こちらは、ミスチルの「花言葉」という曲にインスピレーションを受けた”音楽小説”を公開しています。
「コスモスの花言葉は咲かなかった~♪」というあの曲です。
この作品の主人公はKis-My-Ft2の玉森裕太さんと、広瀬アリスさんのイメージです!
チョコレートコスモス1
「よし!これで忘れ物なし!」
小さな箱をバッグに入れて、僕は家を出る。
最寄駅から電車に乗りこみ、すいた車内の一番前の車両の一番前に立つ。
席はたくさん空いているのに、とても座ってなんていられない。
ガラス越しに見える運転手さんに、もっと速度を上げてくれるようにお願いしたいくらいだ。
僕は、バッグに入っている小さな箱を覗き、次に家を出てからずっと握り締めたままの携帯電話を見る。
その瞬間電車はトンネルに入り、ガラスに気持ち悪いくらいにニヤケた自分の顔が映ってびっくりする。
今日は僕、篠山和也にとって一世一代の大きなことを成し遂げる日になるだろう。
この小さな箱には、小さいけれどダイヤモンドを施した指輪が入っている。
今日、彼女に渡す婚約指輪だ。
僕の彼女、早季は、3年前からパティシエの修行でパリに住んでいた。
僕たちは長かった遠恋を乗り越え、今日やっと再会するのだ。
僕は、もう一度携帯電話を見る。
まだ連絡はない。
それはそうだ。飛行機が遅れることはあっても、早まることはないだろう。
会えない間、僕たちを繋いでくれたのは、この小さな機械だけだった。
今の時代に生まれて、本当に良かったと思う。
昔だったら、海外に離れ離れになるなんて、もう死んで会えなくなったも同じだっただろう。
3年前、離れることを不安がる彼女に、俺は”婚約約指輪”を渡した。
まだ大学を卒業したばかりで、何も約束なんてできない僕だったが、“3年後に婚約指輪を渡す、という約束の指輪=婚約約指輪“を彼女に渡したのだ。
そのとき渡したのは、路上で売っている安い指輪をプレゼントした。
いや、僕だってもうちょっと奮発したものをプレゼントしたかったのだが、彼女がそのデザインが気に入ったというのだから仕方がない。
それは、小さなコスモスのモチーフの指輪だった。
赤いコスモスの花言葉は「愛情」ということで、愛する彼女にプレゼントするにはぴったりだと思ったし、ピンクのコスモスの花言葉は「純潔」ということもあって
「離れ離れになっても、お互い純潔を守ろう!!」
などと言い合って笑った。
そんなことを思い出しているうちに、乗り継ぎ駅にやってきて、僕は特急成田エクスプレスに乗り込む。
ここまで来たら、もうすぐだ。
ようやく成田空港に到着した。
「ちょっと早すぎたか・・・」
僕は、滑走路を見渡せる展望屋上に出て、次々と到着したり出発する飛行機を見ていた。
しかし、時間になってもいっこうに彼女の乗った飛行機は到着しなかった。
不安になって到着ロビーに戻ってみる。
すると、そこは大騒ぎになっていた。
電光掲示板に、目を疑うような文字が流れていた。
「パリ発成田空港着 416便 消息不明・・・」
ショウソクフメイ・・・?
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