キンプリ妄想歌詞小説「雨音」2話〜帰り道の約束〜

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King & Prince「MAGIC TOUCH/Beating Hearts」のカップリング曲「雨音」と「Seasons of Love」の歌詞をもとに、小説を書きました!

私は曲の歌詞からストーリーを構成する“歌詞小説“と言うものを描いています。

 

前のお話はこちら。

キンプリ妄想歌詞小説雨音

 

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満員電車

私たちが飛び込んだのと同時に、プシューとドアが閉まった。

「セーフ!」

ニカッと微笑んで振り向いた紫耀くんは、まだ私の手をつかんだままだったことに気づき、慌てて離す。

 

 

「やべ!また俺ばか力じゃなかった!?大丈夫?今度は赤くなってない?」

「うん、大丈夫…」

 

紫耀くんに握られていた手首をさすりながら、その温もりが離れてしまったことをちょっと残念に思う。

 

 

「あれ?平野紫耀じゃない?」

電車はかなり混んでいて、近くに立っている女子高生たちから、ささやきが漏れ聞こえた。

 

「きゃーラッキー!平野紫耀と一緒の車両!」

学校では小学校の時同様、クラスの女子の人気者だと言う事は今日1日でよくわかったけど、もはや「学校の人気者」を超えた存在になっているらしい。

他の高校の女子にも顔や名前が知れているほど、有名人なのだ。

それは、この美貌だもん、無理もないか。

 

 

こっそりと、すぐ近くにある紫耀くんの横顔を盗み見る。

首筋に伸びる顎のラインがめちゃくちゃ綺麗。

 

 

片方の手は椅子のへりに置いて、もう片方の手はドアの窓についている。

ちょうど壁とドアの角にちょこんと収まっている私は、紫耀くんに覆われているような格好になる。

 

 

そのたくましい腕や、2つ開けたワイシャツの襟元から覗く鎖骨がセクシーすぎて、思わず抱きつきたい衝動に駆られている私は変態だろうか…。

 

 

電車は混んでいるのに、私と紫耀くんの間に少し距離がある。紫耀くんはドアについた手を突っ張って、距離を保っているようだった。

満員電車で、私が潰されないように、守ってくれてる…?

 

 

「紫耀くん、もうちょっと詰めても大丈夫だけど」

紫耀くんのブレザーの裾をツンツンと引っ張る。

 

 

「えっ…⁉あ、いや、これ以上はちょっと…。」
突然紫耀くんが慌てふためくので、ちょっと傷つく…。

「あ、ごめん…そんなちかづくの、やだよね…」

「えっ⁉違う違う!そういうんじゃなくて…!ほら、さっき走ったから、俺、臭いと困るし」

「え!?なにそれ、全然臭くないし(笑)」

なんだ、そういうことか。ならよかった。

でも、そんなこと言われたら、私もこれ以上近づけないや。私だって走ったから、汗かいてたら嫌だし。

 

 

そうして微妙な距離を保ちながら、私たちは電車に揺られた。

 

 

 


 

 

 

 

するとさっき「平野紫耀だ」と騒いでいた女子高生3人が、紫耀くんのすぐ後ろに来ていることに気づいた。人混みの中をすり抜けて、場所を移動してきたのだろう。

電車の揺れに合わせて、紫耀くんの背中に倒れ込み「きゃーすいません」とかわざとらしく言っている。

そのあとで他の2人が「ずるーい!今度私ー!」などとヒソヒソ、クスクス話しているのが丸聞こえだ。

 

 

これは、男女が逆だけど、ある意味、痴漢行為じゃないのか?

 

 

「紫耀くん、大丈夫?場所、変わろうか?私なら大丈夫だよ?」

 

こっそりとそう言って、後ろの女子高生たちをアイコンタクトで示す。

 

 

「何言ってんだよ、女の子は男が守るものなんだから、お前は黙って守られとけばいーんだよ!」

 

 

急にそんなお姫様みたいな扱いをしてくれるものだから、カーッと顔が熱くなっていく。

 

 

 

満員電車(平野サイド)

やばいやばいやばい。なんかスゲェ見られている。

花凛の視線を感じている首筋がかゆくてムズムズする。

そんなうるうるとした瞳で見つめないでくれ、なんか心なしか花凛の頬がほてってる感じするし。

なんか、…エロい!

ちょっと会わない間にこんなセクシーな視線で男を誘ってくるような女になりやがってぇ〜!(←別に誘ってはいない)

 

 

 

やべ…このまま抱きしめたい…。

 

 

ハッ!いかんいかん!

さっきどさくさに紛れて手繋いじゃったし、完全エロモード入ってるよ俺!!

再会したばっかで、そんなガッツいたら絶対引かれる!!

花凛だって高校生にもなったんだから、彼氏とかいるかもしれないしな。焦るな、焦るな。

 

 

あまりに至近距離で、目のやり場に困り、ずっと窓の外を見ていた。

するとツンツンとブレザーを引っ張られる感触がした。

 

「紫耀くん、もうちょっと近くに来て?」(←ちょっとニュアンス変わっているが、紫耀にはこう聞こえた)

 

 

ダッ…!ダメだろ、それはぁ〜〜ッ…!

歯止めきかなくなるから!!

 

 

でも…これはちょっとくらい触ってもいいのか!?満員電車を口実に、抱きしめてもいいのか!?そうなのか…!?

そうだよな!花凛の方から誘ってきたんだしな!(←だから誘ってはいない)

 

 

 

そしてそっと、椅子に置いていた手を離す…

 

雨の日の約束

 

紫耀くんが、椅子に置いていた手を離し、その手がそっと私に近づいてくる…。

 

 

 

 

…と思ったら、途中でピクッと手が止まり、そのままズボンのポケットに手を入れ、携帯を取り出し画面をチェックした。

なんだ、携帯取ろうとしただけだったのか。

 

 

なんか、私のほうに手が伸びてきたように感じたのは気のせい?

一瞬、触れられるのかと思った。

って、電車の中で、なんでだよ!?私、やっぱり変態かよ。

 

 

紫「はぁぁ〜〜…」

 

紫耀くんは、携帯の画面を見つめたまま、大きくため息をついた。

 

「どうかしたの?」

「ごめん、急にバイト入っちゃった。次の駅で降りなきゃいけなくなった。本当は家まで送りたかったんだけど。本当にごめん!」

「いいよいいよ!全然!」

そう言いながらも、かなりがっかりしていた。せっかく今、幸せの絶頂だったのになぁ…。もっと紫耀くんと一緒にいたかったな。

 

 

 

 

紫「明日こそ、絶対一緒に帰ろうな!」

「…うん!」

紫「じゃぁ、約束」

 

紫耀くんが小指を立てる。

 

「あ、これ…」

紫「フフ、そ(笑)あの日もやったろ?」

 

 

私たちの家は踏み切りのあっちとこっちで、一緒に帰った日は、踏切で手を振って別れる。

 

春休みに入る前日も雨が降っていて、いつものように紫耀くんが暴れまわって傘を壊して、私の傘に入り込んできて、踏切で別れる時に約束をした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

紫「4月になったらクラス別れちゃうかもしれないけど、また傘壊れたら、入れてな!」

「学年上がっても、まだ傘壊す気なの?(笑)」

紫「いや、壊す気はなくても壊れちゃうつーか…。まぁ、いいだろ?頼むよ」

「うん、わかった」

紫「じゃぁ、約束!」

「うん、約束」

 

 

紫耀くんが小指を出して、私がそこに自分の小指を絡めて、2人で笑って腕をブンブンと振った。

 

「また新学期!」と手を振って別れ、だけど新学期にまた会う事はなく、それが私たちの最後の会話になった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

だけど今度の「また明日」の約束は、守れるんだよね。明日も明後日も明明後日も、その先もずっと会えるんだもんね。

 

 

電車の窓から見る街並みは、昔とはだいぶ変わっていた。

だけど昔と同じに戻った私たちの関係は、きっとこの先もずっと続いていくんだよね?

 

 

このときの私は、何も疑わずにそんなふうに思っていた。

 

帰り道の指切り

無邪気に微笑む君

 

手を振った踏切

見慣れた街並みも 変わっていくけど

King & Prince「雨音」作詞:Komei Kobayashi 作曲:Shusui・Susumu Kawaguchi

 

 

 

 

痴漢?

 

紫耀くんが降りると、さっきまでのゆとりのある空間が嘘のように、ぎゅうぎゅうの車内に押しつぶされた。

やっぱり紫耀くん、守ってくれたんだ。

 

 

知らない人と向き合っているのも気まずいので、窓の方向を向いて後ろ向きに立った。

するとしばらくして、何やら太ももに生ぬるい感触を感じた。

 

 

…痴漢!?

 

 

うそでしょ…、どうしよう…。その指の感覚が、太ももをすりすりとつたって、スカートの中に入り込もうとする。

ヤバい、このままじゃ…

勇気をふりしぼって、その手をつかみ上に上げた。

 

 

「こ、この人、痴漢です…!」

 

 

 

振り返って確認したその男の顔は、驚きであんぐりと口を開けたまま固まっていたが、それ以上に私の方がびっくりしてぶっ倒れそうになった。

それくらいに、その彼は美しく整った顔だった。

 

 

 

「ちょ、お姉さん…、本気で俺が痴漢した、言うてんの?ありえへんのやけど…」

 

 

 

 

今のこの状況けっこうヤバめだな…と思いながらも、もう一方で「あれ、この顔で関西弁なんだ⁉︎そして意外に声高いな…」なんて呑気なことを考えていて、頭の中はとっ散らかっていた。

 

 

 

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