「引退したい」慎吾の突然の言葉に中居はどんな答えを出す?
SMAPを失い、笑顔を失った慎吾・・・。
中居と木村は、何も言わなくても「慎吾を守る」ため同じ決断を下す・・・。
残りあと2話で完結する予定です。
この作品は、SMAP解散の真相を妄想して描いたフィクション小説です。
中居サイドストーリー
突然の言葉に、俺は言葉を失った。
木村「ういーっす」
吾郎「あ、みんな。久しぶり~」
そこへ、木村と吾郎が入ってきた。
剛「僕が呼んだんだ。今日は、大事な話し合いになると思ったから・・・」
木村は部屋に入ってきたときにちょっと頬が緩んでいた。
久々の再会を喜んでいるのを悟られたくない”ひねくれ者”は、必死にそれを隠してポーカーフェイスを作っている。
しかし、瞬時に重い空気に気がついて緊迫した表情を浮かべる。
吾郎もすぐに異変に気がついたようだ。
慎吾「木村くん、吾郎ちゃん。ごめん・・・。
・・・僕、引退したいんだ」
もう一度、慎吾がはっきりと言った。
「どうして・・・」
木村は小さくそう言って、あとは言葉が続かなかった。
中居「慎吾、ちょっと待て。今、辛いのはわかるけど、俺はまだ諦めたわけじゃない。俺は、必ずSMAPを取り戻すから!!」
慎吾「そんなこと言ったって、なんかみんな解散したことだんだん受け入れちゃってる感じじゃない!?
中居くんはすごいよ。一人になっても全く勢い変わらないってゆうか、前よりもっと絶好調って感じだし。みんなの仕事まで取ってきちゃうんだもん。ほんとすごいよ。このままソロでやっていっても、全く問題ないじゃん。
でも僕は、そんなの受け入れられないよ!僕たち、今までだってほとんどがソロの仕事だったかもしれないけど、それでも戻る場所があった。週に一度は必ず5人で顔を合わせる時間があった。
でも、もうそれがないんだ。どこにも戻る場所がない。不安で仕方ないんだよ。
僕はさ、小学校の頃からずっとSMAPという家族の中で生きてきた。飯島さんというお母さんがいて、頼れるお兄ちゃんたちがいて。
上のお兄ちゃん二人は、時には親代わりになって僕のこと厳しく叱ってくれたりもしたし、本気で怖いこともあったけど、でもいつも正しいほうへと導いてくれた。
僕にとって、SMAPは本当の家族だったんだよ!!」
気づいていた。
慎吾ももういい大人になって、いろんな仕事をこなし外では立派な大人になった姿を見せてくれていたけど、SMAPの中に戻るとやけに喋り方も振る舞いも幼くなることを。
それは、外では無理して大人っぽく振舞っていても、俺たちの中に帰ってくれば安心して甘えられるんだという証拠だった。
こいつは、本当はこんな厳しい世界で生きていけるような図太い人間じゃない。
だから、いつもどこかで俺たちを頼ってたし、それをわかっているからみんなも一番慎吾のことを守ってやらなきゃと感じていた。
だけど、結局守りきれなかった・・・。
慎吾「僕、耐えられないんだ。木村くんを救いたくて、不仲説とか演じてきたけど、うまくいくと思ったのに、結局失敗しちゃって。木村くんは未だに裏切り者扱いだし、それを許せない僕が解散するって言い張ったみたいになってるし・・・。
なんかもうめちゃくちゃだよ!僕が何よりも大切に思っているSMAPを、なくしたいなんて思うはずないのに!なんでみんなそんなこと信じちゃうの?わかってくれるって信じてたのに。
僕ってそんなふうに見える?僕たちが今までやってきたことって何だったの?みんなは何も見てくれてなかったの?僕たちがやってきたことには・・・何の意味もなかったの?」
慎吾は一気にそこまで言って、黙り込んだ。
やっぱり、慎吾にあんな役をやらせるんじゃなかった。
木村を守りたいという思いだけで無理をしたけど、やっぱり慎吾にとっては辛すぎる役目だったんだ。
俺らの中で一番繊細なハートを持つ慎吾にとっては。
ファンの中には、マスコミの記事を鵜呑みにせずに俺たちの小さなメッセージを受け取ろうと必死にアンテナを張ってくれている人もいる。
だけど、世間一般には俺たちの構図は慎吾の言うように解釈されてしまっているのは事実だ。
「言わせとけ」
そうは思えない人間もいる。
誰もがそんなに強いわけじゃない。
慎吾は、本当にナイーブで純粋で、そして優しい人間だ。
自分が戦犯扱いされていることよりも、本当は木村を救えなかった、それが一番悲しいのだろう。
力及ばなかった自分を責めつづけているのだろう。
慎吾「僕ね、SMAPがなくなってから、ずっとSMAPのCD聞いてるんだ。でも、もうどの曲を聞いても、悲しい歌にしか聞こえないんだ…。」
表情のなくなった慎吾の頬をポロリと涙が伝う。
それを見て俺は胸が締め付けられる。
「わかったよ、慎吾」
俺は静かに呟いた。
ぴくりと吾郎が顔を上げる。
剛は驚いた様子で、俺を見る。
木村は、微動だにせずにうつむいたままだった。
中居「もうお前にこれ以上無理はさせられない。
でも、俺は絶対に諦めないから。必ずSMAPを取り戻す。その時は慎吾、どうか戻ってきて欲しい」
慎吾「そんなこと、できないでしょ。1年間、あれだけ頑張ったのに、結局SMAPはなくなっちゃったんだから」
虚ろな目をして慎吾が吐き捨てるように言う。
慎吾に、こんな目をさせてしまったのは俺だ。
こいつの笑顔には、人を元気にさせる力がある。
ずっと無邪気な笑顔を守ってやると誓っていたのに。
中居「それでも、俺は必ずSMAPを取り戻す。絶対に。待っていてほしい」
俺は、もう一度言う。
慎吾「今まで、お世話になりました・・・っ!!」
慎吾は90度に頭を下げた。
俺たちは、そのでかい体を黙って見つめていた。
慎吾はずっと顔を上げない。
木村が、静かに慎吾の肩に手を置いた。
そして、慎吾は踵を返して部屋を出て行った。
木村「じゃあ、俺行くわ」
木村が誰とも目を合わせずに部屋を出ていく。
そのポーカーフェイスを崩さないように必死になっているのがわかる。
吾郎「僕も、次の仕事あるから」
吾郎も木村の後に続く。
しんと静まり返った部屋に残された剛が、ポツリと口を開く。
剛「意外だった。中居くんも木村くんも、もっと引き止めるかと思ったから」
中居「うん・・・。そうだな・・・。でも、慎吾はもう十分苦しんでる。俺や木村が自分の気持ちを押し付けたら、あいつは逃げ場がなくなっちまうだろ。俺たちの期待に応えようとして、ギリギリまで自分を追い込んで、心が壊れちまうかもしんねぇ。それじゃ、俺が木村にしたことと同じになっちまう」
剛「だから・・・木村くんも何も言わなかったんだ・・・。その気持ち、誰よりもわかるから」
中居「木村はさ、自分がSMAPのために苦しむのは何とも思わないけど、自分のためにSMAPの誰かが傷つくことは絶対に耐えられないヤツだから。
特に慎吾のことは、本当に可愛がってるから、あんなに苦しんでいる慎吾に“SMAPのためにもっと頑張れ”とは言えないんだよ」
剛「それ、中居くんもだよね」
剛が、この上なく優しい声で言う。
剛「僕ね、昔慎吾とも言ってたんだけど、SMAPってあんまりみんなで話し合いとかしないよねって。それが不満・・・ってゆうか疑問?みたいに思ってたことあって。
特に中居くんと木村くんはさ、ほとんど話し合いとかしないじゃない?でも、全然話さないくせに、なんかちゃーんとカチっと出来上がっちゃったりしてるんだよね、不思議と。
それが妙にかっこよくてさ。言わなくても通じ合ってるってゆうか。そうゆう特別な関係」
中居「俺たちは夫婦か(笑)」
俺はふっと笑い、ちょっと茶化したように言う。
でも、剛は真面目な顔でしゃべり続ける。
剛「いや、ほんとに。そうゆう二人の感じ、僕にとっても慎吾にとっても、たぶん言わないけど吾郎ちゃんにとってもね、ずっと憧れの存在だったから。ちょっと二人のことファン目線で見てるとこあって。
だから僕、SMAPのメンバーで本当に良かったなぁって。こんなカッコイイ二人についていけるって、本当に最高の幸せ者だなぁって。すごい安心感あったし、ずっと守ってもらってきたって、感謝してる。きっと慎吾も吾郎ちゃんもね」
剛の言葉は、いつも柔らかい。
慎吾を引退に追い込んだのは、結局SMAPを守りきれなかった自分じゃないかと俺や木村が自分を責めていることを感じ取って、必死に励まそうとしているのが伝わる。
いつだって、人の気持ちに寄り添える優しい男だ。
剛「中居くんも木村くんも、慎吾の気持ちを一番に考えてくれて、ほんとありがとう。僕がお礼言うのもなんか変だけど。
僕なんて、必死に慎吾のこと引き止めちゃったよ。ちょっと前から何度か相談受けてて。だって、慎吾がいなくなったら寂しいって本当に思うから」
中居「それでいいんだよ、お前は。
お前は難しいことなんて考えなくていいんだ。ただ一番近くで慎吾に寄り添ってやる存在でいてくれよ、これからもずっとさ」
慎吾、俺たちはさ、いつもお前の笑顔に元気をもらっていたんだよ。
お前の元気な声が聞こえなくなると、俺たちは急にシンとしてしまう。
それだけお前の存在は絶大だった。
だから、俺は誓う。
今は遠くで見てるよ。
だけど待っててくれ。
きっと・・・いや絶対、お前の笑顔を取り戻すからな。
君は気づいているの?
周囲の人をしあわせにする あぁ自分に…
だから君が辛い気持ちになると
途端に風は 寒くなる
出典:SMAP「笑顔のゲンキ」作詞:森浩美、作曲:馬飼野康二
元気な君が好き 今は遠くで見てるよ
ほらッ笑顔が ううん 君には やっぱり似合ってる
出典:SMAP「笑顔のゲンキ」作詞:森浩美、作曲:馬飼野康二