謝罪会見の木村の不可解な行動。
その意味にやっと気づいた中居。
それはメンバーを守るため、木村がついた精一杯の嘘だった。
この作品は、SMAP解散の裏にある真相を妄想して書いたフィクション小説です。
中居サイドストーリー
迂闊だった。
俺は、何もわかっちゃいなかったんだ。
あの時の、木村の決意を・・・。
謝罪会見に向かう木村は、やけに堂々としていて、迷いがなかった。
今後の俺たちがどうしていったらいいのか、全然わからなくて俺は頭がこんがらがっていたのに。
できることは、会見で喋らされていることが俺たちの本当の言葉じゃないんだと、ファンに伝えることだけだった。
だから、俺たちはあんなふてくされた死んだような目をして、会見に臨んだのだ。
発言の自由を奪われたけど、心まで奪われたわけじゃないと。
それなのに木村は、事務所の用意した段取り通りに動いていた。
なんで?何を考えている?
まさか、自分への仕事が保証されれば、吾郎や剛、慎吾の仕事をなくされてもいいなんて開き直ったわけじゃないよな?
いや、木村には家族がいるんだ。
俺たちと一緒に心中して欲しいなんて、願っていたわけじゃない。
だけど、あいつなら、俺たちを見捨てるようなことは決してしない。
なんとなくそう信じてしまっていたから。
事務所の用意した白いネクタイを迷わず締めて、やけに堂々と上を向いてセンターに立ったあいつの行動の意味がわからなくて、ただただ頭が混乱していた。
だけど、会見の直後から世間の風向きが変わり始めた。
俺たちの死んだような表情から、これは事務所に言わされているんじゃないか?とファンはすぐに気づいてくれた。
しかし、木村だけが堂々と生き生きとした表情で言葉を発していたため、木村が「メンバーを裏切って、事務所に寝返った!」とバッシングされ始めたのだ。
下3人を切り捨てて俺と木村だけを救い上げようとしていた事務所の策略は、全く違う方向へと転び始めていた。
まずは、俺がその策略には乗らずに吾郎たち側についたこと。
そして、会見でおかしな態度をとってしまったこと。
事務所は木村をSMAPに残留を決意させた「ヒーロー」に仕立て上げるつもりだったのに、全く逆の結果になってしまった。
俺がした行動のせいで、木村が悪者にされてしまう結果になるなんて。
俺は、全く予想していなかった。
「これでいい。これで、いいんだ」
そう自分に言い聞かせるようにスタジオに入っていった木村を思い出し、俺はハッとする。
まさか・・・?
木村は、最初からこうなることを狙っていたのではないか?
、
会見直前、吾郎はいつも通りポーカーフェイスで少し表情が読みづらかったが、剛と慎吾は完全に顔が死んでいた。
いつもの俺なら
「テレビだぞ!そんな顔してんじゃねえ!」
と喝を入れているに違いなかった。
だけどあの会見の前、俺は木村に頼まれて一緒に上に直談判に行った。
そこで「3人を瀕死の状態で生かせておくことに意味がある」なんて酷い言葉を聞かされ、俺は頭に血が上って、冷静な判断力をなくしてしまった。
あまりの八方塞がりな状態を突きつけられ、俺は絶望して何も考えられなくなってしまった。
だから、剛や慎吾に喝を入れるどころか、俺が一番死んだ表情でカメラの前に立ってしまった。
その様子が、「4人をいじめる木村」の構図に映ってしまうことなんか、これっぽっちも気づきもせずに・・・。
そうだ、それが木村の狙いだったんだ。
あいつは、自ら自分だけが悪者に映るように仕向けたのだ。
「木村っ!!」
俺は、楽屋に入るなり木村に掴みかかった。
「お前、何考えてんだよ!?一人で俺たちを救ったつもりか!?」
木村は、ニヤっと笑いピースサインをする。
「ふざけんなよ!ふざけんな・・・っ!!下手な芝居しやがって!!」
「その下手な芝居にまんまと騙されたのは、お前だろーがよ」
木村は、すごく安堵したような表情で笑う。
自分の立場がこんなにもヤバくなっているというのに。
「今や世間は中居たち4人が可愛そうって意見でいっぱいだ。独立を反対していたファンたちも、もう事務所から出させてあげなよってムードになってる。もうどれだけイメージ落とす記事出されようが、世間は胡散臭いと感じて信じないはずだ。お前たちは世間を味方につけたんだよ。もう怖がることはない。中居、3人を連れて事務所を出ろ」
「だから!!お前はどうなるんだよ!!俺が事務所を出なかったのは、自分の先行きが心配だったからじゃない!お前を置いていけなかったからだ!わかってるだろ!?」
「俺がここまで嫌われ者になったら、一緒にいないほうがSMAPのためだろ?お前は、どんなことがあってもSMAPを守るんだろ?ほら、俺たちってSMAPの父母によく例えられるじゃん?そしたら下の3人は子供だろ?親同士が離婚したって、子供だけは守る!どんな親だってそうするだろ?」
俺はぐしゃぐしゃに泣いていた。
「これでいい。これで、いんんだ。」
そう何かを決意したように呟いたあの時の木村は、最初からこうなることを願って・・・。
なんとしてでも自分から俺たちを引き離すために・・・。
なんで俺は、あの時木村の決意に気づいてやれなかった?
本当に迂闊だったんだ。
俺は、うつむいたままただただ嗚咽を漏らす。
すると、俺の頭の上から木村の低く落ち着いた声が降ってきた。
「俺たち、解散しよう」
このお話のもとにあったエピソードはあんまりないのですが、一応シリーズものなのでコチラに書いています・・・↓
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