久しぶりに連載再開です!
岸くんが「ナイトドクター」で医者役やるっていって、岸くん医大生役のお話書き始めたものの、約1年くらいほったらかしていた…(汗)
しかも、やっぱり頭のいい岸くんって違和感ある…(^^;
まぁ、もともとこのお話の構想はあって、それを無理やり岸くん主演で焼き直ししているので、キャラぶれしてるところもありますが、そこはご勘弁を…。
このお話は、SMAP「オレンジ」恋愛三部作をモデルにした音楽小説です。
SMAPの名曲の数々を今の若い子に布教するため、主役はキンプリの岸くんです!
私の小説は、曲の歌詞からストーリーを考えている“音楽小説“となっています。
前の話はこちら
抱きしめあうと瞳が背中合わせ
自分でも情けないと思うくらいに惨めにすがったと思う。
優太「なんで!?急に別れるなんて、嘘だろ!?」
美華の両肩を掴んで、大きく揺らす。
美華は俺の力に抵抗するように顔を背けて、ポツリと呟いた。
美華「私、東京に行く」
その言葉を聞いて、少しホッとした。
そういうことか、別れるって、遠距離になるからってことか。
美華は本気で歌手になる夢を叶えるために動き出すのだ。
そのためには、やはり東京に行かなければならない。
美華は超恋愛体質で、毎日会いたいタイプだから、遠距離なんてとうてい耐えられないと考えたのだろう。
別に俺に対する気持ちがなくなったからとか、そういうことじゃない。
距離の問題さえ解決できれば、別れなくてもいいということだ。
優太「だったら俺も東京に行くよ!」
突然の俺の提案に、美華は一瞬ポカンとする。
美華「は!?何言ってんの!?大学はどうするのよ!?」
優太「辞める」
美華「何言ってんの!?ここまでがんばってきたのに、医者になれなくなっちゃうじゃない!」
優太「だからさ、前にも言ったと思うけど、俺にとって医者になることは、特別”夢”とかそういうんじゃないんだ。
自分の進むべき道がわからなくて、ここまで来ちゃってたけど、今、わかった。
俺は、美華と離れるなんて、考えられない!だから一緒に東京に行く!それなら俺たち、別れる必要なんてないだろ?」
美華「ちょっと意味が分からない…。東京に来て、優太は何すんのよ」
優太「美華のマネージャーになったっていいしさ。俺が適当にバイトとかして生活費を稼ぐから、美華は思う存分夢のために時間使っていいから。あぁ、それがいい!美華だって、バイトしながら夢追うとか大変だろ?お金のことは俺に任せて、歌に打ち込んでもらっていいから。ねっ?いい考えだと思わない?」
美華は頷かない。
俺は焦るように美華を抱き寄せた。
美華と別れるなんて、考えられない。
きつくきつく抱きしめた。
決してこの手を離したくない。
美華は何も言わない。
どんな顔をしているのか気になるけど、抱きしめているので顔が見えない。
そして、美華の頭越しに、ふと夜空を見上げて気付いた。
抱き合っているときは相手の顔が見えない。
お互いに見ている空は、反対だ。
出会ったばかりの頃、ほわほわとした夢を語り合いながら、ベンチに隣同士並んで夜空を見上げた。
それがいつしか、俺たちは一緒に時間を過ごしながらも、背中合わせで別々の夢に向かうようになった。
俺は机に向かい勉強して、美華は俺の背中に寄りかかりながらギターを弾く。
お互いに別々の方を向いているけど、お互いに夢に向かって頑張っている。
そんな時間を幸せに感じていた。
”ちょっと休憩”と称してベッドの中で抱き合う時間は最高に幸せだけれど、いつも頭の片隅に時間の制限を感じていて、こうしている間に周りの奴らに置いていかれるのではないかという焦りがあった。
きっと美華も同じだったのだろう。
俺たちは背中合わせになって抱き合っても、結局同じ方向を見れない。
だって進もうとしている方向が違いすぎる。
同じ未来に向かって進むことはできないのだ。
二人で公園のベンチに並んで流れ星を見たことや、コンビニバイトの休憩中にポテトチップスを一緒に食べたこと。
あの頃に戻りたいけど、戻れない。
美華にもう一度夢を追ってほしいと願ったのは、他でもない俺なんだ。
思わず抱き寄せた時
ふいに気づいた
抱きしめあうと 瞳が背中あわせだね
うまくいかない 胸が痛い
両手で君を感じてるのに
二人は違う 空をみている
抱きしめるたび すれ違ってた
二人は違う 夢を見ていた 季節(とき)の中で
並んで おんなじ空を見上げた頃に
時を戻して も一度はじめたいけれど
こんなにきつく抱いているのに
最後の言葉 君がつぶやく 腕の中で
SMAP「うまくいかない」作詞:小倉めぐみ、作曲:安田信二
美華「私、そんな優太、好きじゃない…」
ちょこっと歌詞解説。
「うまくいかない」は夢に夢中になっている彼氏、それを寂しいと不満に思っている彼女、という、今回のお話とはちょっと男女が逆??という設定の曲です。
でも、普通は男が「夢!夢!」と彼女ほったらかしで、彼女は「もっと私を見て!」と恋愛第一主義になることが多いので、一般的にはこの曲の歌詞に当てはまるカップルのほうが多いんじゃないかな。
「毎日夢に近づく それを誰より君に喜んでもらいたかった」って歌詞があって、彼だって彼女のことを一番好きで、自分が夢に近づいていくのを一緒に喜んでもらいたいと思ってるんだけど、彼女はそれによって彼が遠くに行っちゃうのが嫌なんですね。
うんうん、そういうシチュエーションってけっこうあるかも。
「抱き合うと違う空を見てる」ってのは、言われて「ほんとだ…!」とハッとしました。
でも、「同じ方向を見ながら隣を歩く」なんていうのはビジネスパートナーでいいんであって、愛し合う二人は”抱き合う”仲でもいいと思うんですけどね。
でも、若い時は夢か恋かどちらかしか取れない時期っていうのがあるような気もします。
昔、優香が、高校生の時に付き合ってた大好きだった彼氏と、「二人でいると、ずっと二人で向き合って、相手のことしか見れなくなって、お互い以外は他に何もいらないみたいになっちゃって。それじゃダメだね、私たちダメになるねって、話しあって、泣く泣く別れた」みたいな話をしていて、なんとなくそれが強烈に印象に残ってて、ちょっとモデルにしたところがあります。
でも、高校生でその決断できるって、なんて大人なんだ~…。
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