くんのうちわとペンライトを買った。

なんとか元気づけたくて、一生懸命うちわとペンライトを振った。

 

なんか変なの。

こっぴどくふられた元カレに、いちファンとしてうちわを振っている。

すごく滑稽に思えたけど、今、私にできるのはこれくらい。

紫耀くんが傷ついているなら、元気づけてあげたい。

応援しているファンもいるよって、ひとつでも多くの灯りを届けられれば。

 

何とか届け、この思い。

そう願って、懸命うちわを振った。

 

キミに届いて(紫耀サイド)

 

それほど前の方の列だったわけじゃないのに、俺はすぐに見つけた。

そこだけスポットライトを当てたかのように、浮かび上がって俺の目に飛び込んできた。

花凛が俺の写真の入ったうちわと、俺のメンバーカラーを照らしたペンライトを振っていた。

 

 

な、なんで…?

びっくりして、歌詞が飛びそうになった。

 

地元公演に来ることになって、もちろん花凛のことを思い出してはいた。

でも、まさかライブに来てくれているなんて思わなかった。

しかも、俺のうちわ持ってるし。今日のためにわざわざ買ってくれたんだろうか?

え?それとも、ずっとファンとして応援してくれていたとか?

 

廉はそれを許したんだろうか?

まさか廉と別れたとか…?

 

 

ずっと忘れられない女の子が、ファンみたいな顔をして懸命に俺のうちわを振っている。

それはなんだかすごく不思議な光景だった。

 

このライブでは、初めて俺が作詞に挑戦した曲を初披露する。

それは今の俺の気持ちを素直に言葉にしたもので、花凛を忘れられないその思いを曲にした。

いつかどこかでこの曲を耳にしてくれることがあれば…そんなほのかな期待をこめて作った曲。

 

まさか本人を前にして歌うことになるとは思わなかった。

戸惑いながらも、さっきからチラチラと花凛のいる客席のほうばかりを見てしまう。

 

 

そして目を疑う。

高いゴンドラの上から見下ろした客席。

花凛が斜めに下げたバッグに、俺があげたクマのストラップがぶらさがっているのが見えた。

 

 

え…?なんでまだそれを…?

それは何を意味している…?

 

俺は、自分の気持ちを届けてもいいのか?

ライブの高揚感も手伝ってか、もう気持ちは止められないところまで来ていた…。

 

言葉が宙(ちゅう)に舞って壊れたとしても

この想いは弧を描いて

キミに届くはず キミに届いて

今度はその手を離さないよ

King & Prince「宙(SORA)」

作詞:田鹿ゆういち、作曲:田鹿ゆういち・October

 

手放したものを取り戻しに(紫耀サイド)

 

「え!?紫耀!?」

後ろから声をかけられ、心臓が飛び出るかと思った。

花凛の家の前で不審者のようにウロウロとしていたら、帰ってきた優太に見つかってしまった。

 

 

優太「うーっわ!めっちゃ久しぶりじゃんっ!元気してたか!?なに!?どーした!?あ!そっか今日ライブでこっち来てたのか!頑張ってるなお前!てか、今は大変だな!大丈夫か!?」

矢継ぎ早に質問をぶつけてくる優太にしどろもどろになる。

紫耀「あ、あぁ、うんまぁ、なんとか…みんなも元気だった…?」

優太「俺!?元気元気!見ての通り、超元気!」

うん、優太が元気なのは見たらわかるけど、気になるのはそこじゃない。

 

 

優太「…花凛、今、出かけてるよ」

うぉっ…、全然空気読まないかと思ったら、突然核心に入るじゃん…。

やっぱり花凛に会いに来たってバレてるよな。

そりゃ、ここまで来て、優太と海人にだけ会いに来たなんて言ったって、胡散臭すぎる。

 

 

紫耀「花凛に会いたいんだ」

 

優太はグッと息を呑んだ。

 

優太「…俺はさ、廉にはすごく感謝してるんだ。お前と別れた後、花凛は見てられないほどに落ち込んでた。でも、廉がくるようになってから、花凛が笑うようになったんだ。廉はずっと花凛のことを大事にしてくれてる。すごく感謝してるんだ」

 

 

そうだよな。

優太にとって、俺は自分が華やかな世界に出て行くために、花凛を捨てていった薄情な男。恨まれていても当然だ。

そして廉が傷ついた花凛を救った。

 

今さら、優太が俺を歓迎してくれるはずがない。

 

 

そっか、やっぱりまだ廉と付き合ってるんだな。

じゃぁ今日ライブに来たのも、ただのファンとか、友達の付き合いとか、そういったもので、深い意味なんてなかったんだな。

 

それで優太は、「廉とうまくいってるから、もう来るな」って暗に言いたいんだな。

 

 

紫耀「そっか、わかった」

 

 

追い返されるような気分でとぼとぼと歩き出すと、後ろから

「紫耀!」

と優太に呼び止められた。

 

 

優太は何か迷っているようにグッと拳を握っている。

そして、意を決したように顔を上げた。

 

 

 

優太「でもさ、違うんだよ」

紫耀「…?何が?」

優太「違うんだよ、お前と一緒に笑っていた時の顔と。

廉といるとき、すっげえ、穏やかな顔で笑ってる。お前といる時は何て言うの?弾けるような笑顔ってやつ?

まぁ俗に言う、愛されるよりも愛したいってやつなのか、愛するよりも愛される方が幸せってやつなのか。俺にはどっちが幸せなのかはわかんない。

でも…」

紫耀「…でも?」

 

 

また優太は何かを迷って、そして静かに話し出した。

優太「花凛は、毎年7月7日の夜、こっそりどこかに出掛けていくんだ。いつも休みとなれば廉と会ってるのに、その日だけは絶対に廉と会わない。俺や海人にもどこに行くかを言わない。」

 

7月7日…今日だ。

 

優太「なんとなく、お前絡みのことなんじゃないかって思ってる。だからしつこく聞いた事は無い。

こんなことお前に伝えるのは、廉への裏切りだって思う。廉がどれだけ、花凛のことを大事にしてくれているかは知ってる。だから俺も廉のこと大事に思ってる。

でも、俺、やっぱ花凛の兄貴だからさ。誰を不幸にしても、花凛の幸せが一番大事なんだよ。

最近なんかあいつら喧嘩してるみたいで、この前廉に泣かされて帰ってきてからずっと元気ないってのもあって、俺も何が正解なんだか分かんなくなっててさ…。」

 

 

やっぱり、廉と喧嘩してたのか…。

 

優太「もし花凛が、何か迷っているんだとしたら、俺はちゃんと花凛に選ばせてやりたいんだ。今まで廉がどれだけ尽くしてくれたかとか、そういうの一旦置いといて、何が1番自分の幸せなのか。何にも遠慮しないで、一番幸せになれる道を選んでほしい。

こんなこと、廉からしたら、なんて自分勝手なんだって思うだろうけど。

だから恨まれる役は俺が代わりにやってやるから、お前は自分の思うように行動しろよ。

お前なら、わかるんじゃねーの?今、花凛がどこにいるのか。誰を、待っているのか」

 

 

弾けるように走り出していた。

7月7日。

初めてキスした神社。

 

「これから毎年一緒に見ようね」

 

指切りしたら逆に約束が守られないみたいなジンクスができちゃってるから、指切りはしないでおこうかなんて笑った。でも一応しておこうと、指切りをした。

だから、こんなことになってしまったのかなぁなんて思ってた。

 

あの時は来年も再来年もずっと一緒にいるだろうと信じて疑わなかったのに、まさか1年もせずに壊れてしまうなんて。

俺たちの仲が壊れた時に、あの約束もなくなったものだと思っていた。

だから1度も約束の日に行ったことはなかった。

もちろん仕事が忙しかったからスケジュール的に無理だったこともある。

 

 

でも今年は7月7日に地元公演があった。

そしてそのタイミングで、花凛は廉とうまくいっていなくて、花凛が約束の場所に毎年行っていたことを俺が知った。

 

 

これってまさに運命じゃないのか?

 

 

走っている最中に花火が始まった。20分程の小規模な、地元の花火大会。

 

花凛と一緒に見た景色を思い出す。

ドカンと弾けてきらめく火の粉みたいに、自分の中にあった想いが弾けてどうしようもなくなって花凛にキスをしたんだ。

 

 

その時の気持ちを思い出す。

もう止められない。

 

 

廉から、花凛を奪う覚悟?

その先の俺達がどうなるか?

わからない、そこまで頭は回らない。

 

でももうこの気持ちは止められないんだ!

手放してしまった一番大切なものを、今、俺は取り戻しに行く…!

そしてもし、君が俺の手を取ってくれるなら、もう二度とその手を離しはしないから…!

 

 

神社に着いた時にはもう花火は終わっていた。

 

祭り客はみんな帰り始め、屋台の人たちも後片付けを始めている中、その後ろ姿はあった。

斜めにかけたバッグには、あのクマのストラップがぶら下がっていた。

 

 

「花凛っ!」

 

 

そしてゆっくりと、花凛が振り向く…。

 

 

 

 


かなり長くなりましたが、20話、これにて終了です!

続きはこちら。いよいよ最終回です!

 

コメント

  1. みつき より:

    お久しぶりです!
    読むの超遅れてすいません💦
    今回のは何というか複雑だけど感動というか
    語彙力どっかおいてきたかもしれません(笑)
    続き楽しみに待ってます!

    • ちゃちゃ より:

      みつきさん、いつもありがとうございます。
      芸能界の闇に翻弄される紫耀…的な感じでしたね。

      次回、最終回!にしたいと思ってます!
      ぜひまた読みに来てください(^^)

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