【SMAP × King & Prince】歌詞小説「君と僕の6ヶ月」 6話「君を好きになって」〜喧嘩の後、10秒のキス〜 (SMAP「オレンジ」恋愛三部作)

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このお話は、SMAP「オレンジ」恋愛三部作をモデルにした音楽小説です。

SMAPの名曲の数々を今の若い子に布教するため、主役はキンプリの岸くんです!

月9「ナイトドクター」で医者役をやっていることにちなんで、このお話の中での岸くんは医大生の役です!

 

私の小説は、曲の歌詞からストーリーを考えている“音楽小説“となっています。

 

前のお話はこちら。

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君を好きになって(美華サイド)

 

あと10秒…。

3、2、1…。

 

角の文房具屋を見つめながら、心の中でカウントダウンする。
するとぴったり合わせて、角から飛び出してくる自転車。

 

ほらきた!

 

梅雨はすっかり開けて、もうほとんど雨は降らない。
向かいのバス停に優太が並んでいる事はなくなったけど、代わりに毎朝、自転車でこちら側のバス停の前を通るようになった。
大学に行くには、このバス停を通らない道のほうが早いらしいけど、わざわざ遠回りして寄っているらしい。

律儀な性格のせいか、いつも1分も狂わず正確な時間に現れる。

 

 

 

「はい、今日の分!」
コンビニのビニール袋を渡すと、「じゃぁ!今日もがんばって!」と元気よく言って、シャッと自転車で走り去る。
頼んでもいないのに、毎日深夜のコンビニバイトでゲットする廃棄処分のおにぎりやらサンドイッチを届けに来るのだ。

 


昼休み。

 

「藍沢さん、ランチ行かない?新しく出来た店、知ってる?奢るよ」
同僚の男の先輩が声をかけてくれる。
「今日、お弁当持って来ちゃってるんで」
コンビニのビニール袋を見せる。

 

「なんか最近、コンビニ弁当ばっかりだね?そんなの買って来なくても、藍沢さんだったら毎日でもおごってあげるよ?」
「ありがとうございます。でも、これがいいんで」
「そう?じゃあまた、何か食べたいものがあったら言ってね?」
同僚はつまらなそうにフロアを出て行った。

 

1人になって、コンビニの袋を開ける。
お弁当やサンドイッチと一緒に、紙が1枚ペラリと入っている。
開いてみると、「今日は、解剖の実験をしました」と言う文字と、へたくそな絵が描いてあった。

確かに、「今度は俺が知らない世界を教えてあげる」って優太は約束してくれた。

でも、こういうことじゃなかったんだけどなぁ…。

 

「小学生の絵日記か」
1人でぷっと吹き出してしまう。

 

 

引き出しを開けて紙をしまう。
引き出しの中には、何十枚もの紙が溜まっていた。

 

 


「ちょっと!優太どこ!?」
コンビニのカウンターにどんと両手をついて、睨み付ける。
いつも優太と一緒に深夜のコンビニバイトに入っているこの子は、確か優太と同じ大学に通っている親友だと言っていたはず。
廉「最近、優太はここのバイト入ってなくて…」

 

キャバクラを辞めてから、深夜のコンビニにはあまり立ち寄らなくなっていた。だから深夜の公園デートもなし。それでも毎朝優太が会いに来てくれてた。
だけどここ数日、優太がバス停に来なくなって、急に不安になった。
そして久しぶりにコンビニに来てみたら、優太はバイトにも入っていなかった。

 

廉「お姉さん、優太に会えなくて、寂しくなってここまで来ちゃったんですか?優太の事、もしかして好きになっちゃったんですか?」
「…っ!なわけないでしょ!」

 

はぁ〜!?この私が!?男に追われたことしかない私が、まさか…!

 

だけど、いつも朝のバス停で、何度も腕時計を見て、毎日時間ぴったりに角を曲がって飛び出してくるあの自転車を待っていた。
ほとんど言葉をかわさずに、コンビニの袋だけを渡して去っていってしまうその後ろ姿を、いつもちょっと物足りなく思っていた。
毎日昼休みに開く、小学生の絵日記みたいな拙い手紙が、1日の楽しみになっていた。
突然会えなくなって、いてもたってもいられなくなって、こんなところまで押し掛けている。

 

これって…私、優太のこと、いつの間にか好きになってる…?

 

 

君を好きになって

心強さを覚えたよ

辛い時も 君がいれば

乗り越えて行けるよ きっと

SMAP「君を好きになって」

作詞:園田有吾、作曲:武藤星児

 

 

 

 

 

 

秘密のバイト(優太サイド)

よっしゃ~~!ついに目標額貯まった!!

 

「短い間でしたが、お世話になりました!」

 

 

2週間ちょっとの超短期バイト。

深夜の倉庫での荷物の積み下ろし作業。

かなり時給が良かったので、この期間だけコンビニの方を休ませてもらって、ガッツリ働いた。

 

「岸さん!今日で終わりなんですね」

朝方、入れ替わりで出勤してくる事務の女の子とは、挨拶プラス一言二言、話すくらいの関係になっていた。

 

「目当てのものは、これで買えそうなんですか?」

 

好きな女の子にプレゼントしたいものがあって、このバイトに応募したことはチラッと話した。

 

「うん、まぁね」

 

ついつい顔がニヤける。

 

「彼女さん、喜びますねぇ~」

からかって、肘でクイクイと小突いてくる。

 

「いやっ、べつに彼女ってわけじゃないよ!俺なんかが付き合ってもらえるような人じゃないんだ。本当に高嶺の花っていうか」

「そうなんですか?でも、こんなキツいバイトして、プレゼント買ってあげて、それで報われなかったら最悪じゃないですか」

「うーん、でも、プレゼントするのは、彼女の気を引きたいからじゃないんだ。俺が、彼女の夢を応援したいんだよね。

彼女、ちょっと落ち込むことがあって。元気になってほしくてさ。」

「元気になって、彼女が他の人を好きになっちゃったとしたら?それでもいいんですか?」

「うーん、そりゃ悲しいけどさ、もし、それで彼女がまた笑ってくれるなら、俺が頑張った甲斐が有るかな!」

「岸さんって、本当にお人好しですね」

 

 

最終日に、給料はまとめて現金で手渡された。給料袋を持って目的の店へと向かう。

 

 

 

やっと手に入れられた…。

喜んでくれるかな?思わずニヤニヤしてしまう。

 

 

なかなか重いその荷物を置きに一旦部屋に帰り、すぐさま自転車で大学へ。

実は今日から試験が始まる。

試験勉強もせずにバイトに明け暮れた挙句、ほとんど睡眠もとっていないのだから、結果はさんざんなものになるだろう…。

 

君を好きになってくれる人がもし現れたなら

ためらわずに言ってほしい

裏腹に強がってた

不意に見せる素顔

いつか 僕だけのモノにしたいけど

SMAP「君を好きになって」

作詞:園田有吾、作曲:武藤星児

 

 

喧嘩(優太サイド)

 

試験を終えてヘロヘロになりながら自転車を走らせていると、道の向こう側に停まったバスから降りてきた美華とバッチリ目が合った。

疲れている体に、癒しの女神の登場だ。

 

 

 

美華がふと顔を上げて、パチリと目があった。向こうも俺の姿に気づいたようだ。笑顔で片手を上げる。

しかし、美華は時間が止まったかのように棒立ちになっていたかと思うと、突如「ぷんっ!」と顔を背けてツカツカと歩き始めた。

 

あ、あれ?なんか怒ってる?

 

 

信号が変わるのを待って道路を渡るころには、美華は次の角を曲がってもう見えなくなりそうだった。

慌てて追いかけ、振り向いてくれないその背中に声をかける。

 

「ちょ、ちょっと待って!どうしたの!なんか怒ってる?」

「別に怒ってないけど!」

 

いや、絶対怒ってるじゃん~~。

 

「あ、あの…俺、なんか悪いことしたかな?って、してるわけないよね。だって最近会ってなかったし」

 

美華がピタっと足を止めて、すごい形相で振り返る。

 

「あんたって、そんな無神経だからその顔でモテないのよっ!バーカ!」

 

そしてまたズンズンと歩き出す。

 

「え?え?何?どうゆうこと?ちょっと待って~!」

 

またピタッと止まって振り返る。

 

「会ってないんだから、何も悪いことしてないですって!?毎日会ってたのに、突然来なくなったら、こっちが心配するとか思わないわけ!?」

 

「え……。ん?あ!もしかして、最近俺が朝会いに行かなかったから怒ってるとか!?」

 

美華はとたんに全身が逆立ったように体全体に怒りのオーラをまとって、顔が真っ赤になる。

 

「は、はぁっ!?なにそれ!?私が優太に会いに来てほしかったみたいな言い方しないでくれるぅ!?別に待ってないから!全っ然気にしてなかったから!」

 

え~~?どっちなの?会いに行かなかったことを怒ってるんじゃないのか?やっぱり女心はよくわからん…。

でも、とりあえずすっげー怒ってる…。

 

 

「あ、そうだ!じゃぁさぁ、これ、俺の電話番号渡しとくよ。何も連絡もせずに突然来なくなって、悪かったよ。一言言っておけばよかったんだけどさ、今までいつでも会えると思ってたから、お互いの電話番号って知らなかったよね。」

 

慌ててカバンからペンと紙を取り出して、自分の電話番号をメモする。美華はやっと立ち止まり、電話番号の書かれたメモを受け取る。

 

「はいこれ!いつでも電話して!」

「…うん」

意外にも素直に受け取ってくれた。

さっきまでの怒りの表情がシュルシュルとしぼんでいくのが分かった。

だから、ちょっと調子に乗ってしゃべりすぎた…。

 

「実は今日から試験でさぁ!めっちゃ忙しくて、朝こっち通れなかったんだよね!それで試験勉強のために、バイトも休んで徹夜で勉強しててさ!」

 

「バイトも休んで?」

 

一度はほころびかけていた美華の口元が、一気にストンと下がった。

 

「私、昨日、コンビニ行ったんですけど!それで廉くん?に、優太が短期で別のところでバイトしてるって聞いたんですけど!」

 

「え!?あ、えっと…あ~、そう、バイトはぁ〜…そうだった!休んでなかった…かな?」

 

しかし、もう後の祭り…。

 

「何が“忙しくて“よ!試験前なのに、徹夜で夜間のバイトしてんじゃん!かわいい女の子とチャラチャラ楽しそうにしてたじゃん!」

 

「え…?かわいい女の子と…?」

 

なんのこっちゃとテンパっている俺を置いて、

 

「私、嘘つく男、大っ嫌い!」

 

プイっと踵を返し、美華は足早に歩きだす。

 

「ご、ごめん…!嘘つくつもりはなかったんだけど、あの…その…」

 

「ついてこないで!!」

 

あまりの剣幕に、俺はそれ以上美華を追うことができなかった。

 

 

留守電(優太サイド)

はぁ~~~。

どうして余計な嘘をついてしまったんだろう。

 

今日から試験だとか、ほとんど寝る間もないほど忙しかった、というのは本当だったのだから、そこで止めておけばよかったのに、ついつい余計な事までしゃべりすぎた。

 

やっぱり”サプライズプレゼント”なんて、やり慣れていないことをしようとして、浮かれていたのがいけなかったのだ。

 

 

途方もない後悔に押しつぶされそうになりながらトボトボと部屋に帰ってきた俺は、留守電のボタンが点滅していることに気付き、再生ボタンを押す。

(※この話は、20年以上前位の時代設定なので、携帯電話はありません)

 

 

「メッセージを2件、再生します…。

 

バーカ!優太のバーカ!帰れって言われて帰るバカがどこにいんのよ!本っ当に大っ嫌い!もうこれからずっとバス停来なくていいから!もう二度と会いたくない!じゃあねっ!!」

 

俺はしばらく呆然とした。

メッセージはたった今、入れられたものだった。さっき渡した電話番号で、美華が留守電を入れたのだ。

 

な、なんだ、なんだ?

別れた後も怒りが収まらなくて、わざわざ留守電にまで悪口を入れてきたのか?

てか、そもそもなんでそんなに怒ってるわけ?

嘘をついたのは悪かったけど、コンビニのバイトを休んで他のバイトをしていたからって、美華が怒るのは意味わかんないし、何も伝えずに朝のバス停に行かなくなったのも悪かったかもしれないけど、そもそもそれだって約束して待ち合わせていたわけじゃないんだから、「明日から行けないからね!」なんてわざわざ言いに行ったら、「別に待ってないし」と冷たく言われる可能性だってあったわけだし…。

美華がそこまで怒る理由が、どうしてもわからない。

 

 

そして続けて流れたもう1件のメッセージが、ほとんどその答えだった。

 

廉「あー、優太?ごめん、ちょっと謝っとかなきゃと思うて。昨日、お前のバス停の女神?コンビニにきたんよ。お前のこと探しとった。そんで、なんでバイトに来てないのかって問い詰められて、他のバイトしとるって喋っちゃったんよね。

場所も聞かれて、今にもバイト先に押し掛けそうな勢いやったから、“バイトが終わるのは朝方だから、今行っても会えへんよ“て伝えたんやけど、“何時に終わる!?“って聞かれて。

あの勢いじゃ、朝、待ち伏せでもしとったんやないかと思って。バイトの事、しゃべったの、まずかった?もし、トラブルになってたらごめ〜ん。じゃあ、また学校で!試験、頑張ろな〜」

 

 

バイト先に来てた…?

そういえばさっき、「かわいい女の子と楽しそうにしてた」とか言ってた。

今朝、バイト終わりに、事務員の女の子と外で喋ってたのを見られてたのか!?

 

美華にプレゼントを買う目標額が貯まったと、ニヤニヤしながら話してた。事務員の子も、「このこの〜!」と、からかって俺を小突いたりしていた。

会話の内容が聞こえなければ、俺があの子にデレデレとして、いちゃついているように見えたかも。

 

「あ、そうや」

 

廉からのメッセージは、まだ続きがあった。

 

「お前、めっちゃ鈍感やから心配なんやけど、彼女がお前に会えなくてコンビニに来たのもそうやけど、もし朝、お前のバイト先まで行ってたとしたら、それって相当なことやで?その意味、お前わかってんの?

試験問題よりも、こっちの問題を先に考えとき。」

 

 

 

今までの俺なら、さっきの美華の態度もこの留守番電話も、そのままの意味で受け取り、「嫌われた。もう挽回は不可能なほどに嫌われた」と頭を抱えていたことだろう。

しかし、美華はヒントをくれている。

さっき、美華は「ついてこないで」と言ったのに、その言葉に従った俺に対して「帰れって言われて帰るバカがどこにいんのよ!」と怒っている。

そして、すぐその後に「もう二度と会いたくない」と言っている。

 

 

考えろ。これは引っかけ問題だ。

美華は「ついてこないで」と言いながら、本当は追いかけてきてほしかった…?

ということは…?

「もう二度と会いたくない」というのは、「また会いたい。ずっと一緒にいたい」ということなのではないか…!?

 

 

俺は留守電の時間を確認し部屋を飛び出し、またすぐ部屋に戻って、朝買った大きな荷物を背負ってまた部屋を飛び出し、公園へと走りだした。

 

君を好きになって

胸に響く切なさ覚えたよ

譲らないケンカの後 ごめんさえ言えないまま

暗い部屋に赤く光る

留守電のボタンを押したら

「一緒にいたいな」

君のひとこと

何度も聞いた…

SMAP「君を好きになって」

作詞:園田有吾、作曲:武藤星児

 

サプライズプレゼント(美華サイド)

「やっぱり、ここにいた」

 

顔を上げると、息を切らした優太が立っていた。

 

「留守電、聞いた」

 

「なら、なんで来んのよ。私、“もう二度と会いたくない“って言ったんだけど?」

 

来てくれてすごく嬉しいのに、裏腹な言葉が口をつく。

 

「さすがに、ちょっとは学んでますよ。女心ってやつ。俺、けっこう理解力と習得力は高い方なんで」

 

「どうしてここがわかったの?」

 

「それは、君と別れてからの時間から留守電が入っていた時間で移動可能距離を算出して…」

 

「あー、はいはい、いいですそれは」

 

そういう難しい答えが欲しいんじゃない。

「美華のことならなんでもわかるよ」とか、そういうことを言って欲しいの。

そんなの優太に求めたって無駄だってわかってるけど…。

 

優太は何だって理屈で話をしようとするけど、人の気持ちってそんな単純じゃないんだから。

 

 

「嘘ついて、ごめんなさい。本当は、短期の集中バイトでめちゃくちゃ忙しかったんです。これ、本当はサプライズプレゼントにしたかったんだけど」

 

優太が差し出したのは、ギターのケース。

 

「もう一度歌ってほしくて」

 

胸にピリリと痛みが走る。

 

 

「これ、買うためにバイト漬けの毎日送ってたの?」

 

「ま、まぁ」

 

優太が褒められた子供のようにはにかむ。

 

「いらないッ!」

 

自分で自分の語気の強さにハッとする。

しかし、それ以上に優太が驚きの表情を浮かべていた。

10秒のキス(優太サイド)

喜ばれるものとばかり思って疑いもしなかった。

ギターをプレゼントしようと思ったのは、本当にもう一度歌を歌って欲しかったからだ。

 

だけど、正直なところ、下心がないわけじゃなかった。

 

このギターを見て、美華がどんなとびきりの笑顔見せてくれるのかと思うとワクワクしたし、喜びすぎて「優太、ありがとう~っ!」なんて抱きついてきたりして…なんて妄想が頭によぎり、鼻の下を伸ばしたことは正直認める。

 

だけど、まさか「いらない」と言われるなんて思いもしなかった。

 

「どうして…?」

「いらないって言ったらいらないの!」

 

なんだよ。人がどんな思いで寝る時間も削って…

 

いや、それは俺が勝手にしたことだ。自分の努力の見返りを、相手に愛情として返してほしいと求めるのはおかしな話だ。

 

 

 

「言わないの?”俺がお前のためにどれだけのことをしてやったと思ってるんだ!?”的なこと」

「…うん。正直、今、喉元まで出かかったけど、やっぱりそれは違うなって思って…。ごめん、勝手なことして…」

 

 

気まずい沈黙が流れる。

 

「嫌なの、もう貢がれるの。

優太は物を貢がないって言ったじゃない!だから優太といる時だけは安心していられたのに。みんないなくなるじゃない!」

 

え…?

 

「お母さんにも、頼んでもいないのに勝手に貢ぎたいって立候補してくる人がたくさんいたの。でも、どの人も長続きしなかった。お母さんがステップアップのために乗り換えていったのもあるかもしれないけど、勝手に無理しすぎて破産して”もう無理だ”って消えていったやつもいたし、”こんなにやってやってるのに、本気で俺を愛してないだろう!?”ってストーカーみたいに縛ってくるやつもいた。それでみんな、いつかはいなくなるのよ!」

 

 

だから、いらないって?

ものを貢いだら、いつか俺がいなくなるから?

 

「違うんだよ、俺は、ただ君の夢を応援したくて…」

「だからそれ!それが貢いでるっていうの!客の親父とおんなじセリフ言わないでよ!」

 

え、えぇ〜…!?

 

「あの…別にこれを受け取ったからって、俺の女になれよとか、そういう意味じゃなくて…。ただ、もう一度、歌ってほしいなって。早く元気になってほしいなって」

「なんで言わないのよ!?」

「へ?」

「“俺の女になれよ“って、なんで言わないのよ!言えばいいじゃない!!」

「いっ、言わないでしょ!!どこのキザ男だよッ!?」

「ふーん、じゃぁもし、私が失恋から立ち直ってまた歌えるようになって、新しく違う人に恋して、その人のために曲作って歌ったりしてもいいんだ?“優太のくれたこのギター“で!」

「うっ…それは…、でも、うん!もし、君がまた恋をして、その人が君を好きになってくれて、それで君が幸せなら。俺は、祝福する!」

 

めちゃくちゃ気持ちとは裏腹な言葉…。

本当は俺だけのものにしたいに決まってる。

 

「あ!じゃあ、これ、クリスマスプレゼントっていうのはどうかな!?」

「今、夏だけど?なんでクリスマスプレゼント?」

「だって、なんでもない時にプレゼントしたら貢いでる感じするし、誕生日も一方的な感じするけど、クリスマスプレゼントなら”交換するもの”だから、フェアな感じしない!?

だから、俺にもください、プレゼント」

「え、何を…?高いものとかやだけど?」

「曲を作ってください。俺のために。そのギターで」

 

 

それならギターを受け取りやすいと思ったし、美華がもう一度歌うことを後押しもできる。

それに…、

クリスマスプレゼントをもらう約束をするということは、クリスマスまで離れずに一緒にいるという確約にもなるんじゃないかって…。

ちょっと図々し過ぎたかな…?

 

 

「優太さ、最近、時々さりげなく私のことを“美華“って呼んでたでしょ!?」

「え…!?ば、ばれてました…?」

 

お?なんだなんだ?いきなり話変わった。

 

「別に前から気付いてたし!君って呼ばれるの、なんかよそよそしいからやだ!」

「ご、ごめん…じゃあ、やっぱり美華さん…」

 

 

「…美華って、呼べば!」

 

 

「だって、名前を呼び捨てで呼んでいいのは、彼氏だけって…」

「だから呼んでいいって言ってるでしょ!」

「はぁ…」

 

 

正式のお許しが出たのは嬉しいけど、なんでいきなり呼び名の話になったんだっけ…?

最初は、無断でバイトしてたことを怒ってて、いや、バイトしてたことって言うよりも、それによって朝、バス停に会いにいかなくなったこととか、バイト先で他の女の子と仲良くしていたことに怒ってて、

それで、ものを貢ぐと俺がいなくなっちゃうから嫌だとか言って拒んでて、

彼氏しか呼んじゃダメなはずの、名前呼び捨てを許可してくれて…

 

 

え…?いやいや、さすがの俺でも、これは1つの答えにたどりついてしまうんだが…

 

「そういうことなら、遠慮なくもらっとく!」

美華が俺の手からギターを奪い取った。

 

 

「ねぇ!意味わかってるの!?クリスマスも、一緒にいてあげるって言ってんの!」

 

「え、えーっと、それは…?」

 

「もぉ~…っ!こういう意味!」

 

 

突然俺の耳元に、美華の細い指が絡まり、その後に柔らかなぬくもりが唇に触れた。

10秒間ほどだっただろうか。

永遠に時が止まってほしいと願った…。

 

10秒だけキス

一緒に過ごす時間は 早すぎるよね…

SMAP「君を好きになって」

作詞:園田有吾、作曲:武藤星児

 

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コメント

  1. 糸吉 より:

    ちゃちゃすいっちさんの歌詞小説大好きです
    廉くんの庭ラジの文字起こしも分かりやすくて 大好きです

    私は学生ティアラなんですが 推しにお金を使えなくて 曲や ラジオも ここで知っています!

    • ちゃちゃ より:

      糸吉さん、コメントありがとうございます!
      そんなふうに言っていただけると、やる気が出ます!
      庭ラジの文字起こし、けっこう放送から日にちが経っちゃうのですが、もっと早くやろうと言う気になります…‼︎(笑)
      そんなにあれもこれもお金は使えないですもんね。そういう方の少しでもお役に立てれば嬉しいです!

      小説のほうも、応援してくださる方がいると、とても励みになります!ありがとうございます(о´∀`о)

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