岸君が「ナイトドクター」で医者役をやっているうちに、岸くんが医大生であるこのお話を完成させようと思っていたのに、のろのろしているうちに「ナイトドクター」が終わってしまうよ〜!早く書かなくては…!と焦っております…。
このお話は、SMAP「オレンジ」恋愛三部作をモデルにした音楽小説です。
SMAPの名曲の数々を今の若い子に布教するため、主役はキンプリの岸くんです!
月9「ナイトドクター」で医者役をやっていることにちなんで、このお話の中での岸くんは医大生の役です!
私の小説は、曲の歌詞からストーリーを考えている“音楽小説“となっています。
前の話はこちら
遠くへ行ってしまうあの人に
1つだけ気になる言葉を送ろう
君とのこともいつか
思い出になるだろうけど
だから今を大事にするよ
曲がり角ばかりでよく見えなかったけど
どうなのかしら これでよかったかな
♪ SMAP「NATSU〜夏〜」作詞作曲:ナンバキイチロウ
コンテスト
「コンテスト!?」
俺が持ってきたチラシを両手で持ち、美華は目を丸くする。
ラジオの企画で、コンクールが開かれる。
自作した曲を自分で歌う。
毎週1人ずつ歌って、前の週の人との勝ち抜き戦となる。
投票するのはリスナー。
9月からの4カ月間行われて、クリスマスの放送で優勝者が決定する。
「曲を書いて、コンテストに挑戦してみないか?」
ギターは半年早いクリスマスプレゼントと言うことで納得して、美華は受け取った。
その代わりに、俺のクリスマスプレゼントとして、曲を書いてくれると言う交換条件で。
「クリスマスの放送では、優勝者がもう一度自分の曲を披露するんだ。それって、俺にとっての最高のクリスマスプレゼントになると思うんだよね!」
「そんな、優勝する前提で話進めないでよ」
「できるよ、美華なら」
美華は黙ったまま、悩んでいる。
「チャンスじゃん!挑戦してみればいいよ!」
「…優太が一緒に来てくれるなら」
美華が小さく呟いた。
「私、東京とか行ったことないもん。1人じゃ無理!優太が一緒について来てるなら、やる」
「マジで!?ホントに!?もちろんいいよ!ついてく、ついてく!!」
優太「…って感じでさぁ~。気強いくせに、凄い俺に頼ってくるんだよね~。そういうのたまんなくねぇ!?」
あまりの俺のデレついた顔に、廉は呆れてさっきからずっと死んだような目を向けている。
廉「優太ぁ、あんま言いなりになってると、ああいう女はつけあがるから、気ぃつけ?今まで男が自分の思い通りに動かんかったことなんてないんやろうから、ワガママ放題ちゃうん?俺、そんな女嫌やわ~」
優太「まぁ、廉は女に尽くすタイプじゃないもんなぁ。
でも、俺はけっこう世話やくの嫌いじゃないかも」
廉「でも、最近お前、成績下がっとるやろ?今が大事な時なんやから、あんま恋にうつつ抜かしてたらあかんで?」
優太「わかってるって」
…とは言ったものの、付き合い初めてから、美華は毎日のように部屋に押しかけてくる。
元カレに貢いでいたことを考えれば容易に想像はついたが、美華はかなり恋愛体質で、毎日でも一緒にいたい!というタイプらしい。
それでも、玄関先で「今日も来ちゃった!毎日優太に会いたいの!」なんて弾ける笑顔を見せられたら、追い返すわけにもいかない。
というか、鼻の下を伸ばして大歓迎で迎え入れている、というのが実際のところだった。
でも、お互いにやらなきゃいけないことがある。
俺は机に向かい勉強して、美華は俺の背中に寄りかかってギターをひいた。
そんな風に、俺たちは同じ空間で、違う夢を目指して過ごしていた。
帰る頃には夜遅くて危ないので、俺が美華のマンションまで送っていく。マンションの下で別れようとすると、「玄関まで送って!廊下で襲われたらどうすんのよ!」と怒るので、玄関まで送っていく。玄関のところで帰ろうとすると、「ちょっと寄ってって!まだ離れたくない!」と部屋の中に引きずり込まれる。
そして夜に部屋の中で男女がすることなんて1つだけで、結局疲れることになる…。
確かに勉強時間と睡眠時間が削られて、成績は落ちていく一方だった。
優太「でもさぁ〜、ほんと可愛くてさぁ〜(デレデレ)」
廉「お前…人が本気で心配してやっとんのに、のろけとんなや!!(怒)」
きっとそんな幸せな日々は、これからもずっと続いていくと、この時は何の疑いもなくそう思っていた。
すごく楽しみなことがあったときは
ずっとこの時が続けばと思うよ
♪ SMAP「NATSU〜夏〜」作詞作曲:ナンバキイチロウ
暴走
数ヵ月後。
「すごいよ、マジで感動した!あれは絶対優勝だよ!!」
東京からの帰りの電車で俺は1人で興奮していて、美華の口数は少ない。
優太「まだ怒ってんの?」
実は美華のコンテストの日にちと、俺の大学の試験の日が重なってしまった。
コンテストに同行する事は最初からの約束だったから、俺は試験を休んで美華について行こうとしていた。
しかしそれを知った廉が、美華に事情を話し、美華は「1人で大丈夫だから」と俺に遠慮した。だけど、俺が「仮病使って、追試を受ければ大丈夫!」と無理矢理ついてきたのだ。
美華は、最初は「俺についてきて欲しい」と頼ってきたのだ。俺を気遣って「1人でも大丈夫」と言ってくれたものの、本当は1人では不安なはずだ。
今日は、美華の運命を左右する大事な日だ。どうしても一緒にいてあげたかった。
美華「私、大丈夫だって言ったよね!?優太、今日は大事な試験だったんでしょ!?留年とかしちゃったらどうするの!?私、優太の夢の邪魔したくないの!優太には良いお医者さんになって欲しいの!」
優太「まぁ、その時はその時っていうか。ほら、前にも話したじゃん?俺にとって、医者になる事は、夢ってほどのことでもないし。もし、美華が本当にプロの歌手になるんだったら、俺も一緒に東京に出てマネージャーとかやったりしてもいいしね!(笑)」
冗談ぽく言ってみたものの、半分は本気でそれもありかと思うほどに、俺はこの時舞い上がっていたのだ。だって、美華がプロになって東京に出てしまったら、遠距離になってしまう。
今、美華と離れ離れになるなんて、考えられないことだった。
美華は、大きくため息をついた。
「優太、私たち別れよう?」
耳を疑った。
浮かれすぎていた俺は、美華がそんなことを考えていたなんて、1ミリも気づかなかった。
だって、美華は俺がいないとこの町から一人で出ることもできない世間知らずで、男を手玉に取るめちゃくちゃ強気な女のようでいて、実は男に依存しまくる超恋愛体質で、俺にラブラブ光線出しまくりのはずだった。
…と思っていたのは、俺のうぬぼれだったのか?
俺がバカだったんだ。
自分を見失うほどに美華に夢中になって、そんなバカな俺を見て、美華の気持ちがどんどん冷めていることに、気づきもしなかった…。
2人が出会ったのは夏の始まりの頃だけど
次の季節には不思議な間になった
どんどん暴走するあなたを見て
ハァだめだわこれはと
何度も迷ったりもした
どうなのかしら これでよかったかな
♪ SMAP「NATSU〜夏〜」作詞作曲:ナンバキイチロウ
つづく