キンプリ妄想歌詞小説「Doll」13話 最終回~叶うならガラスケースに飾っておくわ これからずっと失わないように~

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いよいよ最終話です。

花凛と紫耀の関係を知ってから、嫉妬でおかしくなってしまった廉。
廉からの束縛に苦しむ花凛。
そんな廉から助け出してくれると言ってくれた紫耀。

花凛が選ぶのは…!?

叶うならガラスケースに飾っておくわ
これからずっと失わないように

いつか貴方がこんな私に愛想尽かすならその前に呪い殺してしまえばいい…

永瀬廉・神宮寺勇太(King & Prince)「Doll」 作詞作曲:TOOBOE、編曲:TOOBOE・川端正美

私の書く”音楽小説”は、キンプリの曲の歌詞をモデルにしてストーリーを作っています。
こちらの小説は、キンプリの曲「Doll」の歌詞からインスパイアされた小説です。

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雪の奇跡(廉サイド)

「はぁ~っ!先輩っ、本っ当にお疲れ様でした!このプロジェクト、先輩がいなかったら成功してなかったっすよ!本当にありがとうございました!!」

クライアントの会社を出て、一緒にプロジェクトを進めてきた後輩が振り返って後ろ向きに歩きながら言う。

「でも、これでほんとに先輩、会社辞めちゃうんですよね…。このプロジェクト無事に終わること望んでたけど、先輩がいなくなっちゃうって考えたら、ずっと終わらないでいてほしかったって言うか…」
「いや、それ困るから(笑)それじゃいつまでたっても家族と一緒に暮らせへんやん」
「そりゃそうですけど~!でも、先輩とお別れするの寂しいですよぉ~~!先輩も俺と離れるの寂しいでしょ!?ね!?今、泣きそうでしょ!?」
「全然、今俺、ルンルンやわ。”前と離れる” < “家族と一緒に暮らせる”、やもん」
「えぇ~~そりゃそうですけどぉ~~~!先輩のドSぅ~~~!!」

冗談めかして言ったものの、だいぶ本心だった。
後輩が言うように、このプロジェクトは俺なしでは成功していなかっただろう。
それがわかっていたから途中で投げ出すことができずに、花凛と咲人を先に新潟に送り出して俺だけこっちに残ったが、その選択は間違いだったと今になって思っていた。

まさか俺と離れている間に、花凛が紫耀と再会してしまうなんて思いもしなかった。

一緒にいる間、あれだけ花凛に変な男が近づかないように警戒して、姿を消した紫耀がいつまた現れるかと怯えていたのに、まさかほんの少しの期間離れることになったその瞬間に、2人が再会してしまうなんて。
そりゃ、花凛と咲人だけを先に新潟に行かせるのはめちゃくちゃ心配だったけど、プロジェクトはだいたい半年で終わるだろうことはわかっていたし、たった半年で俺たちの結婚生活が破綻してしまうことなど、誰が想像できただろうか…。

花凛は俺を裏切った。
俺を裏切って紫耀と…。
それは、とうてい許せることではない。
今、思い出すだけで、この場で大声を上げて暴れまわりたいほどの衝動に駆られる。

しかし、許せないからと言って、花凛と離婚するという選択肢は俺の中には1mmもなかった。
花凛が俺に対してどんな裏切り行為を行おうとも、花凛の気持ちが俺から離れて行こうとも、俺は花凛を手放すつもりはない。


だから、花凛を家に閉じ込めた。
全ての連絡と行動を監視し、花凛の自由を奪った。
そんなことをすれば、どんどん花凛の心が離れて行くばかりだということはわかっていた。
それでも、そうする他、どうしようもなかった。

花凛には、俺の帰りだけを待っていてほしい。
一日中、俺のことだけを考えていてほしい。

俺は仕事以外の時間は全て家族に捧げることができる。
もはや仕事中ですらずっと花凛のことを考えている。


それなのにどうして花凛は、
俺がこんなに思っているのに、
どうしてまた俺の手から逃げ出そうとするんや…。

「先輩どうしました?なんか手震えてません?」
さっきから俺の腕にじゃれついてきている後輩が、スマホを持つ俺の手を見て不思議そうな顔をする。


「寒いですか?手袋貸しますぅ?」
そんな後輩の手を振り払いもう一度スマホを確認する。
GPSの履歴が、花凛の居場所を家の近くの神社と示していた。


実は少し前にも花凛はこの神社に行ったことがあった。
週末に帰った時に何をしていたのか問い詰めると、「散歩していて立ち寄っただけだ」と答えた。
確かに滞在時間はほんの少しだったので、そこまで怪しむ必要はないのだが、”神社”というのがとても引っかかった。


神社は花凛と紫耀にとっての思い出の場所だ。
毎年、七夕はそこで会うことを決めた約束の場所だ。
から花凛は、紫耀と別れた後、そして俺と付き合った後にも、毎年7月7日だけは神社で紫耀を待っていた。


花凛がどうしても紫耀を忘れきれていないことを知り、一度は俺も花凛のことを諦めようと思ったが、どうしても諦められなかったことと、咲人ができたことをきっかけに、花凛と結婚することになった。


しかしあの日、花凛があの神社で待っていたのは、紛れもなく紫耀だった。
俺ではなく紫耀だったのだ。


しかし迎えに行ったのは俺だった。
振り向いた花凛が、俺の顔を見て、残念そうな表情を浮かべたことが、今でも忘れられない。

あの時、迎えに来たのが俺ではなく紫耀だったら、きっと花凛は何もかもを捨てて、紫耀と一緒に俺のもとを去っていったんやろう。


そんな運命を分けた場所、それがあの思い出の神社だった。


そんないわくつきの”神社”という場所に花凛が行ったことがどうしても気になって、新潟に行った時に、その神社の場所を確認してみたことがある。
花凛と紫耀の思い出の神社とは特段風景が似ているわけでもなく、家の近くにあるさびれた小さな神社ということくらいしか共通点がなく、安心した。


全く別の神社なのだからそこまで気にすることはないのかもしれないが、しかしもう”神社”という響きだけで嫌な予感がしてしまう。

そんな神社という場所に花凛はまた出向いている。
しかも今回はそれなりに長い時間そこにいたようだ。
散歩で立ち寄ったからと言って、そんなに時間が潰せるような場所でもない。

怪しい。怪しすぎる。

きっと花凛は誰かと一緒にそこにいたはずだ。
その相手は…
一人しかいないやろう。


後輩が心配するほど、俺は自分の手がワナワナと震えているのがわかった。

また…
また花凛は俺を裏切るのか…?

「あれ先輩!?これ雪じゃないですか!?え!?本当に!?雪!マジ雪っすよ!!すげー!!」
後輩が大騒ぎしている声に我に帰って顔を上げると、確かにチラチラと白いものが舞っていた。

「えぇーーっほんとに雪っすよ!すげー!雪なんて、何年ぶり!?確か俺が高1くらいの時かな?雪降ったことあるんすよ!先輩覚えてます!?その時、先輩何歳くらいでした!?」


覚えてる。
忘れるわけない。


俺が花凛にプロポーズした日や。


その時の風景と感覚が一気に体中に蘇ってきて、鳥肌の立つ感覚を覚える。


温暖なこの街に突如降ってきた雪と、俺の隣で笑う花凛の姿が重なって、まるで奇跡みたいに思えた。


あの時まだまだ紫耀に対する劣等感があって、花凛が本当に俺を好きでいてくれているのか不安はあったけど、でも確かに花凛は俺の隣で笑っていた。
そこにあると思ったのに手に取ったらすぐに透明な水になって消えてしまう雪みたいに、人の心は透明で見えないのだから、信じるしかないのだと心に決めたじゃないか。

花凛が俺に向けてくれる笑顔を信じるから、これから先、絶対に花凛を傷つけないと誓うから、
だから神様、どうかこの幸せが続きますようにと、空から降ってくる雪を見て願った。


どうして俺はそんな大事なことを忘れてしまっていたのか。


二度と花凛を傷つけないと誓ったのに、俺は…。
花凛に俺のことだけを考えていて欲しくて、そのためには花凛を縛っても仕方がないと思った。

だけど、本当はそれじゃ意味がなかった。
俺のことばかりを考えていても、それが俺への”怯え”であっては意味がなかったんだ。


本当は、俺のことだけを愛していてほしかった…。
ただそれだけだったのに…。

いくら指輪をつけて俺のものだと示しても、体を無理やり奪っても、
心までは縛れないんや…。

今頃、そんな当たり前のことに気づいても、もう遅いやろうか?
あれから何度、俺は花凛の心を傷つけてしまったんやろう…。

もう遅い?
花凛の心は、完全に俺から離れてしまった?

今すぐに、花凛に会いたい…。

淋しさが埋まるまで側にいて

神社にいたことはきっと廉にバレてる。
廉はいつだって私の行動をちくいちチェックしていて、ほんのささいな変化も見逃さない。
そして、少しでも怪しいところがあれば、徹底的に追求してくる。

週末帰ってきた廉は、表情がなく、なんだかいつもと違った。
きっと、ものすごく不機嫌なんだと思った。
私が紫耀くんと会っていたこと、きっと勘づいてる。
今日のお仕置きはどんなものになるのかと考えると背筋がゾクッと寒くなる。
だけど、もし本当に紫耀くんと一緒に逃げるなら、そんなお仕置きももうこれが最後かもしれない。
そう思ったら、なんだか心が軽くなる思いだった。

「じゃぁ、今日も咲ちゃんはばーばのお部屋で寝ようねー。おやすみー」
いつものように、お母さんが咲人を自分の部屋に連れていく。
寝室で廉と2人。緊張が走る。

「昨日、近くの神社行った?」
やっぱり、その話から始まった。

「うん」
「何しに?」


ここからきっと、執拗に問い詰められる。
言い逃れ、できるだろうか。


「えっと、ちょっと気晴らしに散歩…」
「ちょっと気晴らしに…」
廉は小さな声で繰り返して、ゆっくり私に近づく。

ダメだ。やっぱり怪しまれてる。

廉の手が伸びてきて、身を固める。
しかし、その手は私の顔の横を通り過ぎて、ベッドサイドのテーブルに置いてあった私のスマホを取った。


あぁ、証拠チェックか。
それなら大丈夫、紫耀くんとはスマホで連絡を取っていない。
スマホをチェックして廉の気が済むのを待つ。


すると廉は、「はい、これで完了」と言って、スマホを私に返してきた。
「アプリ、消したから」
「え?」
「位置情報アプリもメール転送アプリも消したから」


予想外の言葉に、一体廉が何を考えているのか、すぐには理解できない。


「今まで…ごめん…ずいぶんと辛い思いさせとったよな?」
今度は廉は私の隣に座って、そっと私の頭に手を添える。
それから優しく頭を撫でてくれた。


「もう、花凛の行動チェックするのもやめる。位置情報も誰とどんなメールしてるかもチェックしたりしない」
「廉…?どうしたの…?」


なぜ、突然廉がこんなことを言うのかわからないし、その豹変ぶりが逆に怖かった。


「今までほんまにごめん…ごめん…」


廉は私を抱きしめると、私の肩にぐったりとうなだれるように顔をうずめる。


「俺、ずっと不安やった。いつか紫耀が現れて、花凛のことかっさらっていくんやないかって。花凛と結婚して、咲人が生まれて、すごく幸せやったけど、でもずっと不安やった。
幸せになればなるほど、不安は大きくなってった。この幸せを失いたくないって。
俺さ、もともと母親に捨てられとるし、父親はあんなやったし、紫耀と紫耀のお母さんはすごくよくしてくれたし感謝してるけど、なんかどっかで”紫耀の家族に入れてもらった”っていう気持ちが消えんくて。
だから、俺が初めて手に入れた家族は、やっぱり花凛と咲人なんや。あぁ、俺の家族や…って、心から思えるんよな。
それが幸せで、だからこそ…失うのがすごく怖かった…。
もうこんなことせんから、だから、だから…俺のそばからいなくならんで…」

廉はすがるように力なく私を抱きしめた。
そのあまりにも悲痛な様子に、思わず私も廉の背中に手を回す。

あれ…?

「廉、痩せた…?」

背中に回した手の感触がなんか前と違う。
もともと肉なんてなかったけど、ほんとに皮一枚でそこに骨があるのがわかる。

そういえば、最近、一方的に”される”ばかりで、”抱き合う”という感じではなかったから気づかなかったんだ。
しばらく、私の方から廉に触れてなかった。
まじまじと廉の顔を見ることもなかった気がする。

「花凛が不安にばっかさせるからやん…」



いつの間にか、こんなに頬もこけてたんだろう…もともとクッキリとしたきれいなフェイスラインをしていたけど、今では顎のラインも頬骨も少し目立ちすぎているように感じた。

「ごめん…」

私のせいだよね。
私が、廉を裏切って、廉を悩ませて、廉を不安にさせてたから…。

その日は、廉は無理やりしようとはしなかった。
その代わりに、私の手をギュッと握りながら眠った。同じ「ぎゅっと握る」でも、私の手を力強く引っ張ってあの家から連れ出してくれた紫耀くんの手とは全然違って、それはまるで、私に「どこにも行かないで」とすがっているように感じられた…。

私は、どちらの手を信じてついていけばいいの…?

答えはわからなかった。

でももし、私がこの手を振り払ったら、廉の心はパリンと割れて壊れてしまうんじゃないかと、それくらい繊細なコワレモノのように、今の廉は弱っていた。

付き合ってた頃も結婚してからも、廉はずっと私にありったけの愛をぶつけてくれてきていた。
私はそれをちょっと”重い”と感じてしまうこともあって、私は廉に同じだけの愛を返してこなかったような気がする。
廉が「好きだ、好きだ」と言ってくれるのをいいことに、どこか甘えていたのかもしれない。

私は結婚してから不安なんて一度も感じたことがなかったけど、廉はずっと不安だったんだ。
紫耀くんがいなくなってからもう何年も経っていたのに、紫耀くんとの思い出のつまったあの町から私を離れさせたがっていたのも、それだけ不安だったからだ。

廉の心がSOSを出していたのに、私はそれに気づきもせず、不安を一度も感じることなく過ごせる結婚生活を廉が与えてくれていることにろくに感謝もせず、
そして、廉が一番恐れていた紫耀くんとの再会、そしてさらにそこから関係を進めてしまった。

私はなんてひどい女なんだろう。
それでもなお、廉は私に「どこにも行かないで」とすがってくれる…。


そんなことを考えていたら、なんだか私の胸も張り裂けそうに痛くなって、骨ばった薄っぺらい廉の体を抱きしめるようにして眠った。

淋しさが埋まるまで側にいて 疑いようもない程に近く

King & Prince「Doll」

コメント

  1. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    更新ありがとうございます!

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