「世界中の全部から、俺が木村を守る!」
あの時の中居の約束が、今の俺を強くする…。
これは、SMAP中居正広と木村拓哉のつとぷ小説です。木村語りです。
イメージソングは木村拓哉ソロ曲「ずっとずっと」です。
前後編の全2話です。
報復
スマスマに園子温監督がゲストでやってきた日のこと。
「うちの木村が何だってぇ~!?」
中居は撮影前から相当な戦闘態勢で、指をポキポキ鳴らしながらスタジオに入った。
スタジオに登場した時から心なしかオドオドとした園子温監督に、営業スマイルを向ける中居だが、その笑顔が逆に怖い…。
ちょっとトークに間が合ったりするのも、妙に緊張感が走る…。
事の発端は園子温監督が自身の映画の記者会見で、俺を批判をしたこと。
真意が曲げられて記事にされてしまったそうなのだが。
いたたまれなくなって、自分から俺との因縁話を話題に出した園子温監督に
「俺もイライラしてますよ!」
とついに中居が砲弾開始!!
その後も中居の攻撃はとどまることを知らない。
なんとか釈明しようとする監督に
「結局(木村の)名前出してんじゃん!」
「(映画の)ヤマトは木村じゃなくてもよかったってことですか!?」
「よく今日スマスマに来られましたね!?」
「SMAP全員スッキリしてないですよ!」
と全く攻撃の手を緩めない。
監督はもうたじたじで、自分の発言を相当後悔していただろう…(笑)
芸能界で一番怒らせたら怖い男、中居正広。
そして、彼の目や耳に一番入れてはいけないもの、それはSMAPメンバーの悪口だ。
俺は別に誰に何を言われようとあまり気にならないのだが、中居にとっては俺や他のメンバーのことを他人にとやかく言われることが絶対に許せないらしい。
中でも特に俺のことを。
撮影後…。
慎吾「全く監督本当にタジタジになってたよね」
吾郎「ちょっとかわいそうなくらいだったよ」
木村「でもちょっとウケるな(笑)」
中居「ウケねーよ!怒っってんだよこっちは!お前は優しすぎるんだよ!なんで簡単に許しちゃうんだか」
中居はまだ腹の虫がおさまらないらしい。
木村「いや、許すも何も。別に最初から腹も立ててねーし」
中居「なんでだよ!?好き勝手言われて、胸糞悪いだろ!」
木村「だって…ずっと昔の約束を忠実に守ってくれてる奴がいるから。俺すげー守られてるから、怒ったり傷ついたりする必要ないじゃん?」
剛「え?なになに?昔の約束って」
木村「”世界中の全部から、俺がお前を守…」
中居「あっ!わぁ~~~っ…!!」
中居が大声で俺の声をかき消す。
そして、俺のシャツをグイっと引き寄せて小声で囁く。
中居「あんな青臭いセリフ、こいつらの前でバラしたら恥ずかしいだろ!!」
木村「やっぱ覚えてんじゃん(笑)」
俺はニヤッと中居を見る。
慎吾「な~にまた二人でイチャついてんの?ねぇ、昔の約束って何の話?」
慎吾が割り込んでくる。
中居「うっせー!お前には関係ないんだよ!」
中居が慎吾の頭をボカッと殴る。
慎吾「いって~!中居くんさぁ!木村くんにはあんなに優しいのに、俺に対する態度ひどくない!?ひいきだ!そーゆーのひいきって言うんだぞ~っ!」
「やーい、やーい」と指をさしながら、小学生みたいに慎吾が怒る。
剛「よしよし、大丈夫か慎吾?」
剛が慎吾の頭をなでなでしながら、慰めている。
吾郎「まぁ、中居くんと木村くんにしかわからない話っていうのがあるんだよ」
吾郎が「深くは詮索しないよ」とアイコンタクトを送ってくる。
殴り合いの喧嘩の真相
まだ20歳くらいだっただろうか。
俺は中居にボコられたことがある。
世間では「中居と木村が殴り合いの大喧嘩をしたことがある」と認知されているようだが、声を大にして言いたい。
俺は一発も手を出していない。
殴らなかったというか、殴れなかったのだ。
その頃、舞台中でホテルに滞在していたのだが、夜部屋のドアがノックされて開けたら、突然中居が俺の髪を掴み殴りかかってきた。
俺はまだまだとがっていた時期だったし、いろいろとハチャメチャやっていた。
グループとしてアイドルとしての方向性が定まらない時期だったので、下のやつら(森、吾郎、剛、慎吾)は不安になっていたらしい。
ちょっと俺のことを怖がっていたところもあったらしい…。
俺に殴りかかりながら部屋になだれ込んできた中居に
「みんなお前のことが嫌いなんだよぉ~~っ!!」
と言われ、ひそかにショックを受けたことを覚えている…(笑)
それでもその瞬間は頭にカーっと血が上り
「はぁ~っ!?どうゆう意味だよっ!?」
と半ば俺に馬乗りになっている中居に殴り返そうとした。
だけど、その拳は勢いをなくしてゆるゆると床へと落ちた。
中居が泣いていたからだ。
「俺はーっ!お前が誰かに悪く言われるやなのっ!自分のことを言われるよりずっとやなのっ!ぜぇ~ったいやなのっ!
外の奴に何か言われたらすっげームカつくけど、そいつボッコボコにして終われるじゃんか。
でも、かわいい弟たちを殴るわけにはいかないだろう?
だから、あいつら四人を不安にさせるようなことはもうするな。もし今後もそういうことがあれば、俺はまたお前を殴りにくる!
でもいいか?お前を殴っていいのは、この世界中でただ一人、俺だけだ。本当に殴るのも、言葉で殴るのも、していいのは俺だけだ。
だから、今後誰にもお前のことを悪く言わせない。そんな奴がいたら、俺がそいつをフルボッコにしてやんよ!世界中の全部から、俺がお前を守る!」
中居は俺の手をギュッと握った。
「だからお前はお前の思うように進めばいい。
もし、その道が間違っていると感じたら、俺がまたお前を殴りに来るから。
そうじゃないのにお前の進む道を否定する奴がいたら、俺は片っ端からそいつらを殴り倒してやる!だから安心して進め!」
それから俺は、中居に殴られたことは一度もない…。
母親みたいな存在
俺が誰かに悪く言われたら、俺よりも心を痛め、
俺が悩むときは、一緒に悩み必ず俺を導く答えをくれて、
同じものを見てともに笑い、お互いに相手が幸せでいることを自分の幸せのように思う。
自分のことでは泣かないくせに、人のこととなるとめっぽう涙もろいこいつを、もう俺のために泣かせたくないと思った。
なんか、母親みたいだな、とふと思った。
だから、その後この話題を振り返った時には
「中居の顔が母親に似ていたから殴れなかった」
と答えておいた(笑)
だって次の日、俺ばっかり顔にあざを作って舞台に登場して、俺の方が喧嘩が弱いと思われたらしゃくだから。
実際に俺の母親に顔が似ているわけではないけれど、こんなに自分を大切に思ってくれているやつの顔を殴れないと思ったのし、ウルウルの涙目になったクリクリのお目目で俺を見つめる中居の顔が可愛すぎて殴れなかったというのも本音だ…。
「ごめん…」
俺は中居の手を握り返して、小さな声でつぶやいた。
きっとこの先も、
どっちかが悩んだり迷ったりするときには、必ず一緒に寄り添って、
何か不安になったら、必ず話し合うことを決めごとにして、
どっちかが間違ったことをしたときには、分かり合うまで喧嘩して、
何かが変わりだすときには、必ず二人で話し合って、周りの声に流されない強い絆を持ち続けて。
こいつが泣いた時には、涙が乾くまでそばにいて、
必ずこの手を離さずにいよう。
そして落ち着いたらまたいつものように肩を叩き合って笑い合えるような、
そんな二人でいたい…。
その後、この喧嘩は伝説となって語り継がれていくこととなるのだが、喧嘩について
「中居と分かり合えた」
と感傷的な感想を言った俺とは引き換えに
「舞台中なのに顔を殴って悪かったと思っている」
という何ともビジネス的回答をした中居の冷静さは、俺より数倍大人で、
「やっぱりお母さんみただな」と思った(笑)
必ず君の手を離さずにいよう
幸せな時でも 君が悩む時も
僕が悩むような そんな二人でいよう
木村拓哉「ずっとずっと」作詞作曲:Ryoji
「二十歳の約束②~Style episode.0~」へ続く。
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