キンプリ妄想歌詞小説「Seasons of Love」16話〜どうしてその手に触れたくなるのか〜

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前回は、ちょっぴり刺激的なお話で、廉くん大ショック…!!
からの、、、
今度は紫耀くんの超ショッキングな秘密が明らかに…!?

前半戦の「雨音」は紫耀くんメインのターンだったのですが、メインのはずの紫耀くんがなかなか「バイト、バイト」と忙しく不在がちでした。
実はこの“バイト“が超重要な伏線となっていたのであります…!

キンプリ歌詞小説Seasons of Love永瀬廉

 

これの前の話はこちら↓

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推しに対する萌え(ジンサイド)

ジン「どしたー?今日ずっとポーっとしてんじゃん」
紫耀「ふっ…ふふふふふふ…」
ジン「えっ!?なに!?気持ち悪っ…!!ん?え!?もしかして、花凛ちゃんとなんか進展した!?」
紫耀「あれぇ~なんでバレちゃったかなぁ~?」
ジン「いやいやいや!めっちゃ顔に出てたから!モロバレだから!」
紫耀「てかジン!お前、花凛にあんなエロい服着せて喜んでんじゃねーよ!お前、さてはまだ花凛のこと好きなんだろ!?」
ジン「は?全然エロくなくったじゃん!?むしろ、めっちゃ清楚系だったじゃん!?お前がエロい目で見てたから、エロく見えただけじゃん!?」
紫耀「ん?そうか?」
ジン「で?何?何があったって?え⁉︎もしかして、花凛ちゃんとヤッ…った?」

 

紫耀はガラにもなく頬を赤らめながら、コクリと小さくうなずいた。

 

ジン「え、えぇ〜っ⁉︎」

 

 

付き合い始めたはいいけど、デートはいつも花凛ちゃんの家(妹溺愛お兄様のめちゃくちゃ厳しい監視付き)で全然進展しないから、ちょっと後押ししたつもりだったけど、まさかこんなに効果あるとは…。

 

ジン「で?で?どうだった⁉︎」
紫耀「は⁉︎お前ってそういうこと聞くキャラだったっけ⁉︎やっぱりお前、まだ花凛のこと好きなんだろ⁉︎詳しく聞いて、想像する気じゃねーだろな⁉︎絶対教えねーぞ!?」
ジン「いやいや、ほんと、花凛ちゃんのことはもうなんとも思ってないから安心しろって…(笑)」

 

今まで紫耀の女関係の話なんて、絶対に聞きたくなかった。
でも、紫耀が花凛ちゃんと付き合うようになって、手の届かないアイドルのような存在なんだと割り切れば、恋愛観も知りたいし、ちょっと複雑だけどラブシーンだって見たい。
紫耀が本気の彼女に対して、どんなふうに優しくするのか想像したら、ちょっと興奮するぜ。

 

 

これが推しに対する萌えというやつか…!

 

 

2人を応援するようになって、なんだかとても気持ちが軽くなった。
失恋はしたけど、大切な親友までもは失わずに済んだ。

初めての感想(紫耀サイド)

「どうだった?」なんて、まるで初心者みたいなことを聞いてしまった。
今まで、数え切れないほど経験なんてあったけど、相手にどう思われてるかなんて不安になったことなかった。
“好きな相手とする“と言う意味では、俺だって初体験だったのかもしれない。

 

〜〜〜〜〜〜

「えっと…海人よりもだいぶおっきかった」
紫耀「は!?」

 

思いもかけない感想に、飲んでいた水を吹き出しそうになったが、花凛が丸太を抱くように手で輪っかを作っているので、”抱き心地”の話をしているのだと気付いた。

 

 

紫耀「てか、海人のやつ、花凛のベッドで一緒に寝てるった言ってたけど、抱き合って寝てるわけじゃないっしょ⁉︎」
「んー、海人がいつも抱きついてくるから、ヨシヨシって感じで?」

 

 

あいつ、今度会ったら殴っとこ。

 

 

「あ!どっちかっていうとお兄ちゃんの厚みに近かったかも!腕組んだ時の感じとかも似てるなーって前から思ってたし!」

 

 

 

…うん、とりあえず花凛が優太と海人の2人しか男を知らない(←言い方おかしい)ということがわかって、ちょっと安心したような、でもそんなピュアさにちょっと罪悪感のような感情が胸の中でザワザワした…。

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

紫耀「うん!それはそれは、”すっごいよかった”って言ってたな!」
ジン「ま、マジかよ!?花凛ちゃんって初めてだよな?初めての子にその感想言わせるって、お前やっぱすげーな…。」

 

めちゃくちゃ見栄を張ってしまった…。

マジで俺、急にチェリー感すげーじゃん…。

 

ジン「でもさぁ、正直びっくりした。ちゃんとするまで、まだ手出さないかと思ってたよ。お前、あのデートの時、バイトまだちゃんと辞めれてなかったよな?」
紫耀「あ、うん…それは…。う〜、だから、ジンのせいなんだって!…本当は、俺だってちゃんとしてからって思ってたのに!お前のせいだ!」
ジン「だから俺をライバル視するなって(笑)まぁでも、今はちゃんとバイト辞めれたんだもんな?ならいいじゃん、もう」

 

 

紫耀「なぁジン、1度間違った道に進んでしまった人間でも、幸せになることってできるのかな?」
ジン「できるよ、絶対やり直せる。だって、ずっと待ってた運命の人にやっと再会できたんだろう?」

 

 

触るな(廉サイド)

「あれ〜!廉くん!なんか、久しぶりだね!?」

 

あれから、駅で花凛を待つのはやめた。

たまたま花凛と鉢合わせするのも嫌だったから、わざと学校で時間をつぶして、少し遅めの時間の電車に乗るようにしていた。
それに、もし電車で会わなかったとしても、早く家に帰って、また紫耀と花凛が家に来ていたらと思うと…。
もう家に帰ることすら怖かった。
それなのに…。

 

 

廉「なんでこんな時間におんねん…!?」
「今日、委員会でちょっと遅くなっちゃって…。廉くん、最近会わないよね?いつもこんなに遅い時間なの?家に帰るのも遅いよね、どうしたんだろうって紫耀くんも心配してたよ?」

 

花凛の口から紫耀の名前が出るだけで胸がズキズキと痛む。
ちょうど電車が駅に到着した。

 

廉「じゃ」

 

 

人混みをすり抜けるようにして出口へと向かう。

 

「え!ちょっと待ってよ、私も降りるし!」

 

花凛がもたもたしている間にどんどんと階段を登って改札を通り、また階段を駆け下りる。

 

 

「廉くーん、ちょっと待ってよ、どうしたの!?せっかく久しぶりに会ったんだから一緒に帰ろうよ?」

 

息を切らしながら、花凛が走って追いかけてきて、俺の手を取る。

 

 

 

廉「触んなや!汚い!」

 

 

思わず怒鳴りつけて手を払いのけていた。

 

花凛が何が起こったのか分からないという顔で、大きく目を見開き立ち尽くしている。

 

 

わけもわからず拒絶されたことに、その瞳には傷心の色が浮かんでいる。

もっと傷つけてやりたいと思った。

俺の胸の痛みはこんなもんやない。

 

 

廉「紫耀とやりまくっとんのやろ!このビッチが!」

 

 

驚いたような、傷ついたような顔で立ち尽くす花凛を残して、俺は走ってその場から逃げ去っていった。

 

 

もう会いたくない!顔も見たくないんや!

 

だけど、いつもどの電車に乗ったら、花凛に会わないで済むか考えてた。

家の玄関を開ける時も、花凛が来ていたらどうしよう…と怯えていた。

夜眠りにつく時も、すぐ隣のベッドで紫耀と花凛は愛しだったんだと、悪夢のように思い出していた。

 

 

結局、全然忘れられてなんかいない。

いつもいつだって、花凛のことばかり考えていたんや…。

 

 

自分の気持ち 気がついた頃には

今更だよね 言い訳ばかりして

そのくせ24時間ずっと

飽きもせず考えて

King & Prince「Seasons of Love」

作詞:MUTEKI DEAD SNAKE、作曲:MUTEKI DEAD SNAKE・児玉啓介

 

 

 

今ここでしたい

(花凛サイド)

え!え!え⁉︎
私ってビッチなの!?

確かに、あれから何度かしたのは事実だけど!

でも別に、やり”まくって”はないし!

しかも、別に誰から構わずやってるわけじゃないじゃん!
好きな人として何が悪いの!?

 

なんなの、廉くん⁉︎

 

 

紫耀「花凛、今日、うち来る?」

紫耀くんと二人で屋上でお昼を食べていた。

 

「え!?き、今日も…!?」

 

今日もまた、あのめくるめく夢のような時間にいざなわれるの!?

 

 

(紫耀サイド)

紫耀「あ、いや…っ!嫌ならいいんだ!今日は、花凛ちにしよっか?」

 

 

やばい、ちょっと頻繁に誘いすぎたか。
最近、俺ん家で会うこと多かったし、そのたびに…て感じになってたし。

 

なんとなく、イエスノー枕みたいに、「俺ん家に行く」をオッケーしてもらった時点で、「今日はイエス」ってことだと思っちゃってた感がある。
やばい…!体目当てって思われる〜!( ̄□ ̄;)‼︎

 

 

でも、いちど触れてしまってから、自分が抑えられなくなっている事は確かだった。

 

 

「ううん!行く!今日も紫耀くん家で会いたい!」

 

えぇ〜っ…⁉︎せ、積極的ぃ…!

 

(花凛サイド)
廉くんになんて言われようと、私は紫耀くんが好きだし、紫耀くんも私を想ってくれている。
好きな人に触れたいと思うのは自然なこと。

関係のない廉くんに、とやかく言われたくないよ!

 

廉くんに紫耀くんとの関係を悪く言われた気がして、私たちは決してそんな汚れた関係なんかじゃないと証明したい気持ちだった。

 

 

「紫耀くん、好き…」
紫耀くんの腕にピトッとくっつく。

 

紫耀くんはちょっと驚いて、顔を赤らめた。
紫耀「お、俺も、好き」

 

 

「ねぇ、今、したいな。学校じゃ…ダメ?」
紫耀「えっ!えぇ…っ⁉︎今⁉︎ここで⁉︎( ゚д゚)」
「あ…っ!ダ、ダメだよね…学校でキスなんて…ごめん、私、何言ってんだろ…!」
紫耀「え!あ、キスね⁉︎あ、あははは、そうだよね〜\(//∇//)\(俺こそ何考えてんだ…!)」

 

 

紫耀くんは、なぜか真っ赤になって、慌てている。

 

紫耀くんが私の肩をそっと掴み、くるりと自分の方へと向けさせる。
それから優しく、そっと撫でるように頭をホールドされる。
この大きな手、柔らかい唇、やっぱり一瞬で夢の世界へと連れていかれる。

 

もう廉くんのことなんか、頭から吹っ飛んでいた。

 

紫耀の秘密(花凛サイド)

ジン「紫耀!紫耀ー!!やばいやばいやばい!!」

ドタバタと階段を駆け上る音、バンッと開かれた屋上のドア、青ざめた表情のジンくんが、飛び出してきた。

 

 

紫耀「わっ⁉︎なんだよ、ジン、今いいとこだったのに…」
ジン「んなこと言ってる場合じゃねーぞ、紫耀!なんか、すごいケバいお姉さん、学校に乗り込んできてる!お前のこと、探してる…!多分あれ、お前の”客”だよな?」

 

紫耀くんが一瞬で青ざめて、私は「客」の意味がわからず、ぽかんと立ち尽くしていた。

 


 

それはそれは、大層な“修羅場“だった。

学校に乗り込んできたその女の人は、紫耀くんを見るなり、「本当に高校生だったなんて…!」と青ざめ、それでも紫耀くんに食い下がり、「なんで突然連絡くれなくなるのよ〜!?」と発狂した。

 

教師たちが何人も駆けつけて、その女の人は取り押さえられた。
紫耀くんは職員室に呼び出され、午後の授業は「静かに自習していること!」と言って、先生は慌てて教室を出て行ったけど、誰1人静かにしている人なんていなかった。
私とジンくん以外は…。

 

 

さっきの女の人が全てぶちまけたため、クラスの子たちはほぼ全容を理解していた。

 

「まじ、やばくない!?紫耀くん、“レンタル彼氏“のバイトしてたんだって!」

「高校生がそんなバイトしていいの?」

「20歳の大学生って嘘ついて登録してたらしいじゃん」

「レンタル彼氏って実際何するの?」

「基本は、お茶したり、カラオケしたり?でも、実際は見張りがついているわけじゃないから、客から、”それ以上”のことを求められて、金額に折り合いがつけば、後は当人同士の問題じゃん?

規約違反でも、それで客がリピートして指名してくれるなら、斡旋する会社のほうも、“黙認“って感じで厳しくは取り締まったりしないんじゃない?」

「やっぱ…それってつまり…」

 

 

「紫耀くんは、お金をもらって女の人としてたってこと?」

 

 

 

 

「しかも1人や2人じゃないらしいじゃん」

「紫耀くん超売れっ子でなかなか予約取れないから、さっきの女の人もすごい大金つぎ込んだって言ってたもんね」

「でも、ちょっと気持ちわかるかも〜。紫耀くんにしてもらえるなら、お金払ってもいいかも… ♡」

「あんたそれ本気で言ってんの!?私は絶対そういうの無理!私、紫耀のこと好きだったけど、一気に冷めたわ〜」

 

 

ささやかれる噂話で、ほぼ全部を理解した私は、今までのことを一つ一つ思い出していた。

 

思い出してみて、納得のいくところがたくさんあった。

 

私が転校してきた頃、毎日毎日、バイトが忙しいと言っていた。

いつも突然入る、バイトの予定。
あらかじめ決まったシフト制じゃないのかな?とちょっと不思議に思ったこともあった。

 

 

「肉体労働。あいついい体してるから結構稼げるみたい」
ジンくんの言っていた言葉の意味をようやく理解する。

 

 

「俺が守るよ」って言ってくれたあの日も、バイトが終わってから家に駆けつけてくれたんだった。
バイト、「急いで終わらせてきた」って、そういう意味…。

 

手を握ってくれて嬉しかった、キスしてくれたのも抱きしめてくれたのも嬉しかった。

だけど、他の女の人の体を触ったその手で、他の女の人にキスをしたその唇で…。
そう考えたら、吐きそうだった。

 


 

自習の授業が終わり、ホームルームも先生は現れずそのまま下校となった。

 

 

「岸さん、何も知らなかったっぽいよね」
「可哀想〜、彼女気取りだったけど、実は遊ばれている女のうちの1人だったってことでしょ?」

「でも、さすがに岸さんはお金払ってないでしょ?やっぱ特別扱いなんじゃない?」

「いや、だとしても嬉しくないわ〜。ドン引きだよね〜」

 

皆が私の噂をしながら1人2人と教室から出ていく。
教室には私とジンくんだけになっていた。

 

 

ジン「花凛ちゃん、あのさ…、花凛ちゃんがすごくショックを受けてる気持ちもわかるけど、でもあくまでも紫耀は家計を支えるために仕事として。別にあの女の人に気持ちがあったとかいうわけじゃないし。心と体は別物っていうか。
紫耀が好きなのは花凛ちゃんだけだよ、本当にそれは俺が保証する。」

 

 

そんなこと言われても、「はいそうですか」なんて納得できない。

 

 

ジン「紫耀…!」
ジンくんの声に振り向くと、紫耀くんが教室に入ってきていた。

 

 

ジン「うん、2人でじっくり話した方がいいよ」

 

 

ゆっくりなんて話すつもりはないの。
私が聞きたいのは一つだけ。

 

 

「紫耀くん、さっきのあの女の人が言ってた話って本当なの?」

かすれる声で言って、震えそうな体を両手で押さえて答えを待つ。

 

 

紫耀「うん、全部、本当…」

 

 

紫耀くんもまたかすれた小さな声で答えた。

と同時に大粒の涙がボロボロとこぼれてくる。

 

 

「紫耀くんのおうちが経済的に苦労してるのは知ってたよ。お母さんのためにバイト頑張ってる紫耀くんかっこいいなって思ってた。でもそれって普通のバイトでなんとかならなかった?贅沢しなければ…」
紫耀「贅沢なんて…」
「してるじゃん…ッ!」

 

突然怒りをにじませ、声を荒げてしまったことに自分自身驚く。

 

 

「これ」

 

 

右手の薬指から指輪を外す。
この高級な指輪も「バイトを増やして貯めたお金」って言ってた。

 

 

「こんな高級な指輪買ってくれなくていいから、“そんなこと”してほしくなかった」

 

 

紫耀くんに近づき、指輪を紫耀くんの手に握らせる。

 

 

紫耀「花凛…これは…」

 

 

 

「汚い!触らないで…ッ!」

 

 

紫耀くんの手をピシャッとはねのけた。

 

 

「ごめんなさい…私は、この事実を受け入れられない」

 

 

紫耀くんが今にも泣き出しそうなほど、悲しげな顔をしているのはわかったけど、すぐにきびすを返して、バッグをひったくるように机から取り、教室から駆け出していた…。

 

 

 

 

紫耀「なぁジン…、やっぱり1度道を踏み間違えた人間は、幸せになんてなれないんだな…」

 

 

 

 


 

 

「違う、何かの間違いだ」って言って欲しかった。

みんながどんなに噂をしようと、あの女の人がどれだけ具体的な話を叫ぼうと、紫耀くんが「違う」と言ってくれたら、私はその言葉だけを信じようと思っていたのに…。

 

 

なんでそんな悲しそうな顔するのよ?

悲しいのは私の方だよ!

 

 

どうして?
他の女の人を抱いて、もらったお金で指輪を買ってもらって、私が喜ぶとでも思ったの?

そんなの全然うれしくない!うれしいわけないじゃん…!

 

 

本当に警戒すべき相手(廉サイド)

ジン「あれ!?君、花凛ちゃんの家の前で会った、確か紫耀の弟くんだよね!?」

 

 

げっ!
あの爽やかイケメンサイコストーカー空手野郎⁉︎

またみぞおち殴られる〜!?

 

今日も学校で時間を潰して、遅い電車に乗って帰ってきた。
家まで歩いている途中で、紫耀の友達のジンに声をかけられた。

 

 

あれ、でもこいつ、うちの駅じゃなかったはずやのになんでここにおるん?

 

 

ジン「花凛ちゃん見てないかな!?」

 

え?

 

廉「花凛がどうかしたんですか?」
ジン「いなくなっちゃったんだよ!家に帰ってこないってお兄さんから紫耀に電話があって!今、みんなで探してて!」
廉「な、なんで⁉︎何かあったんすか?」
ジン「紫耀の…(あ、そういえば、紫耀はバイトのことお母さんや弟には言ってないはずだった)」
廉「紫耀?紫耀がどうしたんすか?」
ジン「えーっと…なんつーか、…紫耀の浮気がバレた的な…?って、えっ!?ちょっと待っ…!?」

 

 

気づいたら体が弾かれたように駆け出していた。
紫耀のやつ、なにしとんねん…ッ!!

 

体に、怒りの電流がビリビリと流れて、今にも爆発しそうやった。

 


プルルル。

紫耀「あ、もしもし?ジン?花凛見つかった!?」
ジン「いや、まだ。

それより、紫耀、やっぱりお前が警戒しなきゃいけないのは、俺じゃなかったみたいだぞ?」
紫耀「え?」

 

 

呆れるほど君を想ってる(廉サイド)

“大好きだよ“暖かくて

“大好きだよ“切ないこの気持ち

恋という名の季節は巡る

いつも足早に

 

 

なんのアテもないのに、ただただ走り回った。

 

長距離そんなに得意やないのに…。

乾いた空気が口の中にまとわりつき、もうすぐ季節は冬になろうとしているのだと気づく。

 

最初に花凛と出会ったのは、うんざりするほど毎日雨ばかりが降る湿った季節やった。

季節が夏から冬へとガラリと変わるように、自分の気持ちが180度違っていることに気づく。

 

最初は俺を痴漢と間違えた花凛に腹が立った。

なぜか無性にあいつのことが気になってしまう理由を、なんとなく認めたくなくて、会えば憎まれ口ばかりを叩いていた。

 

 

もし、もっと早くにこの気持ちが何なのかを気付けていたら。

もし、もっと早くに素直になれていたら。

 

 

最初に相合傘で家まで送ってもらった日、意地悪せんと荷物を持つのを手伝ってあげたら。

帰り道で待ち伏せして、「海人と約束してる」なんて嘘をつかずに、「花凛を待ってた」と素直に告げていたら。

 

 

未来は何か違っていたのだろうか?

 

 

花凛は泣かずに済んだのだろうか?

 

 

もしも偶然出会った帰り道

ちゃんと僕が素直になれたなら

きっと結ばれていたはずさ

なんて夢見てる 恥ずかしいよね?

 

 

ふとそんなことを考えて、自分のバカバカしさにフッと笑いが漏れる。

 

 

そんなはずないやん。

俺がちょっと優しくしたところで、花凛の気持ちは変わらんかった。

 

花凛はいつだって、紫耀のことばかり見とった。

そこに俺が入る隙なんて1ミリもなかった。

 

わかっとる。

それだけ、あいつのことずっと見てきたから。

最初は俺のことをストーカーと間違えるあいつに腹が立っとったけど、いつの間にかほんまのストーカーにみたいになっとったかもしらん…。

 

 

待ち伏せして、偶然を装って会えたら幸せで。

俺に笑いかけてくれたら、1日の嫌なこと全部吹っ飛ぶ位に幸せで。

 

 

でも、紫耀に向ける笑顔はもっともっと可愛くて、それを見て、完敗やと悟った。

俺はもう花凛から離れたほうがいいと思った。

 

 

でも、紫耀が花凛を泣かせるようなことがあんなら、話は違ってくんで?

 

もし、俺に少しでもできることがあるなら、

花凛の笑顔を取り戻すことが出来るなら、

“恋人“と言う立場じゃなくてもいいから、

 

 

 

俺は、もう一度あいつのそばに行く…!

 

 

大好きだよ 好きだよ 好きだよ

呆れるほど 君を想ってる

このままの関係もきっと

そう悪くは無いかな

 

大好きだよ 好きだよ 好きだよ

いつからか 君を追いかけていた

その笑顔を見つめるだけで

Love 心満たしていく

 

 

そばにいて(花凛サイド)

 

「廉…くん…?」

廉「やっぱりここにいた…。

…って見つけるのがベタやねんけど、俺、全っ然お前の行きそうなとことかわからんし、見つけるのめっちゃ大変やったんやぞ!!」
「な、なに、そんな急に怒って」
廉「なんやねん、海って。センチメンタルか!紫耀との初チューの思い出の場所か!?」
「ううん、全然。紫耀くんと海の思い出なんかないよ。紫耀くんとの初チューは神社だもん」
廉「聞いてへんわ…ッ!!ヽ( ̄□ ̄;)ノこの状況でよくノロケよるな!!」
「別にのろけてないし!あえて紫耀くんとの思い出のない場所に隠れてたんだもん。思い出の場所で1人泣いてて、探し当てられて、”ごめん”とか謝られたら、なんか流されて許しちゃいそうで。

だから絶対見つからない所に行こうと思って」

廉「許す!?浮気されたのに!?」
「浮気?…っていうか、それよりもっとショック大きいよね」

 

 

………

 

 

 

廉「はぁ~~っ!?レンタル彼氏ぃ~!?」
当然、話を全部聞いて来てくれたものだと思って話していたら、なんだか廉くんと話が噛み合わなくて、最初からちゃんと説明したら、廉くんは、ただ紫耀くんが浮気をしたものだと勘違いしていたみたい。

 

 

浮気とどっちがショック大きいもんなんだろう?
ジンくんは、紫耀くんはお客さんの女の人達に全く気持ちがなかったって庇ってた。
確かに浮気だったら、紫耀くん自身が他の女の人に惹かれていたことになるので、それはそれで辛い。
でも、そんな複数の女の人と、お金もらってなんて…。

ジンくんが言うみたいに「心と体は別物だから」なんて、割り切れないよ。

 

 

廉「か、金もらって知らんお姉さんや主婦たちと…!?あああありえへん!!」
「でしょ!?」

 

あれ?廉くんこそ、ドライに「それくらいでギャーギャー騒ぐな」とか言いそうなのに、ちゃんとそこは私と同じ反応してくれるんだ?
そっか、廉くんのお母さん不倫して家を出ていったんだもんね。そういうことに潔癖なのかも。

 

 

廉「紫耀のやつ!絶対許さん!ちょ、一発殴ってくるわ!!」
怒り狂って駆け出そうとする廉くんを、引き止めた。

 

「行かないで。1人にしないで」

 

 

廉「はっ!?(/// □///)そんな1人になりたくないなら、お、お兄ちゃんに迎えに来てもらえばええやろ?すぐに飛んできてくれるやろ」
「お兄ちゃんには言えないよ。そういう下ネタ的なこと話せない」
廉「じゃ、じゃあ、海人とか」

 

「廉くんがいいんだよ」

 

お兄ちゃんにこのことが知れたら、当然怒り狂って、「もう二度と紫耀には会わせねぇ!!」とか禁止令が出そうだし、紫耀くんのことボコボコにしちゃうかもしれない。

海人だってそう。お兄ちゃんほど強い言い方はしないものの、絶対的な私の味方だから、「姉ちゃんを傷つける相手は絶対に認めない!」とかへそ曲げちゃいそう。

絶対に許せないと思ってはいるのに、家族から絶対的に紫耀くんに対してバツがつけられることに抵抗があるのは、まだどこかで紫耀くんに猶予を残しておきたいからだろうか。

 

でも、だからと言って、ジンくんほど、完全に紫耀くん側についてかばわれるのは、腑に落ちない。

そんなの男の勝手な言い分って感じ。

 

 

廉くんは、紫耀くんの家族だから、紫耀くんを完全に嫌うことはありえない。

でも、「紫耀のしたことはありえない!」って、私と同じ目線で怒ってくれた。

 

ほどよく紫耀くんにも私にも味方でいてくれる、唯一のちょうどいい存在と言えた。

 

 

「廉くんがいいんだよ。そばにいてよ…」

 

 

どうしてその手に触れたくなるのか(廉サイド)

分かっとるやろ?きっと今だけやで?

こういう女は、自分が寂しくなったら簡単に「ひとりでしないで」と男に甘えるんや。

だけど結局痴話喧嘩。あんなに傷つけられたのに、簡単に許しよる。

仲直りしたらまたラブラブに戻って。

 

そしたら自分からすがってきたその手を、簡単にポイと捨てるんやで?
分かっとるやろ?何度も裏切られてきたやろ?
分かっとるのに…。それなのにどうして。

 

 

もういらないと思って、自分で振り払った。

先に向こうから手を離されたら傷つくから、こっちから振り払ってやったのに。

 

どうして、どうして、

 

 

その手にまた触れたくなんねん。

 

 

俺はバカなんか?

 

 

小刻みに震える拳をキュッと膝の上で握りしめている花凛の隣に座る。

 

 

もう、バカでもなんでもええよ…。

 

 

前の僕ならこんな自分を

バカにして笑うだろう

 

 

 

そして、小さくて柔らかいその手を、そっと握る。

 

 

 

恋。
それは一時の愚かな感情だと頭では理解しつつも、どうしても止められない想い。
そんな小説やドラマで何度も誰かが言っていた絵空事みたいな感情を、高一の秋の終わり、俺は初めて知った。

 

 

 

でもどうして どうして どうして

その手に触れたくなるのか

下手くそな恋と正直な心

 

どうしたって君じゃなきゃダメだ

 

本当に君が好きだから

 

 


 

コメント

  1. みつき より:

    久しぶりに読ませていただきましたw
    最近学校行事などでいろいろとバタバタしてたのでw
    安定に面白かったです!

    • ちゃちゃ より:

      みつきさん、お久しぶりです(^^)
      学校お忙しいんですね。
      私もなかなかプライベートが忙しくて、更新が進みませんが、そろそろ続きをアップする予定ですのでまたお時間ある時にお読みいただければと思います〜♪

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