キンプリ妄想歌詞小説「雨音」11話〜追いつきたい、追い越したい、抜け出したい〜

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これは、キンプリの曲「雨音」「Seasons of Love」の歌詞からイメージしたストーリーの歌詞小説です。

キンプリ歌詞小説「雨音」追いつきたい追い越したい

 

前のお話はこちら

 

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約束

神「そっか、紫耀にも言ったんだね、ストーカーのこと」

「うん、そうなの」

紫耀「ジン、悪いけど、今日も花凜のこと送ってって!俺、バイトのマネージャーに今日話してくる。学校帰りのこの時間には、もう客取らないでくれって。そしたら、毎日一緒に帰れるだろ?」

 

ん?「客取らない」ってなんだ?とちょっと疑問に思ったけど、そこはスルーした。

私がこんなことを相談してしまったせいで、紫耀くんがバイトを減らそうとしている。

お母さんのためにやってるバイトなんだから、減らしたら困るんじゃないのかな?

 

「紫耀くん?本当に無理しないで?バイトしなきゃおうちが困るんでしょ?」

 

紫耀「まぁ…。でも、バイトはもっと夜遅い時間とかに入れてもらうようにするから。とにかく、花凜と一緒にいられる時間を作れるように話してくるからさ。

言ったろ?俺が花凜を守るって」

 

カァーーーっ!そんな恥ずかしいことを真っすぐ言える紫耀くんってすごい(๑////๑)

さすが正義のヒーロー体質。

 

昔からそうだった。

弱いものとか、困っている人とかほっとけないの。

 

 

 

 

紫耀くんが右手の小指を立てる。

 

「え?」

紫耀「ほら、約束」

「紫耀くん、この前指切りしても約束破ったからな~。」

 

恥ずかしくてちょっと素直じゃないことを言いながら、紫耀くんの小指に自分の小指を絡ませる。

 

紫耀「花凜だって一回約束破ってんだから、おあいこだろ?」

 

 

ふふふと笑って指切りをしながら笑い合う私たちを、ジンくんが「はいはい、もういいですか?」と呆れながら遮った。

 

神「じゃ、今日はお姫様は俺が家までお送りしますので」

紫耀「おう!頼んだぞ!ジン!」

 

 

 

 

無邪気に手を振った紫耀くんは、この時ジンくんが心に黒いものを抱えているなんて、思いもしていなかっただろう。

それは、もちろん私も。

 

 

ジンくんの豹変

神「紫耀に話したんだね?ボディーガード、俺じゃ物足りなかったかな?」

 

電車を降りて、家まで歩く途中、ジンくんがちょっと自虐するように笑いながら言った。

 

 

「そっそんなことないよ…!」

 

やっぱり、ジンくんに相談していたのに、それをさらに紫耀くんに相談するなんて、失礼だったよね…。

ジンくん、こんなに親切にしてくれていたのに。

 

 

ジン「こうやって花凜ちゃんと一緒に帰るのも、今日が最後かな?ちょっと寂しいな」

「えっ!?なんで?」

ジン「だって、紫耀のバイトがどうにかなったら、これからは紫耀と一緒に帰るでしょ?そしたら俺はもうお役御免だよね?」

「そんなことないよ!3人で一緒に帰ろうよ!電車、同じ方面なんだから!」

ジン「…花凜ちゃん、けっこう残酷なこと言うね」

「え?」

ジン「本当は紫耀と二人きりになりたいのに、同情で仲間に入れてもらったって、それって俺がどれだけ居づらいかわかる?それに、紫耀と花凜ちゃんが仲良くしてるの、目の前でずっと見せつけられるってことだよね?それ、拷問だよ?」

「ジンくん…?」

 

ちょっと待って?何言ってるの?

それじゃあまるで、ジンくんが私のこと…

 

 

ジン「好きだよ」

 

 

ちょうど家の前について、二人とも足を止める。

 

 

ジン「花凜ちゃんのこと、ずっと好きだったよ。」

「うそ…」

ジン「なんで嘘って思うの?じゃあどうして毎日家まで送ってたと思う?ただ“親切”なだけで、誰にでもこんなことしないよ?花凜ちゃんだから、したんだよ?」

 

そんなこと、思ってもみなかった。

ジンくんは紫耀くんのことをとても大切に思っていて、“紫耀くんのために”、私にも親切にしてくれているんだと思ってた。

 

 

「ジンくん、ごめんなさい…私は、紫耀くんのことが…」

 

 

ジン「許さないよ?これだけ俺のこと利用しておいて、紫耀といい感じになったからって、そんな簡単に乗り換えるだなんて…許さない!」

 

 

人が変わったようなジンくんの迫力に気圧され足がすくんで動かない。

すると、ジンくんはガシっと片手で私の腕を掴み、もう片方の手でワシャっと頭をホールドして、そのまま私の顔ごと自分の唇へと押し当てた。

 

 

荒々しくて激しい、ぐにゃぐにゃと押し付けられるような一方的なキス。

それが、私のファーストキスになった…。

 

 

やだ、やだよ、こんなの…っ!

どうにか逃げようともがいても、圧倒的な力で押し付けられて、離れることができない。

 

 

助けて、助けて紫耀くん…!

 

できそこないの正義のヒーロー(廉サイド)

廉「えっ!えぇっっ!?」

 

角を曲がって、目の前にあった光景に、思わず持っていたカバンを地面に落とした。

マ、マジか…!!こんな激しい路チュー初めて見たぞ!!つーか、路チュー自体、初めて見た!

 

 

振り向いた男は、いつも花凜を駅から家まで送っているあの爽やかイケメンだった。

やっぱりこいつと付き合うてたんか?

昨日は、紫耀とええ感じなのかとちょっと思ったけど。

 

 

その男の後ろに見えた花凜の顔を見て、稲妻が落ちたかのように、体にピキーンと電流が走った。

花凜は泣いていた。

 

 

 

廉「おま…花凜に何しとんじゃーっ!!」

 

俺のパンチはそいつの腕の盾に簡単に弾かれ、あっと思った次の瞬間には、俺の顔面の前で拳が寸止めされていた。

 

 

神「ごめんね?俺、空手黒帯なんだよね。ちなみに全国2位取ったこともあるよ?」

 

廉「は、はぁ~~~っ!?」

普通の相手でもほぼ勝てる相手なんておらんほどか弱い俺が、空手有段者に勝てるわけないやろ~~っ!?

 

 

 

でも、だからって、この状況で逃げ出したら男やないっ!!

 

廉「おりゃぁ~っ」

 

もう一度向かっていって、デタラメに拳を振り回す。

 

神「もぅ、懲りない子だね。本当は素人相手に手なんか出したくないんだけど、ちょっとだけ、大人しくなってもらうよ?」

 

廉「うっ…!」

 

コツンと一発、みぞおちにパンチを食らった。

ものすごい手加減してくれた感はあったが、それでも痛いものは痛い。

 

「廉くんっ!大丈夫!?」

腹を押さえて膝から崩れ落ちた俺に花凜が駆け寄る。

 

 

俺、かっこわる…。

女の子のピンチにかっこよく現れて、アチョー!っと敵を倒す…なんて、俺にはできひん…。

でも、俺を殴ることで気が済むなら、いくらでも受けて立つ。

そんな方法でしか、守れんけど、それでも…!

 

 

 

あれ、なんで俺、こんなにムキになっとんのや?

痛いのとかめっちゃ嫌いやし、暴力とは無縁で生きていたいタイプやのに。

 

女のために体張るとか、らしくない。

 

でも、何故だか分からないけど、今、無性に体がカーッと熱くなってる。

 

 

そして、体全体にパワーがみなぎっている感じがするんや。

正義のヒーローになり損ねた、とんだできそこないやけど、それでも今こいつを守れるのは俺だけや。

こいつを…花凜を、守らな…っ!!

 

 

 

廉「だ、大丈夫や…。お前のことは俺が守っ…」

 

 

 

 

「花凜っ!?」

 

伸ばしかけていた俺の手が、花凜の頬に到達する前に、背後にハスキーな声が響いた。

 

 

「紫耀くんっ…!!」

 

 

 

そして、すり抜けていく。

伸ばした俺の手の横を足早に。

本物の正義のヒーローが現れて、目に見えるほどの安堵感を溢れさせながら、たくましいその胸に飛び込んでいく。

 

 

そして、正義のヒーローになり損ねた貧弱な男は、伸ばした手をどうしたらいいかも分からず、虚しくその場に取り残されていた。

 

 

だから心に決めていたはずだろう?

女になんか優しくするなって。

俺がどんなに一生懸命守ろうとしたって、どうせ離れていくんだ。

あの女のように…。

 

犯人(廉サイド)

紫耀「な、なんだ!?何があった!?」

 

突然花凛に抱きつかれて、紫耀は驚きながらもなんだかデレデレしている。

チッ、突然現れてかっさらって。

なんやむかつくから、言うてやった。

 

廉「今、こいつにキスされたんやで、無理矢理」

 

紫耀「えっ…どういうことだよ、ジン…」

 

紫耀が泣いている花凛に視線を落とし、ジンとか言う男と見比べる。

そして、急に氷のような目にかわり、自分の腰に回っていた花凛の手をそっと離し、ジンにゆらりと近づいていく。

 

紫耀「どういうことだって聞いてんだよ…‼︎」

 

紫耀がジンに殴りかかって、ジンは空中を飛んだ。

その瞬間にジンの携帯がポケットから落ちて、その衝撃でパッと画面がついた。

 

 

紫耀「え…これ…?」

 

紫耀が固まっているので、何かと思って覗きこむと、画面に映った写真には見覚えがあった。

花凛の家の外から撮った写真。

花凛が、俺をストーカーだと疑って、「本当に廉くんが送ったんじゃないのね!?」と見せられた写真だった。

 

紫耀「花凛に嫌がらせのメール送ってたのって…」

神「あーぁ、バレちゃった…?」

 

ふぅ、とため息をついて、ジンが携帯を拾った。

 

ま、まじか。

ストーカーの正体って、コイツやったんや…⁉︎

 

サイコなジン

「嘘…ジンくんが…?どうして?」

 

 

神「だって、花凛ちゃんが、もう家まで送らなくていいなんて言うからさぁ。ちょっと怖がらせれば、ボディーガードが必要になって、花凛ちゃんの方から俺に頼んでくるかと思って。

紫耀が家のためにバイトが大変だってそれとなく吹き込んでおいたから、紫耀には迷惑かけたくなくて、俺を頼るしかなかったでしょ?

ほんと、花凛ちゃん、面白いほど計画通りに動くもんだから、もうニヤついちゃいそうでさぁ。隠すの大変だったよね〜。」

 

多分今、結構な修羅場だと思うけど、全く悪びれもせず飄々と話すコイツ、ちょっとサイコみがあって怖いんやけど…。

 

神「でもちょっとやりすぎちゃったかな?花凛ちゃん、紫耀にも相談しちゃうんだもんなぁ。急に2人がいい感じになっちゃうもんだから、ちょっと焦って、強引に行っちゃった。」

 

ジンがペロリと舌を出して唇を舐める。

“キス“を連想させるその仕草に挑発されたのか、再び紫耀がジンに飛びかかった。

 

 

 

紫耀「お前…っ!花凛のことが好きなら、余計にやっていいことと悪いことがあるだろ!?

好きな女、傷つけんなよ…!花凛がどれだけ怖い思いしたと思ってんだよ…!」

紫耀は馬乗りになって、ジンの胸ぐらをつかみあげた。

 

 

「紫耀くん、もういいよ…」

 

花凛が泣きながら止めに入って、やっと手を離した紫耀は、「お前のこと、信じてたのに…」と小さくつぶやいて、ジンに目を背けた。

怒っているというより、傷ついているようにも見えた。

 

 

神「紫耀はさ、俺が何でも譲ってくれるって言ってたじゃん?あんま馬鹿にしないでくれる?俺にだって、譲れないものがあるから」

 

ジンは起き上がってパンパンとズボンをはらった。

 

紫耀「帰れ。もう二度と花凛に近づくな。お前とは絶交だ」

 

紫耀が目をそむけながら、低い声でつぶやく。

ジンはカバンを拾って、無言のまま帰っていった。

 

 

「紫耀くん…」

花凛がまた紫耀に駆け寄り、紫耀は優しく花凛の肩を抱いた。

 

モブキャラ(廉サイド)

完っ全に、修羅場ってやつ…。

 

そして、俺は完全に傍観者。

ヒロインを助けそびれ、ヒーロー役にもヒール役にもなれなかったモブキャラ。

 

 

ちっ、相変わらず、かっこええやん。

俺が全く手の出なかった相手を、一撃で倒しちゃうんやもんなぁ。

 

 

紫耀「廉も大丈夫か?花凛のこと助けようとしてくれたんだろ?ありがとな」

 

そして、モブキャラにも気遣いを忘れない。

別に、紫耀に礼を言われる筋合いもないけどな。

 

 

廉「あー、なんか、遊びにきたんやけど、海人いないみたいだから、俺、帰るわ。」

紫耀「おぅ、大丈夫か?ほんと、ありがとな」

 

そして、2人が俺を引き止めるわけもなく。

そら、そうやろ。どう考えても、今、俺は邪魔者。

完全に今、悪役を倒して、ヒロインがヒーローに抱きついてめでたしめでたし、「完!」な状態で、モブキャラの俺は、いち早く画面から退散せな。

 

廉「ほんじゃなー」

紫耀「おぅ、気をつけて帰れよ?」

 

 

花凛はまだ泣いていて、紫耀が花凛の肩に手を回して、家の中に連れて行くのが視界に入ったけど、あえて振り向かずに歩いた。

 

 

 

完璧な男(廉サイド)

昔から紫耀は完璧だった。

 

まるで本当にヒーロードラマから飛び出してきたような主役のレッド。

ヒーロードラマはそれでえーやん。

ヒーローが全部いいとこもってて、可愛くてか弱いヒロインも、めちゃくちゃ悪いヒール役も、力が足りないモブキャラも、全員がヒーローを際立たせるために存在しているんやから。

 

だけど、現実の世界は違うんやで?

モブキャラにだってモブキャラの人生があって、別に誰かを輝かせるためだけに存在しているわけやない。

 

 

小さい頃は、何でもできる完璧なお兄ちゃんが自慢で大好きだった。

お兄ちゃんに追いつきたいって、いつも思ってた。

俺の目標やった。

 

だけどいつ頃からか、気づいたんだ。

 

俺だって、基本は周りの人間より何でもできる方だったのに、何をやっても「さすが、平野紫耀の弟」としか褒められない。

 

そら、この顔面やから、女の子も放っておかない。

だけど寄ってきた子に聞いてみれば、「紫耀くんに弟がいるって聞いて、どんなイケメンかって興味湧いて!やっぱり紫耀くんの弟だからかっこいいね!でも、全然顔は似てないけどね!(紫耀くんの方が顔がタイプと言う意味合いがにじみ出ている)」とか言いやがる。

血つながってないっちゅうねん!

 

紫耀経由じゃなく俺自身に寄ってきた女ももちろんいたが、「廉くん、お兄さんいるの!?見てみたい!」と言って、実際に紫耀に会ったら、「お兄さん、ヤバすぎなんだけど…」と言葉を失う。

そして、紫耀に乗り換えるんだ。

 

 

ずっと、その存在に追いつきたい、追い越したいと思っていた。

だけど、どう頑張っても超えられないのなら、いっそこの場所から抜け出したいと…。

 

 

 

もし紫耀に完璧でないところがあるとすれば、紫耀が完璧であればあるほど、俺がかすむってことに気づいてないところ。

そのまぶしすぎる光から、俺が離れたいと思っていることに、気づいていないところ…。

 

このままじゃ僕ら いつまでも満たされはしないだろう

抜け出したい 駆け出したい

 

このままじゃ僕は 今よりも輝けはしないだろう

追いつきたい 追い越したい

いつも昨日超えていたいから

King & Prince「僕らのGreat Journey」

 

続きはこちら。


 

 

今回は、ジンくんに悪役をやってもらいましたが、私の中で、超完璧な国民的彼氏のイメージの端から、ちょっとサイコな一面が見え隠れしちゃってるジンくんってツボなんですよねぇ〜(笑)

あんまり無理していつも、模範解答をし続けなくてもいいんだよ〜と言ってあげたくなる。↓

ポポロ「交通費出すよ」問題、ちょっぴりサイコみある神宮寺勇太がじわじわ面白い(笑)

 

あとは、神宮寺くんの

  • 空手黒帯
  • 全国2位の実績

という本当にあったエピソードを使わせていただきました!

 

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