こちらはキンプリ歌詞小説「雨音」の続きとなりますが、第二章に突入したので、タイトルが「Seasons of Love」に変わりました!
第二章はれんれんが主演となります!
私の小説では、キンプリの曲の歌詞をもとにストーリーを構成しています。
今回は、「ユメラブ」と「Koiは優しくない」の2曲をどうぞ!
前のお話はこちら。
素敵な夏が始まる予感
照れてる気持ち隠さずに
届け この想いよ…
King & Prince「ユメラブ」作詞作曲:Atsushi Shimada・坂室賢一・大知正紘
一緒に帰ろう(廉サイド)
「あれっ!廉くん?」
俺に気付いた花凛は、スカートをヒラヒラとさせながら、小走りに階段を降りてくる。
廉「お、おぅ…なんや、偶然やな」
「同じ電車乗ってたんだ?全然気づかなかった!」
廉「あ、あー、ほんまやな。違う車両やったんやな。へー、気づかんかった」
「ねー!」
無邪気に笑顔を向けられ、ちょっとばかり罪悪感はない事はないが、それよりもこの人を疑わない性格に助けられたとホッとした。
本当は、俺は2本も前の電車に乗っていて、かれこれ30分以上は待っていた。
「じゃぁ、一緒に帰ろっか!」
そう、こうなる展開を狙っていたくせに、
廉「ま、一緒に帰るっていうか、ただ家の方向が同じなだけやけどな」
なんて、ひねくれた態度を取ってしまうんやけど…。
母親に似た女(廉サイド)
確かに意外と言われるけど、俺はゴキブリとか退治できるタイプ。
たぶん、うちの母親がそういうのダメやったせいやろう。
いつも俺が退治してた。
うちの母親は、虫はダメだし、重いものは持てないし、肝っ玉母ちゃんとは真逆のタイプで、だから俺は小学生の頃から、すごくしっかりした子供だった。
かよわい母親のことは親が守ったるって、そう思ってた。
だけど、そんな”母親になりきれなかった女”は、外に男を作って出て行った。
まぁ、俺の顔を見てくれればわかると思うけど、俺の母親も相当な美形で、結婚後も、子供を産んだ後も、寄ってくる男は後をたたなかったのだろう。
それに、見た目だけじゃなくて、なんというか、うまく男に甘えて周りの男をみんな魅了してしまう力が、俺の母親にはあったみたいだ。
それからは、女と言う生き物が嫌いになった。
特に「男に守ってもらって生きてます」みたいな女が大嫌い。
初めてコイツを見たのは、電車の片隅で紫耀に守られるようにちょこんとたたずんでいる姿だった。
満員電車の中で、1人のちっこい女が立つには十分すぎるほどの広さを確保するために、両腕を突っ張っている紫耀を見て、その守られている女はどれほどのものなのかと興味がわいた。
紫耀がうちの駅のひとつ手前で降りたのを見て、人混みをすり抜けてその女に近づいた。
そしたら、突然手を掴まれた。
「この人、痴漢です…‼︎」
最初は「何を言うとんのや、この女。マジでわけわからんわ」って、イラついた。
冤罪やってわかって、「何でも言うこと聞きます」状態だったので、おもろいからちょっといじめてやろうと思った。
でも、結局俺も優しいもんやから、そこまで意地悪な条件は出せず、”家までのカバン持ち”という超甘々な罰ゲームを出した。
ちょうど傘も忘れてたから、入れてもらえてちょうどいっか、くらいな気持ちで。
とにかく、紫耀が大事そうに守っとったこの女がどんなもんなのか、興味があった。
たいして重くもないカバンをヒィヒィ言いながら運ぶ姿を見ているうちに、もうどうにも見ていられんくて、思わず傘をそっち寄りに挿して守ってあげている俺がいた。
おかげで俺は体半分びしょ濡れになった。
そういうことか。
この女は、俺の母親と同じ種類の人間なんや。
本能的に男に「守ってやらなあかん」と思わせる何かを持っている。
たいして特別な能力を持っているわけでもないのに、いや、何もできないからこそ、無性に男を惹きつける。
紫耀も、女なんて選び放題に寄ってくるはずやのに、こんな分かりやすく男ウケのかたまりみたいな女にたぶらかされているなんて、ただのアホやん。
そう思ったら面白かったけど、そういう俺も、びしょ濡れになりながらこいつを守ってしまったことは面白くなかった。
そして、そうとも知らずに、憎まれ口を叩いて走り去っていったあの女に、どうにもこうにも苛立って、だけどその日から無性に気になって気になって仕方がなかった。
はじめて会った印象は最悪
嫌な奴だと勘違いをしてた
君を知る度 心惹かれていく僕がいた
King & Prince「Seasons of Love」
作詞:MUTEKI DEAD SNAKE、作曲:MUTEKI DEAD SNAKE・児玉啓介
それから、毎日駅で見ていた。
だけど、毎日ボディーガードみたいに知らん男が張り付いていて、近づくことはできなかった。
最初に見た時には、紫耀と付き合っているのかと思った。
少なくとも紫耀の方は、この女を大切に思っているのが遠目で見てもわかった。
だから、次の日には別のイケメンを連れているのを見て、なんちゅー女やと思ったけど、ちょっとおもしろくもあった。
あの紫耀が、女にふられるところなんて、そうそう見れるものではない。
ますますこの女に興味がわいた。
そして、同じ高校に、「岸海人」というやつがいて、まぁ、別に珍しい名字でもないし、そんな偶然あるわけないやろと思いながらも、「超」がつくほどのシスコンだという噂を聞いて声をかけたら、本当にあの女の弟で、マジかと思った。
海人とはすぐに仲良くなって、家に遊びに行ける仲になった。
それでやっと、あの邪魔なボディーガードの目をかいくぐって、あの女に近づくことができた。
紫耀が好きな女に先に手つけてやったら、紫耀はどれだけ悔しがるだろう?
そしたら、俺は今まで何一つ勝てなかった最強の兄貴に勝ったことになるんやないか?
そう思って、襲おうとした。
あまりに隙だらけで、たぶんやろうと思えば簡単にやれそうやったけど、やめた。
かわいそうになったからとか、理性で止めたとか、そういった理由の方が真っ当な人間っぽいけど、実際は違った。
嫌がられていることに普通に傷ついてしまって、それ以上できなかったんや…。
史上最強の男(廉サイド)
廉「で、結局あの後、紫耀と付き合うことになったんやろ?」
二人で歩き出し、何でもないことのように聞く。
「えっ…あ、紫耀くんから聞いた?」
廉「聞いてへんわ。兄弟で恋バナなんかするか!」
「えっ…!?カマかけたの!?」
つーか、今朝の紫耀の様子見てれば、聞かなくてもわかる。
今朝、めちゃくちゃ上機嫌で「れーんっ、おっはよー♡」なんて後ろからハグしてきて、さぶいぼ立ったわ。
一体どこまでいったのか。
キスしたか?それとももっと先まで…
紫耀のことは、喜んで受け入れるんやろうな。
俺の時とは違って…。
変な想像をしてしまいそうになり、ブルブルと頭を振る。
「ん?どーしたの、廉くん?」
廉「そ、それにしても、せっかく付き合うことになったっちゅーのに、またアイツ、バイトバイトで彼女放置しとんの?ほんまに自分、愛されとんのか?」
わざと意地悪なことを言った。
「でも、バイトは家計のためにやってるんでしょ?それで会えないのは仕方ないよ。そういうとこ、尊敬してるし、頼りがいがあってかっこいいじゃんっ?♡」
廉「ふんっ。またか。」
「ん?何?」
廉「どいつもこいつも、“でも、紫耀くんは“って、なんでもかんでもかっこいいところにすり替えるよるから。」
紫耀のアラを探そうとしても、全てが「かっこいいところ」にすり変わってしまう。
俺が紫耀に勝てるのは、学校の成績くらい。
だけどそんなの何のハンデにもならんくて、紫耀がアホ発言しても「でもそういうところが天然でかわいい♡」と、それさえもプラスの要素になってしまう。
逆に俺がちょっとアホな発言すると、「廉くんって、もっとしっかり者だと思ってた」と幻滅されてしまう。
あと俺の方が身長は高いのに、「でも紫耀くんの体ってムキムキでかっこいいよね♡抱かれたいよね♡」とムキムキ筋肉質の方が評価される。
別に俺だって、わりと運動できる方やのに、紫耀の運動神経が尋常じゃないせいで、紫耀との体格差もあいまって、俺が運動苦手な”か弱いキャラ”みたいに思われる。
その他、とにかく俺やって何でもそつなくこなす方やのに、紫耀ができすぎて全然目立たないどころか、紫耀と比べられることによって、俺がなぜか“不憫キャラ“みたいに思われることも多い。
廉「別に、紫耀さえいなければ、俺だって頂点に君臨するはずの人間やったんやで?顔もスタイルもええし、成績だってええし」
「え、それは性格の問題じゃ…?性格直せば、廉くんだって十分頂点に君臨できるよ?」
廉「うっさいわ!お前なぁ!紫耀の前では大人しくぶりっ子してるくせに、俺にはズケズケ言いすぎやねんて!」
「違うよ、紫耀くんの前では大人しくしてるんじゃなくて、紫耀くんは性格がいいから、反論したくなることないんだもん」
廉「あー、また”紫耀くんはー”ですか!はいはい!あいつは何でもできる上に性格までええねんもんなー。
全くとんだ男と兄弟になってもーて、俺の人生散々やわ。こんな完璧な男がそばにいたら、俺がかすんでしゃーないわぁ!」
「廉くんってさ、紫耀くんのこと…」
あ、やべ…今まで思ってても、紫耀に対する劣等感なんて、人に話したことなかったのに、なぜかペラペラと話してしまった。
負けを認めてるみたいでかっこ悪い。
「紫耀くんのこと、大好きなんだね!」
あの日 弱さ隠した胸の奥
そっと見透かすように微笑むから
こんなに臆病になったんだよ
勝手にときめいてさ 図々しいよね?
僕の手をぎゅっと握る君に(花凛サイド)
廉「は?お前、話聞いてた?」
なぜか廉くんが呆れ返った顔でこちらを見てくる。
「だってさ、紫耀くんのこと、何でもできて、性格も良くて、めちゃくちゃかっこいいって、思ってるって話でしょ?私も突然そんなお兄ちゃんできたら、めっちゃラッキー!って思うよ」
廉「アホやな、妹になってたら、今頃付き合えてへんやんか。下手に好きになってもーたら、地獄やで?好きな人が毎日同じ家にいて、それなのに気持ちが報われることはないねんから」
あ、そっか、確かに。
他人のまま再会できて良かったー!
じゃあ、もし紫耀くんの再婚相手に娘がいたら、紫耀くんのことを好きな女の子が、毎日紫耀くんと一つ屋根の下にいることになってたかもしれなかったんだー…‼︎
「私、紫耀くんの弟になってくれたのが廉くんで、本っ当に良かった‼︎うん!廉くんじゃなきゃ、絶対やだよ‼︎」
思わず廉くんの手を両手でギュッと握る。
紫耀くんに血のつながらない妹とか、絶対やだ!
危ないところだったー‼︎
廉くん(弟)で良かったー‼︎
パッと手を離して先に歩き出すと、廉くんがついてこないことに気付き振り返る。
「ん?どーしたの?廉くん」
廉くんは半分白目をむいた状態でさっきと同じポーズのまま固まっていた。
無邪気な笑顔で
僕の手をぎゅっと握る君に
ドキッとしたんだ
想定外恋模様
King & Prince「ユメラブ」作詞作曲:Atsushi Shimada・坂室賢一・大知正紘
諦め恋に落ちていく(廉サイド)
どんな君のことも深読みしてしまうくらい
この一瞬一瞬で
また好きになる
King & Prince「Koiは優しくない」作詞:KOUDAI IWATSUBO作曲:KOUDAI IWATSUBO・Kuwagata Fukino
は⁉︎なんやねん、今の⁉︎
え?え?
俺が良かった?
いや、俺じゃなきゃ嫌やって?
え…?それ、もはや恋やん…‼︎
こ、この女、紫耀と俺に二股かけようとしとんのかーー⁉︎
絶対!絶対、落ちひんぞ‼︎
この俺様に二股(しかも本命じゃない方)とかあり得へんからな‼︎
「じゃあ、ここでー!廉くん、またねー!」
一人で悶えている間に、踏切にたどり着いた花凛が手を振っている。
普通に家に帰るなら、ここで分かれ道だ。
廉「あっ、あぁ〜!そういや今日、海人と遊ぶ約束してたんやぁ〜!」
「え?そうなの?んじゃ、うちまで一緒に帰ろっ」
アカン…!
手握って「廉くんじゃなきゃ嫌!」でほぼ瀕死の状態の俺には、今の「帰ろっ」の「っ」にすら撃ち抜かれ、「廉くーん!早くー!」と手を振って待っているその笑顔に、もう回復不可能な状態になっている。
「お、おぅ…今行くわ」
何とか平静を装いながら早歩きで追いつき、横に並んで歩き始める。
「廉くんはさー、バイトとかしてないの?」
廉「してない。悪かったな。いっとくけど、俺やって、もう高校生になったし、バイトして家計支えるって言うたことあんねんで?それを、紫耀と母親が”廉はいいから“って。一応俺の方が頭いい高校行ってるから、お金の事はいいから勉強に専念しろとかなんとか言うて」
母親は紫耀には頼るけど、俺には頼らない。
多分本当の息子じゃないから、遠慮があるのだろう。
いつも家の事は母親と紫耀が相談して決める。
決まったルールはいつも、俺にとって優遇された条件になっていて、母親と紫耀の2人→俺を守る、と言う構図がうちの家族の中では出来上がっている。
そのたびに、「あなただけが本当の家族じゃないのよ」と言われているような気分になる。
「そうだよね!廉くん、海人と同じ高校だもんね、頭いいんだよね!
廉くん、すごいね!」
「べ、別に…!」
この女…、そうやって、パァッと花開くみたいな笑顔で「すごいね!」とか言えば、男がみんな落ちると思うとんのか…!?
まじで、油断も隙もない女…。
ゴキブリ騒ぎの時に俺にすがってきた時も、その後「すごい!かっこいい!」と褒めちぎってきたっけ。
昔、本当の母親と暮らしていた頃、いつもゴキブリ退治の俺の役割だった。
「さすが廉は男の子ね!かっこいいね!」と母親に褒められたときに感じた、自分の中でむくむくと膨らむ男としてのプライドや優越感みたいなものを感じた。
別にこいつにとっては、頼る相手は誰でもよかったのかもしれない。たまたまそこに俺がいただけ。
それでも嬉しかった。
紫耀と兄弟になってから、すっかり守られる側に陥落してしまった俺にとって、久々のヒーローポジ。(その直後に、あっさり花凛の兄貴の優太にいいとこ持ってかれたが…)
自分が得意としてきたことを褒められて、なんだか自分という人間が認められたような気持ちになった。
その後、キッチンで紫耀とイチャイチャして、さらに紫耀と花凛と海人と優太の4人で俺にはわからん小学校の時の思い出話なんかで盛り上がって、めちゃくちゃそっちの話が気になっていたけど興味ないフリして1人でソファーでゲームしとったら、急に「携帯見せて!」と飛びかかってきて、俺が感じていた孤独を一瞬にして粉砕した。
それだって、ポツンとしていた俺を気遣ったわけやない。
まだ俺をストーカーの犯人と疑っていたんやから、失礼な話や。
でも、
それでも嬉しかった。
家族の中で1人だけ血がつながってないから、腫れ物に触るみたいに大切にされてはきたけど、こんなに失礼なほどズケズケと接してくる相手は新鮮で、逆になんだか心地が良かった。
きっとこいつにはそんな気はさらさらないんやろうけど、知らぬうちに俺を巻き込んでいくそのハチャメチャさに俺は…。
気まぐれなのは僕を試しているの?
今日もまた振り回されてるね 君に
King & Prince「Koiは優しくない」作詞:KOUDAI IWATSUBO作曲:KOUDAI IWATSUBO・Kuwagata Fukino
もう認めなくてはいけない。
初めて会ったあの日から、この女のことが気になって気になって仕方がなかった理由を。
女なんてみんな嫌いだって思ってたのに。
誰のことも好きにならないと思ってたのに…。
「廉くん?どうしたの?さっきからなんか変だよ?」
下から俺の顔を覗き込んだ瞳がくりくりと揺れている。
はぁ…もうダメだ…。
認めざるを得ない。
やけに意味深な瞳が 僕を見つめれば
諦め 恋に落ちていく
King & Prince「Koiは優しくない」作詞:KOUDAI IWATSUBO作曲:KOUDAI IWATSUBO・Kuwagata Fukino
俺は、この女に恋をしている。
俺がどんなに優しくしたって、守ろうとしたって、決して俺の方を向いてはくれない、他の男のことばかり追いかけて、俺の元から去っていったあの女にそっくりな女に。
誰に教えてもらったわけでもないのに
誰もが恋に落ちていく
不意に芽生え育ったざわめき
君の笑顔に触れて揺れている
King & Prince「Koiは優しくない」作詞:KOUDAI IWATSUBO作曲:KOUDAI IWATSUBO・Kuwagata Fukino
続きはこちら。
コメント
読むのが少し遅くなてしまいました
今回のお話とても面白かったです!
花凜ちゃんが面白すぎてずっとクスクス笑っていました
廉くんの恋は叶いそうにないけど、、、
最後どうなるんでしょうね!
楽しみです!!
学校が忙しい中、読んでいただきありがとうございます!
第2章に入って、廉くんサイドの目線になり、ストーリーもぐっと進んできます!
ラストどっちとくっつくかはもうを決めてあります…(๑′ฅฅ‵๑)
また、今日か明日くらいに、次の話をアップできると思います!
楽しみに待ってます!!
ラストはもう決まってるのか・・・w
ラスト、どっちとくっつくかは決まってますが、うまくその方向にストーリーを展開できるかどうか…が課題です。
予告より遅くなってしまいましたが、新しいストーリーを追加しました!
ありがとうございます!!