つとぷ小説「20歳の約束②~Style episode.0~」中居が認めた”何をやってもキムタク”という演技論

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「キムタクは何をやってもキムタク」

 

何度も言われてきた言葉。

だけどそんな言葉が今は全く怖くない。

この男が「それでいい」と言ってくれたから…。

 

これは、SMAP中居正広と木村拓哉のつとぷ小説です。木村語りです。

イメージソングは木村拓哉ソロ曲「Style」。

前後編の2部構成で、こちらは後編です。

つとぷ小説「20歳の約束~ずっとずっと~」中居と木村、殴り合いの喧嘩の真相の続きになります。

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何をやってもキムタク

「何をやってもキムタク」

 

いつからか俺の演技への評価の代名詞となったこの言葉。

 

 

世間では”憑依型”や”カメレオン型”俳優と呼ばれる人たちが、いわゆる”演技派”と呼ばれることが多いが、俺は決してそうゆうタイプではない。

そもそも役者一本で成り上がってきた人たちにいきなり勝てるとは思っていないが、求められる場所がある以上、いろんなことに挑戦していきたいし努力したい。

 

 

それに何より、演じることが好きだ。楽しいと思う。

 

 

だけど時には、多くの誹謗中傷に自信をなくしかけたこともあった。

自分の役作りや演技の方向性はこのままでいいのだろうかと、もっと変えていかなくてはいけないのではないかと模索したこともあった。

自分ではない誰かの役になりきるには、いったいどうしたらいいのだろう…と。

 

 

だけどそんな時は、酒を飲んで機嫌よく語りだした中居の言葉を思い出す。

 

他のメンバーは

「中居くんって、酔っぱらうといつもメンバーのことべた褒めするよねぇ(笑)」

とまた始まったかという感じで呆れ笑いをしていた。

 

 

だけど、俺の心にズシンと響いたんだ。明日になれば覚えていないだろう、ただの酔っぱらいの戯言が。

 

 

 

「お前はさぁ、何にも染まらないからいいんだよなぁ!なんつぅかさ、”他の誰か”の役を着せられてるんじゃなくて、”自分流に”役を着こなしちゃうっていうか。

だから、どんな役を演じていても、その先に”木村拓哉”が見えんだよ。

木村はさぁ、どんな役が来ても、どっかに自分と共通する部分を探すんだよ。そして、そのほんの一部を100%に膨らめて、共感しながら演じるんだよ。

言ってみれば”共感型”、”役を引き寄せ型”、”自分の中に役を取り込み型”っていうのがしっくりくるかな。

この方法のすごいところがどこだかわかるか、お前ら!?

他の誰かに”なりきる”んじゃなくて、本当の自分を表現しているんだから、役に信ぴょう性がある。ミスキャストということも絶対にありえない。

だって木村拓哉が演じているのは木村拓哉なんだから。

これってすごいことだと思うわけ!木村にしかできないことだと思うわけ!

だから俺はさ、貫いてほしいのよ~!そんな俳優・木村拓哉のStyleをさっ!」

 

 

ちゃんと通じてたんだ。

中居の言葉は、俺が苦悩の末にたどり着いた形を見事に代弁していた。

演技を始めたばかりの頃は、監督が求めているのは何なのかと顔色をうかがって、台本の文字通りにただ右に左に動かされるだけの人形みたいだった。

 

 

でも、これじゃ全然楽しくない。

自分が楽しめていないのに、見ている人を楽しませるなんてことができるんだろうか?

 

 

それに全く知らない誰かになりきるなんて、なんか嘘っぽい。

もちろん監督の意向に応えるためには、自分がいいと思うからといって好き勝手に演じるんじゃだめだ。

 

だから、俺は役と自分の共通点を探すということに集中することにした。

何度も何度も台本を読み込むと、必ず見えてくるんだ、自分と役の似ている部分が。

こうして俺は、”誰かになる”んじゃなくて、”自分のまま”演じるという自分なりのスタイルを確立したのだ。

 

 

 

もう迷いはしない。

 

 

 

中居が「それでいい」と言ってくれたのだから、間違いはない。

自分の言葉で自分らしく楽しんで表現していけばいいんだ。

今まで目の前にあった靄がパーっと一気に開けていくような、”魔法の言葉”だった。

 

何色(なん)にも染まらないさ

強く It’s my style.

貫きたい 自分らしく 楽しまなきゃ損じゃない

誰かじゃなく 自分らしい幸せならいいじゃない

木村拓哉「Style」作詞:中村達史、作曲:久保田利伸

決断

俺が付き合っていた彼女が妊娠したことを最初に打ち明けたのは中居だった。

当然簡単に結婚などできるような状況ではなかった。

マネージャーはもちろん猛反対したが、中居だけは違った。

最初は当然ファンのことを一番に考えて神妙な表情をした中居だったが、俺の真剣さを理解した後は、ニッコニコの笑顔を向けてこう言ったのだ。

 

 

「それ、おもしれーかもしれねーな。トップアイドルが父親って。その覚悟貫く”木村拓哉”って、すげーかっけーかも!」

 

 

 

すごく難しい問題に、あっさりと答えを出した中居に、逆に俺の方が戸惑った。

一応自分がどうゆう立場にあるのかは理解していたつもりだ。

 

グループの中で最も結婚してはいけない男。

そんな男が結婚して父親になる…?

そんなことが許されるのだろうか?

 

 

アイドルグループとして前代未聞であって、今まで誰も行ったことがないことだ。

彼女のお腹の中にもう既に命が宿っているため、その事実を消すことはできないが、世間に隠して入籍と出産をすませることはできただろう。

それがアイドルとしてのまっとうな行動ではないのか?

 

 

「だけどさ、そんな”作られた木村拓哉”って、なんかつまんねーと思うけどな。ファンの子はみんな、本当の木村拓哉が見たいんだよ。今まで誰もやったことのないような無茶苦茶やっちゃうような木村拓哉ってのもひっくるめて好きなんじゃねーのかな。

お前の生き様の全てを見せたほうが、かっこいいと思う。俺はそう思う!

まぁ、当然泣いちゃうファンの子はたくさんいると思うけどさ。でも、父親である姿を貫いていくうちに、きっと”父・木村拓哉の魅力”ってやつにも気づいてくれるファンはいると思う。まぁ、今すぐってわけにはいかないかもしれないけど。何十年かかったっていいじゃんか。

その間、離れたファンの分は俺らがカバーしてやるし!お前さ、自分だけがSMAP支えてると思うなよ~?」

 

茶化すように中居は言う。

俺の重圧を少しでも軽くしてくれようという気遣いが伝わる。

 

 

「”アイドル”っていう枠を最初にぶち破れるのは、お前しかいないと思うんだわ。

今までだって、そうやってSMAPは時代の先駆者になってきたんだろ?

怖がらずにぶち破ってみろよ?そうすれば、木村拓哉もSMAPもきっともっと大きくなる」

 

 

 

 

 

SMAPというグループは、今までのアイドルとは全く歩みだしが違った。

ちょうど俺らのデビューと同時に、歌番組がどんどん終了していった。

想像していたような華やかなステージは俺たちには与えられなかった。

歌を歌うだけのアイドルではテレビへの露出が激減してしまう。

だからこそ俺達は何でもやっていかなければならなかった。

 

キラキラした衣装でステージから手を振ってニコニコするという華やかな姿がアイドルだと思っていた当時の俺たちには、とても受け入れられないような仕事もあった。

だけどそんな時はいつだって中居が

「俺たちはなぁ!どんな仕事でもやっていかなきゃいけねーんだよ!!」

と言ってメンバーに渇を入れた。

 

 

誰もやったことのないことをするのは確かに怖い。

最初は受け入れてもらえないかもしれない。

たくさんの人に批判されるかもしれない。

でも、俺は決断した。

 

 

 

アイドルとしてガチガチに取り繕って、一切の隙を見せないように作られた姿を演じることもできたかもしれない。

だけど、それって一体誰なんだ?

もはやそんなの本当の”木村拓哉”じゃないだろ?

 

 

「そうか、作られた全く別の誰かを演じる必要なんてない。

自分の中にある素の姿を、みんなに見てもらえばいいんだ」

 

俺が自分に言い聞かせるように呟くと、

 

「それってお前の演技そのものだよな。作品の中だけじゃなくて、プライベートまでそのStyle貫くんだから、本当にお前はかっけーよ!」

 

 

演技そのもの?この中居の言葉の真意は、その後の飲み会の席で語られることとなる。

 

 

 

結婚記者会見を終えた俺を迎えたのは、心配そうな顔で待っていた3人を引き連れた満足げな顔の中居だった。

 

「よし!飲みに行こうぜ!祝賀会だ!」

 

4人が俺にかけてくれた乾杯の掛け声は、迷いのない

 

「おめでとうー!」

 

だった。

 

 

 

 

その後すっかり酔っ払って上機嫌になった中居は、俺の手を取り

 

「木村の演技はさぁ、何にも染まらないからいいんだよなぁ!なんつぅかさ、”他の誰か”の役を着せられてるんじゃなくて、”自分流に”役を着こなしちゃうっていうか。…」

 

と俺の演技論を冷静に分析し、褒めちぎったのだ。

 

他の3人は

 

「この二人がイチャイチャし始めたらもう入る隙なし」

 

といったふうに二人の空間に踏み込まないように気をつけながら、適度に頷くだけの相槌に留まっていた。

 

 

俺は照れ笑いを浮かべながらも、熱く語り続ける中居に茶々を入れずに、一言一言を大切に聞いていた。

その言葉が、今度の俺の人生の支えになっていく”魔法の言葉”になるという予感がしたから。

 

 

 

時を経て

園子温監督のゲスト出演のビストロ撮影後。

 

 

慎吾「ねー、それで結局さっきの話は何だったのさー?」

剛「まだ言ってるよ~(笑)慎吾、また中居くんに殴られるよ?」

慎吾「だって気になるじゃんー!」

 

中居「もぉ~しつけーな!

だから俺はぁ!木村が木村らしくあることを貫いている姿が好きなの!

何にも染まらない確固たる”木村拓哉”っていうスタイルで向き合ってきた作品って、どれも最高だべ?

それを何も知らないやつに、薄っぺらい批判されるとあったまくんだわ!

俺はこいつに、周りの批判にさらされても誰かの言いなりになんてならない、そうゆう木村のスタイルを貫いてほしいわけ。

だから周りでガヤガヤ言ううるせーやつは、俺が片っ端からぶっ飛ばしていくって話!」

 

 

あれ?あの時酔っぱらって言ってた言葉と同じようなこと言ってる…?

突然素直にそんなこっぱずかしいことを語りだした中居に、しつこく聞いていた慎吾のほうが「うっひゃぁ~!」と言った表情で、気まずそうで、だけどすごく嬉しそうな口元の笑みを浮かべ、目を見開きながら剛のほうを振り向いている。

 

木村「お前、今酔っぱらってる?」

 

つい照れ隠しに茶化してしまう。

 

中居「酔ってねーよ。別にもし酔ってたとしても言うことは同じだけどな。俺、酒入ってるときほど本音語る癖あるし」

 

 

酔っぱらいの戯言なんかじゃなかった。

ちゃんと覚えてくれてたんじゃんか。

14年の時を経て再び届いた中居の言葉。

今までずっと俺を支えてきた”魔法の言葉”。

それが20歳の時にしてくれた約束と合体して、最強になる。

 

 

中居「まぁ、あんときは20歳そこそこだったしな、言ってることそーとー青臭いわな」

 

慎吾「それが昔の約束ってことかー。二十歳の約束、だね!」

 

中居「ん?でもなんか記憶が混じってるような…。木村のスタイルどうこうって話してたのは確か別の時で…」

 

木村「なんだよっ!結局覚えてねーのかよ!うろ覚えかよ!」

 

 

はっ!記念日を忘れられた時の女子のように、ふくれてしまった…。

だって、”20歳の約束”と、結婚祝賀会の時の”魔法の言葉”と、時を経て再び俺に届いた中居の言葉が、あまりにも嬉しかったから…。

 

 

吾郎「ま、どっちにしてもヒューヒューだね」

 

 

 

「Style~父親であること~」へ

~中居サイド~

 

 

俺は木村拓哉が堂々と木村拓哉でいる姿が大好きで、誰に何と言われようと流されず、染まらない姿が大好きで。

だから俺はあの時、木村が父親として生きることにも賛成した。

色々な批判があることは百も承知だった。

しかし世界中の誰がなんと言おうと俺が木村を守るし、俺は木村にあるがままに生きていてほしい。

 

 

そして18年後にもう一度木村が父親であることを選択する時、俺はまたその選択を認めることになるのだが、この時の俺はまだ何も知らない…。

 

 

父親として生きるという決断。

一度目は、SMAPを未来に導くために。

そして二度目は、SMAPを過去に置いていくために。

 

 

もともと、こちらの木村さんの演技論に対する小説のほうが木村さんソロ曲の「Style」をイメージした小説として最初にあった構想でした。

でもワッツが終わってFLOWに変わるというときに、それもまた「Style」だなぁなんて思って、下記の小説を書いたので、その前の話ということで「エピソードゼロ」という形にさせてもらいました。

そうゆう意味ではこちら↓の小説も入れて、3部作ですね。

 

音楽小説「Style~父親であること=これが俺の生き方~」”SMAPの木村拓哉”を降り、ワッツからFLOWという新たな航海へ

 

もしよければ、あわせてお読みいただけたら嬉しいです。

 

 

この小説のモデルとなった本当にあったエピソードについては、また別記事でアップしますので、また見に来てくださいね!しばらくお待ちください。

 

木村さんのラジオに長瀬智也さんがゲストで来てくれて「何をやってもキムタク」と叩かれることについて、演技論を熱く語っていました。

木村拓哉ラジオFLOW 長瀬智也が「キムタクは何をやってもキムタク」について語る

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