海ちゃんスピンオフ作品「 Full Time Lover 」③

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何度も好きになりそうになりながら、好きになっては行けない男だと自分に言い聞かせる。

だってあいつには、フルタイムで恋人がいるんだから…。

 

 

海ちゃんの超独特恋愛観は、過去の辛い失恋と、いつもそばにいた異次元レベルのイケメンコンビ”しょうれん”へのトラウマが原因だった…!?

 

前のお話はこちら!

キンプリイラスト髙橋海人料理男子

 


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突然の訪問

 

ピンポーン。

 

 

うーん…誰だよぉ〜…。

 

時計を見ると10時。

今日は土曜日。昼まで寝てようと思ってたのにぃ〜。

 

安いアパートだから、インターホンなんてついてない。そのままドアを開けると、海ちゃんがニコニコして立っていた。

 

「舞ちゃん、朝ごはん食べた?」

 

 


 

料理男子

なんだこの状況は?

ほぼちゃんとした料理なんて作ることを想定していない1人暮らし用の小さなキッチンで、慣れた手つきで卵を割り、フライパンを降り、トントンとまな板と包丁の音を鳴らしている海ちゃんの後ろ姿を見ながら、まだ目が覚め切らないぼーっとした頭でぐるぐると考える。

 

なぜこんなイケメンが家でご飯を作っているのだろう?

あれ?そういえばなんでうちの場所知ってたんだろう?

 

はぁ〜、イケメン料理男子、めっちゃ絵になるぅ〜。

海ちゃんて料理できるんだー。確かに時々忙しい時、厨房手伝ったりしてるもんねぇ。

いつもは毛先遊ばせ系前髪ありスタイルだけど、今日は何か洗いざらしの休みの日仕様って感じで、それもまた新鮮でかっこいー。

 

 

「舞ちゃーん、だしの素ってどこにある〜?」

 

 

脈絡ない事柄が頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えしている中、海ちゃんの声ではっと我に返る。

 

「だしの素!?えーっと…確かこの辺に…あった!」

「舞ちゃん、、、カチカチに固まってるね…。調味料も買ってくればよかったかな…」

「えっ…!?あ、あれ~?最近ちょっと忙しくて、料理してなかったからかなぁ~?このキッチンがね~、もうちょっと広くて使いやすかったら、料理するんだけどなぁ、ハハ、ハハハハ…」

 

やっば〜、普段全然料理しないって絶対ばれたよ~。恥ずかしい~!

 

「か、海ちゃん、料理上手なんだね?」

「うん、中学の頃から、お弁当は毎日自分で作ってたよ!」

「えー!?女の私だって、そんなことやってなかったのに、偉すぎ!!」

「うち、実家が高校のサッカー部の寮やっててさ、寮生のみんなのご飯作るのに母親忙しいから、自分のことぐらい自分でしなきゃ悪いなぁって」

 

 

めっちゃ偉い…。尊敬する!

こんなに見た目とか喋り方とか、「ザ・甘えん坊!バブバブー!」って感じなのに、それめちゃくちゃやばいギャップじゃん!

どんだけ私を惚れさせようとしてくるのさ!?

 

 

だめだめ!この男は絶対だめなんだから!

 

 

「はいできた~!食べよ~!」

 

ほかほかと湯気の上がるお味噌汁と、きれいな色のだし巻き卵と、タコさん形に切られたウインナーとご飯を、海ちゃんは、お盆がないので何往復かして運んでくれた。

 

この状況の全てに疑問があるものの、とりあえず1番気になる事は…

 

 

昨日の夜、海ちゃんは“金曜日の彼女“と一緒に彼女の部屋に帰ったんだよね?

と言う事はそこから直行でここへ?

そもそも、金曜日の彼女とは、いったい何時までの契約になっているのだろう?

 

 

「あ、あのさぁ…、海ちゃんのその”フルタイムの恋人システム”?いろいろ謎なんだけど、どういう契約になってるの?

曜日ごとって、夜の0時で契約終了?

でも、バイト終わってから会ったら、もうあと30分位で日付変わっちゃうわけじゃん?」

 

昨日なんて、すったもんだあったせいで、23時50分位になっていたはず。

 

「うーん、夜は何時までってきっかり決まってるわけじゃないんだけど。大体、その夜の“ 1回“が終わるまでって感じ?でもそのまま泊まって行っちゃうと、翌朝もせがまれたりするから、そういう時はその朝の1回まで延長ってことで…」

「う、うわぁ〜〜〜っっ!!いい、いい!やっぱりいい!答えなくていい!(; ̄□ ̄)」

 

 

 

そんな生々しいこと聞きたくなーーい!

 

 

「た、体力あるね。若いってすばらしいよ…。」

「いや、俺だって疲れるよ?でも言ったじゃん?俺を求めてくれる人の気持ちには、出来る限り答えたいんだって」

「だから言ったじゃん!?それって、彼女の気持ちに応えていることにはならないんだって!!」

「うーん、だからそれは今、ちゃんと考えてるってばぁ〜」

「そうだよ、そこはちゃんとしなさいよ!」

 

 

困り顔の海ちゃんに、まるで弟に説教をしているような口調で言ってしまってから、そうだった、この人は昨日私を助けてくれたし、今日はこんなにおいしそうな朝ごはんを作ってくれた人だったんだ…と、自分の偉そうな態度を反省し、味噌汁をすすってごまかす。

 

「ん、おいしー!」

「ほんとっ?よかった」

 

ハの字になっていた眉毛がみるみるアーチ型に戻って、本当に嬉しそうな顔でキラキラしたおめめを向ける。

そんなまぶしい笑顔を向けられたら、こっちが照れるわ!

 

 

「で?今日は土曜日の彼女は?」

「うん!ちょっと体調悪いからってお休みしたから大丈夫!」

 

 

 

そんなバイトみたいな感じで休めるんかーい!

もうほんとそのシステム、意味不明…。

 

 

で、そもそも1番根底にある疑問。

 

 

 

「それで、なんでうちに来たの?」

「だって舞ちゃん、昨日怒られちゃって、落ち込んでるかなぁって思ったから心配で。ほんとにバイト辞めちゃったら困るし」

 

 

 

え…心配してきてくれたんだ?

 

 

土曜日の彼女

 

海ちゃんは「今日は久しぶりにゆっくりできるから」と言って、そのままうちに居座った。

 

普段7人もの彼女のお相手をするお盛んな年頃の男の子と部屋で2人きりなんて、私の身もまさか危ないんじゃ…と最初はドキドキしていたが、全く怪しい雰囲気になることもなく、海ちゃんは私の部屋にあった少女漫画を「これ面白いね~!キュンキュンするぅ~!」と喜んで読んでいた。

逆に、こんな遊び人の男に手を出されない私って一体何なんだろう…とちょっと傷ついたり…。

 

今日は2人ともバイトに入っていたけど、海ちゃんの方が1時間、入りの時間が早かったので、先に部屋を出た。

 

 

飛貴「あやさん、舞さんっ!やばいっす!修羅場っすよ!」

バイト先に着くなり、先に来ていた飛貴くんが血相変えて駆け寄ってきた。

 

飛貴「海人先輩の“土曜日の彼女“が、来てるんですよ!めっちゃ怒っててぇ~!」

 

 

えぇー!

そろそろ開店時間だけど、まだ17時になろうかと言うところで、客は入っていない。

彼女は店の前で待ち構えていたらしく、海ちゃんが店の外に連れ出されて話をしに行ったらしい。

 

 

飛貴「なんか、今日、海人先輩、デートの約束をすっぽかしたらしいんですよ。風邪ひいたとか言ってたけど、彼女が疑ってここに見に来たみたいで。”バイトに出てるんだから風邪なんてひいてないじゃない!”ってことになっちゃって、めっちゃ怒ってるんですよ」

あや「よりによって土曜日の彼女をすっぽかすなんて、一体何があったのよ?」

舞「よりによってって?」

あや「海ちゃんの7人の彼女は、みんな平等じゃないんだよ?

月曜日は休み明けで疲れてるでしょう?だから1番ランクが下。夜更かしできる金曜日と土曜日が、一番愛されていると言うステータス。

その中でも、土曜日は昼間も一緒に居られて、夜もゆっくりできるから、7人の彼女の中で一番上のランクってことになるわけ。

誰でも彼女にしてもらえるって言ったって、一応海ちゃんにだって好みはあるからね。お気に入りの子を金曜日とか土曜日に置いてるって噂!

だから7人の彼女たちの中でもヒエラルキーがあって、土曜日の彼女が1番でかい顔してるってわけ!

前にもね、金曜日の女が翌日になっても結構な時間まで海ちゃんを引き止めて、土曜日の女と髪の毛つかみ合いの喧嘩になったって話だよ〜」

 

 

ひぇ~、また凄いシステムだなぁ、おい。

女のマウントの取り合い、恐ろしい…。

そして海ちゃん、どこまで罪な男だよ…。

 

 

あや「それにしても仮病使ってまで、今日、海ちゃん何してたんだろうね?」

舞「えっ!!?」

あや「ん?あんた、何か知ってんの?」

舞「ううん…!何にも知らない!」

 

 

朝からさっきまで、ずっとうちにいました、なんてこの流れで絶対言えない…!

 

 

飛貴「他の女のところに行ってたりして?」

ギクーッ!!

あや「もしそうなら、ヤバすぎでしょ」

舞「あ、あの~…ちなみに、他の女のところに行ってたのがバレたらどうなると思う…?」

 

 

 

あや「刺されるんじゃない?」

 

 

 

二人だけの秘密

ちらほらとお客さんが入り始めたので、「話はまた後で」と説得すると、彼女は「バイトが終わるまで待たせてもらう」と、客席に座った。

お客さんとなれば、追い返すわけにもいかない。

 

 

「舞ちゃん舞ちゃ~~~ん(´□`)」

 

やっと解放された海ちゃんが、私の両手を引っ張り彼女から見えないように厨房へと連れていく。

 

海「すっごい怒ってるぅ~~~!お願い!今日、舞ちゃんの部屋にいたこと言わないで!刺されるかもぉ~~~!」

舞「言うわけないでしょ!私が刺されるわ…!!(ㅇㅁㅇ;;)」

 

 

もう~~~、何もやましいことはしてないのに、なんでこんなことになっちゃうんだか…。

 

 

飛貴「あれ…2人で何やってるんすか…?」

振り向くと、呆然とした顔で飛貴くんが立っていた。

2人で両手を握り合っていたことに気づき、慌ててぱっと後ろに飛び退いた。

 

舞「なっ、何でもないよ~?ふふふ~」

 

飛貴くんは怪訝そうに首を傾げている。

 

 

舞「ほらほら、混んできたよ。早く行かなきゃ」

しっしっと追い払うように手を振ると、飛貴くんは怪しみながらも行ってしまった。

 

 

舞「私たちもホール戻らなきゃ。また怒られちゃう…!」

海「え~~~怖いから、俺、今日なるべく洗い物に専念するぅ」

舞「全く世話が焼ける子だなぁ、もう!でも、その方がいいかもね。じゃ、私は顔バレしてないから、ホール行くね」

 

 

急いで厨房から出ようとすると、チョンチョンと肩をつつかれた。

 

海「今日のことは、ふたりだけの秘密、だね…!」

人差し指を口にあてた海ちゃんが、無邪気な笑顔で肩をすくめて顔を傾けた。

 

レモンの気持ち

確かに一番の上のランクの彼女ってだけあって、派手で綺麗なお姉様って感じ。

だけど気が強そうで近づくのが怖い。

何より自分に恨まれる心当たりがあるから、怖くて近づけない。

でも、別に浮気したわけじゃないんだけどなぁ…。

 

 

だけど、どうして海ちゃんは一番の彼女とのデートをすっぽかして、家に来たんだろう?

心配だったからって言ってたけど、私が落ち込んでもいないし、バイト辞める気もないのは朝の時点で分かったはず。何も、夕方まで入り浸らなくてもよかっただろうに。

 

 

下げた食器を洗い場に持っていくと、海ちゃんがボーッと突っ立っていた。

 

舞「海ちゃん、どうしたの?ぼーっとして」

海「わっ、びっくりした…!なんかちょっと、レモンの気持ちになっちゃって。」

舞「は?」

海「ここに捨てられてるレモンの気持ち」

 

流しの片隅にある残飯入れを指さす。

また、なんか独特なこと言い始めたぞ、この子は…。

 

 

海「レモンって彩りじゃん?お刺身にも焼き鳥もついてるけど、レモンそのものの味が好きっていう人ってあんまりいないじゃんね。

メインの料理をより良くさせるため、ちょっとエキスを絞り取られたら、もう用済み。果肉の部分、中身は残っているのに捨てられちゃうんだよね。

悲しい運命じゃない?」

 

 

うーん、自分に重ねあわせちゃったってことかな…?

 

 

海ちゃんのフルタイムラバーシステムに疑問を覚えるのは、彼女たちがそれでいいのかってこと。

普通だったら、自分の好きな人が、他の6日間に他の女を愛しているなんて、耐えられないはず。

 

だけど、横に連れて歩いて、自分がさらにいい女に見えるのが嬉しいとか、顔のいい男に一晩甘い思いをさせてもらって惚れ惚れするとか、もともと海ちゃんのことをそれくらいにしか思ってないって事なら理解できるかも。

 

 

 

舞「でもそれって微妙に、”可哀想”って共感できないっていうか、ある意味、自慢?

私だってさぁ、”私のことアクセサリーとしか思ってないんでしょ!”とか、”私の体だけが目当てだったの!?”とか言ってみたいわ~。

あ!でも、私、絶対に浮気相手に選ばれるタイプじゃないから、その点はいいかな!

どうせリスク冒して浮気するなら、もっと美人でナイスバディの子と遊ぶじゃん?私みたいな平凡顔の貧乳をわざわざ浮気相手にする男もいないと思うからさー?」

海「そんなことないよ!舞ちゃんは可愛いよ!そ、それに…」

そこまで言って、海ちゃんがキョドキョドと視線を泳がせていることに気付いた。

 

 

舞「ん?どした?」

海「いや…なんか、そういうこと言われると、目のやり場に困るっていうか…つい見ちゃうっていうか…」

 

 

へ?

あ、「もっとナイスバディだったら」とか、「貧乳」とか言ったから?

 

海ちゃん、こんな百戦錬磨のフルタイムラバー持ちなのに、下ネタだめな感じ!?しかも、別に下ネタってほどでもないのに!

ピュ、ピュア…ッ!

なんだか私がセクハラしたみたいになってんじゃん…!

 

 

海「とにかく!舞ちゃんは可愛いし、男がみんな体目当てってわけじゃないから!自信持って!大丈夫!そのままで十分魅力的だよ!」

 

 

…うん。可愛いとか可愛くないとかは主観だから何とでも言えるけど、まじまじ見た結果、「貧乳じゃないよ!」という慰めの言葉は出てこなかったらしい。

 

 

ネガティブ

舞「海ちゃんってさ、あんなにかっこいいのに、時々ネガティブ発言するよね。なんでなんだろう?自分に自信がないっていうかさ」

 

確かに、見た目がいいから海ちゃんを横に置いておきたいっていうだけの女が寄ってきて傷つくこともあるのかもしれないけど、レモンのように”ちょっとかじって捨てられる”ってこともないだろうに。

実際あの土曜日の彼女は、たった1階デートすっぽかされた位で、バイト先まで押し掛けてきているわけだし。

 

 

飛貴「あー、それはですね」

舞「何何、何かあるの?」

 

飛貴くんは海ちゃんの高校の後輩なので、何か知ってるのかもしれない。

 

飛貴「海人先輩がいた頃、うちの高校のサッカー部、やっばいくらいにレベルが高くて。特に海人先輩の寮に住んでいたメンバーの顔面偏差値が凄かったんですよ。

そんな人達といつも一緒にいたら、僕だって自信なくしますよ。」

舞「へぇ〜。でもさ、かっこいい人が多かったからって、海ちゃんだって十分引けをとってないんだから、そんなに自信なくすことないじゃんね?」

 

飛貴「うーん、ところが、一個上にもう異次元レベルの美形2人組みがいて、…ここだけの話ですけど、海人先輩、その2人と恋のライバルだったんですって。それで、全く叶わなかったって」

舞「えーっ!そんなやっばい2人と!?てか、そんなやっばい2人と、海ちゃんの3人から思われるって、どんな女よ?」

飛貴「いや~、僕は海人先輩の2個下なんで、その二人組とはかぶってないから当時のことはわからないんですけどね。

でも、そのやっばい顔面の先輩のうちの1人、廉先輩って言うんですけど、初蹴りの時に会ったことあるんで!ほんっとにやっばいです!

もう1人の紫耀先輩は海外に行っちゃったとかで見たことはないんですけど、噂によると、廉先輩よりモテてたっていうから、相当ですよ。

だから、その二人相手に惨敗した失恋が、トラウマになっちゃってるんですかねぇ…。

絶対に叶わない恋だったって。

そんな辛い恋を経験したから、自分を好きって言ってくれる女の子には、同じ思いをさせたくないって、できる限り気持ちに応えたいんだって言ってました」

 

 

へぇ…海ちゃん、そんな辛い恋をしてたんだ…。

それで、あの独特な恋愛観が生まれたわけね…。

 

 

でも、海ちゃんが惨敗するほどのイケメン2人って、一体どんななんだろう。ちょっと見てみたい…。

 

修羅場

 

土曜日の彼女が、店内をキョロキョロ見回しながら1人でジョッキを何杯も空けている、本当に閉店まで居座るつもりなのだろう。

あんまり近づきたくないけど、テーブルに溜まっているジョッキは下げないわけにもいかない。

 

 

「空いてる食器お下げしまーす。」

必要最低限の時間ですぐに退散しようとしていたが、

 

「あなた、見ない顔ね。新人さん?」

と声をかけられてしまった。

 

「あ、はい1ヶ月くらい前に入って」

「先月…」

 

彼女はそう呟いたまま、何かに気付いたようににハッとした。

 

「ねぇ、もしかしてあなた、今日海ちゃんと一緒にいた?」

 

何で分かったの!?

私、何かボロ出した?

 

 

「いえいえ、そんな訳ないじゃないですか〜、ちょっとお店混んできましたので…」

そろそろと逃げようとしたけど、ぐっと腕を掴まれた。

 

 

「本当に?」

 

ひっ、ひぇ〜っ!!捕まったよー:(;゙゚’ω゚’):

 

 

「海ちゃん、そういえば先月くらいから様子がおかしいのよね。ちょっと恋愛観が変化したっていうか。

海ちゃんの周りで起きた女がらみの変化って、あなたじゃないの?

本当はあなた、海ちゃんの浮気相手なんじゃないの?」

 

「ま、まさか…!」

 

やばいやばい…、刺されるーーっヽ(´Д`;≡;´Д`)ノ

 

 

彼女たち公認の7股のはずなのに、やっぱりそこにも”浮気“って言う概念あるんだ!?

てか海ちゃん、7股もかけておきながら、さらに浮気の疑いかけられるってどんだけだよ…!?

 

 

でも…彼女たちにとっては「週に1度しかないんだから!」って思うかもしれないけど、海ちゃんにとっては、毎日誰かの相手をしてるんだもんなぁ。

疲れることもあるよなぁ。たまには安らぎを求めたくなるよな。

 

 

 

ん?安らぎを求めて来たのが、私のところなの…?

 

いやいや!今そんなこと考えてる場合じゃなくて…!

 

 

「お姉さん?どしたん?」

 

後ろでちょっと高めの柔らかい関西弁が聞こえ、振り向いて腰を抜かしそうになった。

もし漫画だったら、「ドヒャー!」と両足を天井に向けてぶっ倒れていただろう。

 

 

スラリとしたか細い手脚、175センチくらいありそうな高身長、毛先を遊ばせたおしゃれヘア、その前髪で隠してしまうのがもったいないくらいの大きく整った目。

まさに飛貴くんの言葉を借りるなら、”異次元レベルのやっばいイケメン”が、そこに立っていた。

 

 

思わず私の手を掴んでいた彼女の手の力が緩んでいたし、それどころか店にいる女性客がみんなざわざわと振り返っていた。

 

 

もしかして、これが…。

 

 

飛貴「あれ!れん先輩!?」

廉「飛貴!何やお前、ここでバイトしとったんか?」

飛貴「はい、海人先輩の紹介で!」

廉「そっか、お前、海人と同じ大学やったもんなぁ」

 

やっぱりこれが噂の、海ちゃんの自信を失わせるほどのやっばい顔面のレン先輩だ。

 

 

廉「もしかして海人、また修羅場ってるんか?助けたろか?」

 


 

 

土曜日の彼女は、レンくん達と同席して飲むことになり、すっかり機嫌が治り、「閉店まで居座る!」と言う宣言はどこへやら、レンくんたちが帰るときに「私も一緒に帰る~♡」と甘えた声を出し、一緒に行ってしまった。

何と言う変わり身の早さ…。

まぁおかげでこっちは助かったけど。

 

 

 

海「ね、捨てられたレモン」

海ちゃんが自分を指差して、自虐的に笑った。

 

 

 

確かに…「海ちゃん海ちゃん」言ってた女の子が、レン先輩が現れた途端にそっちに乗り替える…なんてことが今までにもちょくちょくあったとしたら、自信を無くす気持ちもわかるし、「こんな俺を好きって言ってくれる子のことは、ちゃんと大事にしたいんだ」という心理になったのも理解できる。

 

自分を思ってくれている女の子を傷つけたくない海ちゃんは、自分からふることはしないらしい。

だから、時々「○曜日、空きができた」というのは、女の子の方から去っていったってことになる。

たくさんの子と付き合うってことは、それだけたくさんの子に去られていくってこと。

海ちゃんはその度に、捨てられたレモンの気持ちになっていたのかなぁ…。

こんな風に痛々しい作り笑顔で彼女たちを見送りながら、それでも傷つけるよりは傷つけられる方を選んで、こんな恋愛を続けてきたのかなぁ…。

 

 

 

舞「海ちゃんがレモンならさ、私はツマだね。海ちゃんはたった一人でお皿全体をパッと明るくすることができる選ばれし存在。私はお皿の色に馴染んじゃうくらいの目立たない、その他大勢のツマ!

でも私たちのようなその他大勢が居なきゃ、主役級も輝けないんだからね!だから、私は誇りを持って、輝く人たちを持ち上げます!

それでも、ツマ食べる派の人って時々いるじゃん?たくさんの人に取り合われるよりも、自分を好きって言ってくれる少数派の人に好んで食べてもらえればそれでいいから!

それに…」

 

 

自分でも半分何言ってるんだかわからなくなって、早口で捲し立てた。

 

 

 

舞「レンくん、確かにものすごくかっこよかったけど、私は海ちゃんの顔の方が好みだけどな」

海「あはは、ありがと。慰めてくれて」

舞「別に慰めるとかじゃなくて、本心だけど?

レン君は例えるなら豹みたいな感じ?なんかちょっときつそうで怖い感じする。

私は海ちゃんみたいな、たれパンダみたいな甘い顔が好きなだけ!

好みなんて人それぞれだもん。どっちが上とかないでしょ!」

 

 

海ちゃんの顔から、さっきの痛々しい表情は消えていた。

 

舞「あっ…言っとくけど、好きって、顔だけね!顔が好きなだけだから勘違いしないでね…!」

海「もぉ~”顔だけ”って言われるのが傷つくって話を、今してるのにぃ~!」

舞「私は、中身もちゃんと好きにならなきゃ、”彼女にして”なんて言わないってこと!でもだから、海ちゃんの前から去っていったりもしないってこと!」

 

海ちゃんが、もうこれ以上下がらないだろうって言う位に眉毛を下げる。

 

海「舞ちゃん!好き好き~(≧∀≦)レモンとツマで、脇役の添え物同士、俺たち、お似合いかもよ~?」

舞「いや、何が脇役よ。どう見ても海ちゃんは主役中の主役だよ!うにだよ、ホタテだよ、大トロだよ!」

 

 

無邪気に抱きついてくる海ちゃんを、照れ隠しで払い退けた。

 

 

海「ねぇねぇ、今日読んでた漫画、まだ途中なんだよね。続き、読みに行っていい?」

舞「今から!?」

海「うん!」

 

 

「漫画読みに行っていい?」なんて口実で家に上がり込もうとするなんて、送ったついでに「トイレだけ借りていい?」と言って部屋に上がり込む遊び人の男が使う技みたいに胡散臭いんだけど…。

土曜日の彼女がいなくなったことで、もしかして私が土曜日の彼女に昇格!?

て事は、今度こそ部屋にあげたら海ちゃんとそういう関係に…!?

 

 

寝言

……。

なぜ、私は手を出されない…?

 

 

 

言葉通り、漫画を読みながら寝落ちしている赤ちゃんみたいな寝顔を見ていると、この男が平気な顔して7股もかけているだなんて、どうしても思えない。

どうやら過去に失恋をこじらせまくったせいで、恋愛観がおかしくなっただけで、ただの遊び人というわけでもないみたいだし。

 

 

それにもし本当に遊び人なら、こんな深夜に部屋に来て、一向に手を出される気配のない私って、どれだけ魅力がないのだろうと落ち込むしな…。

 

 

 

海ちゃんは、本当に“来るもの拒まず“と言う恋愛スタンスなだけで、だれかれ構わず手を出すってわけでは無いのだろう。

だけど今日の彼女は、どう考えても“来るもの“だった。なのに、どうして海ちゃんは今日、会うことを拒んだんだろう?

 

彼女は「先月位から様子がおかしかった」と言っていたから、ここ最近、何か心境の変化があったのだろうか?

 

 

海ちゃんにはなぜかすごくなつかれているなとは感じているけど、まさか彼女が言っていたように、その変化の原因が私…なんて事は、ないよね…?

 

 

その時、むにゃむにゃと海ちゃんが寝返りを打った。

 

 

「まいちゃん…」

 

 

 

……え?

寝言で名前呼ぶって、これはありえなくは…ない…!?

 

つづく

 

 


海ちゃんの切ない片想いは、本編で描かれています。

 

さらにスピンオフで、一度、失恋という形で完結しています。↓

上の作品で、どんなに思ってもかなわない恋を終わらせた海ちゃんが切なすぎて、海ちゃんにもハッピーエンドを!ということで、海ちゃんスピンオフ パート2が誕生したのです!

 

「koi-wazurai」の小説一覧はこちら!

徐々に挿絵追加中!

岸くん回↓

じぐいわ回↓

海ちゃん回↓

岸くん回↓

岸くん回↓

岸くん回↓

岸くん回完結!第1章完結!↓

第2章始まり!海ちゃん、平野くん回↓

平野くん回↓

平野くん回↓

れんれん回↓

れんれん回↓

れんれん回↓

平野くん回↓

平野、廉、三角関係回↓

平野、廉、三角関係回↓

平野、廉、三角関係回↓

平野、廉、三角関係がついに完結!↓

アフターストーリー
①はわけあって、別の小説サイトに載せてます。


 

スピンオフ作品
れんれん

海ちゃん


 

 

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