キンプリ妄想歌詞小説「雨音」1話〜今もずっと忘れない 笑い合ったあの声〜

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King & Prince「MAGIC TOUCH/Beating Hearts」のカップリング曲「雨音」と「Seasons of Love」の歌詞をもとに、小説を書きました!

私は曲の歌詞からストーリーを構成する“歌詞小説“と言うものを描いています。

 

しょうれん好きな方にオススメのストーリー展開になると思います!

 

 

 

「雨音」キンプリ歌詞小説

 

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平野サイド(現在)

「平野さん…!あの…さっき言ってたアレ…いいですか…?」

歌番組が終わって楽屋に戻ろうと廊下を歩いていると、共演していたアイドルの女の子がタタタッと駆け寄ってきた。

さっき他の出演者の歌唱中に隣に座った時に、「ずっとファンだったんです」とこっそりアプローチされたのだ。

 

「あぁ…」

 

前を歩いていたマネージャーに「メモ、メモ」とジェスチャーで伝えて、手帳の切れ端に電話番号を走り書きして、「これ俺の番号」と渡す。

彼女は「連絡しますねっ」と顔を赤らめて走り去っていった。

 

 

ニヤニヤと、メンバーが近寄ってくる。

「紫耀~!さっき、聞こえてたぞ~」

「あの子も、本番中になかなかやるよなぁ」

「それだけ紫耀が、”アプローチしてきた女は誰でも断らない”って業界で知れ渡ってんじゃね?」

「てか、同じグループの他の子にも、この前手出してなかったっけ?」

 

 

「え?そうだっけ?なんかああいう大勢のグループいっぱいありすぎだし、みんな同じ顔してるし、誰が誰でどこのグループなんだか、全く見分けつかねーじゃん?」

 

 

 

「紫耀!お前、女遊びもほどほどにしとけよ!」

マネージャーもあきれ顔だ。

 

俺は、今、飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルグループのセンターを張っている。

「共演した女は必ず持ち帰る」なんて業界の噂が武勇伝になっているが……まぁ、あながち嘘でもない。

別にこっちから誘ったりはしないのだが、向こうから勝手に寄ってくるのだから仕方がない。

俺の女癖の悪さには、マネージャーもほとほと手を焼いているが、もともとこういった業界の遊びは社長が俺に教え込んだことだから、社長はあまり固いことは言わない。

 

 

「あんまりあっちこっち手を出すくらいなら、いっそ、特定の彼女がいる方がまだマシだよ。誰かいないのか?”この子だけは”って言う特別な子とか」

「”この子だけは”…かぁ」

 

 

あ、まただ…。

 

 

 

両手で頭を抱えて目を閉じると、マネージャーが心配そうに覗き込む。

 

 

「また聞こえるのか?雨音。いちど、病院行ってみろよ?」

「はい、そうすね…」

 

 

そう答えたものの、病院に行って治るようなものでは無い事は分かっていた。

 

 

あの日から、頭の中に鳴り続けている雨音。

クラクラしながら、廊下の窓を見上げる。

 

 

外には雲ひとつない晴天が広がっていた。

 

今もずっと 忘れない
笑い合った あの声

夢見て過ごした日々
今ひとり 歩く街

傘を閉じてみたけど
見上げた空

鳴り止まない
雨音…

King & Prince「雨音」作詞:Komei Kobayashi 作曲:Shusui・Susumu Kawaguchi

再会(過去)

兄が就職することになったのをきっかけに、兄と私と弟の3人で、以前住んでいたこの街に帰ってきた。

私はこの春から高校3年生、あと1年も待てば自由に家を出られたのだけれど、こんな中途半端な時期に編入してきたのには理由があった。

 

 

それは、小学校時代を過ごしたこの街に、初恋の人がいるから。

 

 

 

高校を卒業してから戻ってきたんじゃ、彼がこの町に住み続けているとも限らない。

もし住んでいたとしても、見つけることは困難だろう。

学生のうちに戻ってくれば、もしかして再会できるかも…、なんて期待して戻ってきたのだが、そうは言っても、学区内に高校はいくつもあるのだ、たまたま同じ高校になんてなれるわけ…

 

 

 

「えっえっ!?もしかして、花凜じゃね!?」

 

 

突然の大声の方向を見ると、そこには小学生の時に恋していた美少年の面影に、さらに洗練された美しさと大人の色気を兼ね備えた超絶美しい男が立っていた。

 

 

 

うそ…、本当に再会できるなんて…。

 

 

 


 

放課後。

かなり派手めなギャルたちが机の周りに集まってきた。

 

「なになに、どういうこと!?紫耀くん知り合いなの!?」

「そ!小学校の時の同級生なんだよなっ?途中で転校していなくなっちゃったけど」

「ふーん、そうなんだー」

 

 

転校生が、早速クラスメイトに取り囲まれるというのはよくあることだけど、多分今取り囲まれてるのは、私じゃなくてこの人なんだろうな…。

女子たちの質問攻めに、キラキラとした爽やかな笑顔で応える、この男こそが、私の初恋の相手…

 

 

平野紫耀。

 

 

 

小学校の時は私の方がちょっと体が大きいくらいだったのに、紫耀くん、めちゃくちゃたくましくなってる。

そしてあの頃と変わらない綺麗な顔…いや、変わらなくはないか、当時からめちゃくちゃ可愛かったけど、今はその10倍、いや100倍レベルアップしてる。

 

 

「花凜、お前どこ引っ越してきたの?前の家?」

「うん、うち、転勤族で戻ってくる可能性あるから、家は年契約で貸しに出してただけで売ってなかったから」

「まじか!じゃあ家近いじゃん!ラッキー!じゃ、今日、一緒に帰ろうぜ!」

 

 

え?めちゃくちゃ嬉しい…。家近くて「ラッキー」とか、どういう意味…

 

 

「俺、今日、傘忘れちゃったんだよね!入れてって!」

紫耀くんは窓の方を指さした後、パチンと顔の前で両手を合わせる。

窓の外は土砂降りだった。

 

 

あ、そういうこと…。

 

 

「えー、ずるーい!傘なら私が入れてあげるよー!」

すぐさま取り巻きギャルたちが、紫耀くんの腕を引っ張る。

 

 

「え?でもせっかく家近いんだから、花凜に入れてってもらうからいいよ」

「ずるいー。紫耀くん、いつも忙しい忙しいって、一緒に帰ってくれないのにー」

ギャル達が一斉にブーブーと声を上げる。

 

 

「しかもほら、引っ越してきたばっかりで色々分からないこともあるだろうし、昔とずいぶん変わってるとこもあるし、危ないじゃん?傘入れてもらう代わりに、俺がボディーガードとして家まで送ってってやるよ!ギブアンドテイク!なっ?」

「え、や、うん…」

 

別にボディーガードをしてもらうほどのいい女ではないので、曖昧に頷く。

 

 

「じゃあ、私達の事も送ってってよー、危ないからぁー。」

ギャルがまだ紫耀くんの腕をつかんで、ゆさゆさと揺らして甘えている。

 

「お前らは大丈夫だろ、なんか強そうだし」

「なにそれ、ひどーい。なんでよー、もぉ~!」

言葉とは裏腹に、ギャルたちが嬉しそうに甘えた声を出しながら、紫耀くんをバシバシと叩く。

 

 

自然なボディータッチ…。

 

男の子にからかわれて、「もぉ~」とか怒ったふりしてボディータッチ。

これぞ、1軍女子の技。

男子と親しく話す間柄だからこそ、できる技なのだ。

 

 

「いって!骨折れたわ~。そんだけ怪力だったら、やっぱ守ってやんなくても大丈夫だな!」

「ねえ、ちょっとほんとひどいんだけどぉ~」

キャラキャラとギャルたちの笑い声が響く。

 

 

あれ、なんか今、このイチャイチャの為に会話のダシにされた感が…。

紫耀くんを取り囲んで、ギャルたちが完全に私に背を向けていて、めちゃくちゃ蚊帳の外だ。

 

 

ま、いいや、帰ろう…。

存在感を消したまま、スッと荷物を持って教室から出た。

 

 


 

 

「ちょっと、何で置いてくの!

一緒に帰ろうって言ったじゃん!」

 

 

下駄箱で靴に履き替えようとしていたところを、突然凄い力で手首をつかまれ、思わず靴を落としてしまった。

ハァハァと息を切らした紫耀くんが、なぜかすごい怖い顔をして立っていた。

 

 

「紫耀くん、痛い…」

「っ!ごめん…!」

慌てて紫耀くんが手を離した。

 

 

「大丈夫!?ごめん、俺、ばか力で…。いや、突然いなくなったから、…まじ焦って…」

手首がほんのり赤くなっていた。

 

「まじごめん…」

紫耀くんは頭をかいてうつむいた。

 

 

「あ、私の方こそ、何も言わずに勝手に来ちゃってごめん…。紫耀くん、あの子たちと一緒に帰るのかと思ったから」

「んなわけねーじゃん!せっかく花凜が帰ってきたのに!何年振りに再会できたと思ってんだよ!!」

 

 

なんか意外にも幼なじみとの再会を喜んでいるみたい…?

すっかり忘れられていてもおかしくないと思っていたから、すごく嬉しい…。

 

 

「じゃあ、行くか!」

そう言って屈託ない笑顔に戻って、紫耀くんは散らばった靴を揃えてくれた。

 

傘(平野サイド)

 

ちょっと目を離した隙に、花凛がいなくなって、マジ焦った。

慌てて追いかけて下駄箱のところで捕まえたけど、思わず強くつかみすぎてしまって怖がられてしまった。

多分俺、必死すぎてすげぇ怖い顔してたと思う。

 

 

 

だって、また花凛がいなくなっちゃったと思ったから。

あの時と同じように。

 

 

 

「ちょっと目を離してた」って言うのは、実はこんなやりとりをしていて…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

紫「ジン!ジン!今日、俺の傘、貸してやるよ!」

神「いや、俺、傘持ってるし」

紫「そう言わずに!遠慮すんなって!持っとけって!そんで、これが俺の傘だって、絶対花凛に言うなよ?」

神「花凛ちゃんて、今日転校してきた?お前の幼なじみだって言う?」

紫「そ!家近いから、今日、傘入れてってもらうから!」

神「なんで自分も傘持ってるのに…え、もしかしてお前…?」

紫「え、えぇ〜〜〜?野暮なこと聞かないでぇ〜!きゃー!」

 

わざとふざけてオネエみたいにかわいいリアクションをとって、逃げていった。

 

 

神「まじか…!でも小学校の時の幼なじみって…まさかずっと!?

…なわけねーよな。今まで、何人も女の子と付き合ってるの見てきたし…」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

自分で言うのもなんだが、俺はかなりモテる方で、今まで結構たくさんの女の子と付き合ってきた。

だから「小学校の時からずっと一途に想い続けていました」なんて図々しいことを言うつもりはない。

だけど他のどの女の子と付き合っても、ずっと心の中から花凛が消えずにいた事は確かだ。

 

 

そう、花凛は、あの日、何も言わずに俺の前から突然消えてしまった、俺の大事な大事な初恋の女の子。

 

 

あいあい傘(花凛サイド)

 

「あの時も、突然いなくなったよな」

駅までの道を相合傘をしながら歩き始めると、紫耀くんがポツリと言った。

 

 

うちの親の転勤が決まる時はいつも突然で、その時は春休みの真っ只中だった。クラスのみんなに挨拶をすることもできずに、新学期になったら突然私は消えていたことになる。

 

 

 

紫耀くんと別れるのは寂しかった。だけど、紫耀くんが同じように寂しがってくれるとも限らない。

学校が休みなのに、わざわざ家まで行って「転校することになった」と伝えに行くのは恥ずかしくてできなかった。

 

 

紫「俺、すっげー寂しかったんだからな」

 

 

え?

驚いて紫耀くんの方を見る。

紫耀くんも私と離れるの、寂しく思ってくれてたの?

すると紫耀くんは慌てたようにして目を逸らす。

 

 

「いやだってさー、結構家族ぐるみで仲良くしてると思ってたのにさ、一言も言わずにって、ちょっと冷たすぎね?まじで!寂しすぎて泣きそうだったわー!」

そのふざけた軽い口調に、ただのリップサービスなんだろうと理解する。

 

 

 

そう、私たちは親同士が仲が良く、時々お互いの家を行き来したり、家族ぐるみの付き合いだった。

だけど、いつも親に連れていかれているだけで、私自身は紫耀くんとそこまでうまく話ができなかった。

 

 

紫耀くんはどちらかと言うと私の兄や弟と飛びまわって遊んでいて、私はママ達のテーブルに居座っているようなおとなしい子供だった。

だから少女漫画にあるような、いわゆる“仲の良い幼なじみで、喧嘩しながら仲がいい“と言う感じとはちょっと違った。

 

 

学校では紫耀くんはみんなの人気者で、クラスだけではなく学年でもモテモテ。クラスの女子に聞けば、全員が「私は〇年生の時好きだった」とか「私は3年間片思いしている」とか、どこかの時期で必ず一度は紫耀くんを好きだったことがある。

それに引き換え、私はクラスでは地味で目立たない存在で、“男子とよく話す1軍女子“には属していなかった。

 

 

 

それでも、クラスの女子が全員好きになるこの男を、実は私も例外なく好きになっていた。

 

 

身分違いの恋である事は分かっていたけど、家の方向が同じなので、なんとなく一緒に帰ってるみたいな感じになることも多々あって(他のメンバーもいたけど)、とにかく「家が近い」と「親同士が親交がある」と言うこの2点の最強に恵まれた環境に助けられ、何とか紫耀くんとの接点を保っていた。

 

 

そして今も、「家が近い」と言う武器はそのままに、さらに「雨」と言う偶然と、さらに紫耀くんが傘を忘れていたと言う奇跡が重なり、紫耀くんと2人で帰れることになるなんて。しかも相合い傘!

なんか私、ついてるかも…!

 

 

 

「あ、もう電車来てんじゃん!まだ間に合う!」

 

もう電車はホームに止まっていた。

 

 

「これ、持ってやるよ。走れる?」

 

傘はもともと紫耀くんが持ってくれていて、さらに私のカバンを持ってくれた。

そして、私の手を取って走り出す。

 

「わっ!ここ、でっかい水たまりあるぞ!気をつけろ!」

 

水たまりを避けながら二人で手をつないで走りだす。

 

 

「キャー!めっちゃ水たまり落ちたー!」

飛び越えたつもりが、まんまと水たまりの中に着地してしまって足がびしょ濡れになる。

「わはは!昔から運動音痴だったよなぁ、花凜は」

「そういう紫耀くんはいつも雨の時、ふざけて傘壊してお母さんに怒られてたよね」

「んで、よくこうやって花凛に、傘入れてもらったよな」

「あの頃に戻ったみたいだね」

「だな!」

 

 

「ほら、濡れるぞ、もっとこっち来い」

 

振り返った紫耀くんが笑って、さらに強く私の手を引いてくれた。

その手は、私の知っている”小学生の紫耀くん”ではなく、大きくてゴツゴツした”男の人”の手だった。

 

 

本当はすごくドキドキしていたのに、「あの頃に戻ったみたい」なんて無邪気なふりで雨に感謝して、したたかに紫耀くんに身を寄せた…。

 

 

 

あいあい傘(平野サイド)

 

子供の頃、「今日は岸家が遊びに来るわよ」と母親が言うと、すごく嬉しかった。

学校ではあんまり話せないけど、さすがに家に来た時はちょっと話せるとワクワクした。

だけどやっぱり、花凛の兄貴や弟とばかり遊ぶことになって、母親達と一緒にテーブルでおとなしく座っている花凛のことをチラチラと気にしながら、意味もなくテーブルにお菓子を食べに行って花凛に話しかける機会をうかがっているうちに、「あんた、さっきから食べ過ぎ!」と母親に怒られたりした。

 

 

だけど、1つだけ俺には花凛と話すことに絶対成功する技があった。

それは雨の日に、「傘が壊れたから、入れてって」と頼んで相合い傘をしてもらうことだ。

花凛は優しいから、そう頼めば絶対に入れてくれる。

そのために、何本傘を壊したことか。

当然母親に怒られて、「もうあんたにはビニール傘しか買ってあげないからね!」と100円の傘しか買い与えてもらえないようになった。

「ぜひそうしてください、次の雨の日にはもう壊れることが決定しているんで」と心の中で母親に謝りながら…。

 

 

 

 

 

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