キンプリ妄想小説「Doll」10話 困ったように言葉を飲んだ二人

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ついに、ついに、ついにーーっ!紫耀くんが自分の気持ちに素直になった…!!それに対して花凛は…!?

2人の運命を変えたあの七夕の夜。もし、あの時2人が出会っていたら、2人の未来は変わっていたのか…!?

今回、Dollから読み始めてくださった方には、過去のお話がよくわからないと思います。こちらを読んでいただくと、紫耀くんと花凛がどうしてすれ違ってしまったのか、紫耀くんの壮絶な過去がわかるかと思います。↓

キンプリ妄想歌詞小説「Seasons of Love」エピローグ①〜20話宙 (ソラ)の裏側のお話〜

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もしあの日、迎えに来てくれていたら…(花凛サイド)

「花凛が欲しい」

一瞬、言葉の意味を理解できずに固まった。

「花凛が、好きだ」

次の言葉は、紫耀くんもそれを自分の中で確認するかのように、ゆっくりと、でもはっきりと、口にした。

紫耀「さっき…」

沈黙を破り、紫耀くんは話題を変えた。

花凛「え…?」
紫耀「さっき、あの七夕の日、もし俺があの神社に来てたならって、言いかけたでしょ?もし来てたら、どうなってた?」
花凛「あぁ、あれは…でも、”もし”なんてね、実際そうじゃなかったことを、後からあれこれ言ったってね、しょうがないもんね」

なんで紫耀くんがそんな話をするのか分からないけど、とりあえず明るい調子で答えて、さっきまでの緊迫感を砕こうとする。

紫耀「もし、じゃないよ」
花凛「…え?」
紫耀「行ったんだ、俺、あの七夕の夜。あの神社に」

花凛「うそ…」

そんな…だって、あの時、もし迎えに来たのが廉じゃなくて紫耀くんだったら、私は、私は…

もう嘘はつけない(花凛サイド)

花凛「うそ…だよ。だって、あの日私、お祭りが終わるまで、ずっとあの神社にいたんだよ」

ずっと紫耀くんを待ってたから。

あの日だけじゃない。「毎年七夕にあの神社で一緒に花火を見よう」って約束が忘れられなくて、七夕の日は、毎年あの神社で紫耀くんを待ってた。

花凛「お祭りの人とかみんな帰るまでいたの。でも、紫耀くんは来なかったよ」

来てくれたのは、廉だった。
あの時、私を迎えに来てくれたのは廉で、それで私の心は決まったんだよ。
私を本当に大切にしてくれる人、いつだって私のそばにいてくれる人は廉なんだって。

花凛「もし本当ならなんで…なんで声かけてくれなかったの?」

そう言って、ハッと思い出した。
あの時、紫耀くんの声が聞こえた気がした。紫耀くんに名前を呼ばれた気がしたんだ。

気のせいなんかじゃなかった。
あの時、本当にあそこに紫耀くんがいたんだ。私に会いに来てくれていたんだ。

花凛「え…じゃあ、本当なの?森本さんが言ってたこと全部…」
紫耀「どこまで聞いたかわからないけど、たぶん…。嘘言ってもしょうがないから」

たぶん、森本さんは全てを話してくれた。紫耀くんは、いつも私を守るために、自分の欲しいもの全部全部我慢してきたんだって、森本さんが言ってた。
芸能界で大成功して、すごくお金持ちになってキラキラした世界で幸せにやってるって思ってた。でも、本当は廉のお父さんにお金全部取られて、働いても働いても何も残らなくて、ノルマに追われるようにまた働いて。
それだけじゃ足りなくて、体も売って…。
逃げたくても逃げられない。まるで、檻の中に囚われているみたいに…。

それは、作り話だと言われた方がすぐに納得するくらいに嘘みたいな壮絶な人生で、だけどもしそれが全部全部、本当の話だったのなら…

紫耀「花凛…、なんで泣いてる?」

紫耀くんに頬を拭われて、自分が泣いていることに気づいた。気づいたら、もっとどんどんボロボロと涙が落ちてきて止まらない。

じゃあ、あの七夕の夜も、新幹線のホームで別れを告げられた時も、本当は紫耀くんは私を思ってくれてたってこと?
私のために、ずっと嘘をついて、こんな抱えきれないほどの苦しみにたった一人で耐えてきたの?

紫耀くんがいつも私のことを一番に考えてくれるの、嬉しかったよ?でも、私はそれでも、紫耀くんと一緒にいたかった。ただ、一緒にいたかった…。

紫耀「もし…」

紫耀くんが、涙を拭いながら私の頬にそっと手を添える。

紫耀「もしあの時、俺が花凛を迎えに行ってたら…、俺と一緒に来てくれてた?」

もう、噓はつけない…。

私は小さくコクリと首を縦に振った。

ガラスの破片(紫耀サイド)

花凛が小さくコクリと頷く。
涙を拭うために花凛の頬に添えた手、そして、もう片方の手を添えて花凛の顔を包み、ゆっくりと顔を近づける。
手の感触から、花凛が避ける気配は感じ取れない。

「いっ…」

さらにもう一歩花凛に近づこうとして足を踏み出した途端、足の親指に痛みを感じた。

花凛「えっ、紫耀くん、大丈夫!?ガラス踏んだ!?」

さっき落として割れたガラスの破片が刺さったようだ。

紫耀「あ、ちょっとだけ。でも全然平気」
小さな破片が指に刺さっていたが、手を抜いたらそれで済んだ。深く刺さっていたわけではなく、本当にちょっと血がにじんだだけで、なんてことはなかった。
花凛「平気じゃないよ!ちゃんと手当しなきゃ!」

紫耀「平気だから」

しゃがみこもうとした花凛の手をパシッと掴むと、花凛は驚いたように顔を上げた。

花凛「え…紫耀くん?どうしたの?ほら、ちょっと血が出てるよ?早く手当しなきゃ…!」

こうやって、ちょっと危うい雰囲気になったときに、何かハプニングがあって、それで我に返って、さっきまでの危うい雰囲気をごまかして…
そうやって、踏みとどまることもできた。今までは、そうやって踏みとどまってきた。

足に刺さった小さなガラスの破片が、これ以上進んだらもっと大きな怪我をするって、教えてくれてる。


だけど、俺は、

紫耀「そうやって、ごまかさないで」

それでももう一歩踏み出すんだ。

紫耀「わかってるでしょ?俺、今、花凛にキスしようとしたんだよ?」

踏み出せば、もっと血を流すことになるってわかっていても。
それでも、もう自分の気持ちをごまかすことはできない。

花凛「紫耀…くん?え、ちょ、ちょ…っ」

花凛の腕を持ったまま押し込んで、キッチンを離れ、テーブルを通り越し、後ろ向きに押されていた花凛はベッドに足が当たってそのまま仰向けにベッドに倒れ込んだ。
そして俺はその上にまたがり、花凛を見下ろす。
初めてした時もこんな感じだったことを思い出す。あの時も、花凛への思いが抑えられなくなって、好きで好きで、もうどうしようもなかった…。

紫耀「嫌なら嫌って言って?」

花凛は嫌ともいいとも言わなかったが、目をそらすことなくじっと潤んだ瞳で俺を見上げていた。
そのまま俺はゆっくりと顔を沈めていく。

そして、その柔らかく懐かしい唇の感触へと到達した。

次の瞬間、身を固くしていた花凛の力がスッと抜けていくのがわかった。
優しく優しく何度もキスを重ねていく。すると、花凛の腕がそっと俺の首へと回された。

あぁ、俺は何年苦しい思いを耐え抜いて、この瞬間にたどり着いたんだろう。
いや、もう二度とこの瞬間にたどり着くことなんてないと思ってたのに。

これ以上ない幸せな気持ちに包まれながらも、さっきガラスが刺さった足の親指がチクリと痛む。
キッチンには、まだ割れたガラスの破片がギラギラと光っていた…。

共犯者(花凛サイド)

私たちは共犯者だ。

私が涙を見せて、紫耀くんに「もしあの時あの神社に来てたなら、俺と一緒に来てくれた?」と質問をさせた。
そして、私はその質問に頷いた。

紫耀くんはキスをする前に「嫌なら嫌って言って」と、私に拒む時間をくれた。
でも、私は拒むことをしなかった。

だから、私たちは共犯者だ。

紫耀くんの手が、私の服のボタンにかけられる。

花凛「ちょっ…」

その手を制すると、紫耀くんは少し不安げな表情になった。

花凛「私、昔より太ったから…」

そう言うと、ホッとしたように表情を緩める。
ほら、また私は罪を重ねる。

”好きだから”昔と変わった姿を見見られたくない、と言っているようなものだ。

紫耀「じゃあ俺が先に脱ぐね」

バサッとTシャツを脱ぎ捨てた紫耀くんの体は、昔と何も変わらず引き締まっていて美しい筋肉が隆起している。そんな完璧な身体を見せられたら、普通に歳をとった自分がさらに恥ずかしくなる。

でも、今度はボタンにかけられた手を制することなく受け入れていく。

紫耀「全然太ってないじゃん、俺、これくらいの方がいい」

今度は肌と肌が触れ合って、さっきよりももっと体が熱くなる。
さっきよりも激しいキスをされて、私はしがみつくように紫耀くんの背中に手を回してそのキスに応えた。

紫耀「花凛…?」

紫耀くんが、一旦体を起こし、私の手を取って自分の体からはがす。

紫耀くんは、切なく泣きそうな表情だった。

紫耀「今だけ…今だけでいいから、外していい…?」

なんて無神経だったのだとハッとする。
私が紫耀くんの背中にギュッとしがみついていたことで、きっと紫耀くんは背中に指輪の硬さと冷たさを感じたのだろう。

さっきまでは服に覆われていたから感じなかったものも、今の丸裸の私たちは敏感に感じ取ってしまう。

私は小さく頷いた。
また大きな罪を重ねる。

指輪を外される。それは服を脱がされるよりも、もっと抵抗があった。

紫耀くんは無言でそっと私の指から指輪を抜き取り、無言で枕元に置いた。
私も無言でされるがままになっていた。

私達は無言で見つめ合い、なんとも言えない気まずい空気を飲み込むように、また静かに”続き”を始める。

紫耀「花凛…」

紫耀くんが、キスとキスの合間に優しい声で私の名前を呼び、髪を撫でる。

花凛「紫耀くん…」

2人とも今にも溢れそうな想いを抱えながら、困ったように言葉をのんだ。

付き合っている頃は、何度も「好きだよ」とお互いに何度も気持ちを確かめ合いながら体を重ねた。
今にも言葉が出そうになるけど、2人ともその言葉を飲み込む。

私達はもうあの頃の私たちじゃない。
何のためらいもなく、自分の気持ちをぶつけられるような関係じゃないんだ。

「紫耀くん、好きだよ」

もしそう口にしてしまったら、廉は?咲人は?
自分のやっていることに整合性が取れなくなる。

指輪を外したからって、私が結婚しているという事実が無くなるわけじゃない。
好きや愛してるの言葉を言わなかったからって、この罪が軽くなるわけじゃない。

指輪を外して紫耀くんと今こうなっていることを許されたいのか、好きって言葉を言わないことで廉へのせめてもの罪悪感を取り除きたいのか。

私、こんなに軽くてずるくてひどい女だったっけ。
こんなに、
最低な女だったっけ…。


紫耀「花凛、おはよう」

昨日はものすごく大きな幸せと、それと同じくらい大きな罪悪感に挟まれながら、いろいろいろいろ考えて考えすぎて、いつの間にか眠ってしまった。

目覚めたら紫耀くんの元々綺麗なのに朝日の逆光でもっと綺麗に輝いている顔が私を覗き込んでいた。
その美しくて温かい光景に、昨日はゆらゆらと揺れて定まらなかった幸せと罪悪感の天秤が、ちょっとだけ幸せのほうに傾く。

花凛「おはよ、紫耀くん」

紫耀くんは微笑みながらフレンチなキスを数回し、そのまま私に覆いかぶさってくる。

花凛「えっ、ちょっと…紫耀くん、また!?」
紫耀「いいじゃん」

暗闇の中で抱き合うと罪悪感がどんどん膨らんでくるのに、明るい中で抱き合うと幸せな気持ちの方が大きくなるのはなぜだろう?
この真っ白な世界には、私達2人しか存在していないように思えるからだろうか…。

再び紫耀くんと愛し合った後、家に帰った私は多分浮かれていて、玄関の靴を見過ごしたんだと思う。
リビングに入って、声も出ないほどに驚いて、血の気が引いた。

「こんな時間までどこ行ってたん?」

目の前には廉が立っていた。

コメント

  1. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    更新ありがとうございます!!
    続き、ガチで気になりますぅ、、、、、、

  2. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    更新、ありがとうございます!
    なんか、緊張してきた、、、笑

  3. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    楽しみにしてます!!

  4. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    ドキドキで何回読み直してもわくわくです!!

  5. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    更新お願いしますっ!!!!!

    • ちゃちゃ より:

      実はここからの展開がまだ決まってなくて…(一応パターンは2つあるんだけど、ちゃんと決まってない)
      見切り発車で後が繋がらなくなると困るんで熟考させてくださいませ…っm(_ _”m)

  6. リノア(ちゃちゃすいっちさん大好き!) より:

    了解でございます、、ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。

  7. まりん より:

    いつも楽しみに更新待ってます!!
    本人たちで再現やってほしいなぁ〜笑

    • ちゃちゃ より:

      コメントありがとうございます。
      本人再現…っ!!それは豪華ですね…きわどいシーンでNG出そうだけど(><)
      更新ペース遅いですが、最終回までお付き合いいただけたら嬉しいです☆

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