中居と二人、この焼肉屋にいると、13年前の結婚会見を思い出す。
ずっと昔から変わらないつとぷの絆。
いつも木村を支え続けた中居の物語を木村目線で描いています。
木村サイドストーリー。
今、俺は中居と飯を食っている。
こいつと二人きりで飯を食うなんて、もういつ以来だろう。
俺たちは“背中合わせの二人”なんて表現されることが多い。
そのため“不仲説”もたびたび囁かれるが、背中合わせでいようと決めたのは、実は俺たち自身だった。
二人でSMAPを守る、強くする。
そのためお互いに違う方向からSMAPを客観的に見ていこうと昔話し合って決めたのだ。
だから、俺たちは近づきすぎない。
“背中合わせ”
これが、俺たちの最適な関係。
だけど今俺は、中居と“向き合って”飯を食べている。
15年前。
あの日も同じように俺たちはここで向き合って飯を食べていた。
突然電話で呼び出してきたのは、中居の方だ。
こいつはいつもそうなんだ。
俺が辛い時、すぐに気づく。
俺は、基本的に人に弱さを見せたくない。
辛い時だからこそ頑張ってしまう。
下の3人は素直にそんな俺を信じてしまう。
“強い俺”を信じて、頼りきってくれているところがかわいい。
しかしこいつだけは・・・。
こいつの目は騙せない。
多分世界中で一番俺のことをしっかり見てくれている奴、それが中居だ。
たくさんの熱心なファンにはいつも感謝しているけれど、それでもみんなごめん。
どんなファンよりも、一番の俺の理解者はいつだって中居だと俺は思っている。
「お前さ、俺に何か隠してることあんだろ?」
中居のまっすぐな眼差しが突き刺さる。
いつまでも隠しておくわけにはいかない。
「今付き合っている彼女が、妊娠した。もう堕ろせない時期まで来ている」
俺ってやつは、いつもこうだ。
欲しいモノがたくさんあって、それを全部手に入れたいと願ってしまう。
まだまだSMAPにとって、恋愛スキャンダルは禁物だ。
それなのに、一番引っ張っていかなきゃいけない俺がこんなこと・・・。
俺は、彼女依存症なところがあって、いつも彼女がいなきゃ生きていけない。
そうすると、彼女も大切。SMAPも大切。
二つも大切なものがあると、同時に守りきれなくなってしまう。
だけど、中居は違う。
こいつは一番大切なものをたった一つに決められる強さを持っている。
いつだって、SMAPを守ることしか考えてないやつなんだ。
それでいて、SMAPがピンチに陥るような局面にあっても、メンバー一人一人の気持ちを一番に考えてくれる。
森の脱退のときだってそうだった。
俺は、今までも散々わがままやってきた。
前の彼女のことも、俺は特に隠していなかった。
「彼女はいます」とインタビューで答えて、事務所から大目玉をくらったこともあった。
その時も中居が間に入ってなだめてくれた。
でも、今度こそ中居に見放されるかもしれない。
チームのエースがデキ婚だなんて、シャレになんねーだろ。
そもそも俺がSMAPのエースになれたのだって、中居がバラエティ班のポジションにシフトチェンジしてくれたという見えないアシストがあったからだ。
デビュー当時は、やっぱり一番派手でクリクリの目をしたアイドル顔の中居をセンターにという意向が強かった。
喋りだって演技だって、なんだって俺より器用にこなす男だ。
本当は俺なんかよりもずっと。
だけど、幸運なことにドラマが当たって俺に光が差し始めたときに、それを見てすぐに中居は自分の立ち位置を変えた。
「お前が輝くためなら、俺は裏方に回ったっていい」
そう言って、あえて笑いをとるようなキャラにチェンジして、かっこいい役回りを全部俺に譲り俺を押し上げてくれた。
目立ちたがりやと誤解されることも多いが、実はあいつはそうゆうやつだ。
それなのに、俺が今中居のくれたこの地位を潰そうとしている。
今度こそ、中居に愛想を尽かされても仕方がない。
「俺が、一緒に社長に話に行ってやるよ」
えっ?
うつむいていた俺は、顔を上げた。
すると、そこにはニッコニコの中居の笑顔があった。
「おめでとう。幸せになれよ」
「いや、そんな簡単に・・・。無理だろ。今俺がデキ婚なんてしたら、SMAPの今後に関わる。みんなに迷惑がかかる。それに、慎吾だってずっと真剣に付き合っている人がいるだろ?でも、SMAPのために結婚はできないってちゃんと自制してる。それなのに俺だけそんな・・・」
「じゃあ、結果出せ」
「結果?」
「ドラマ決まってんだろ?それで視聴率30%超えだ。そしたら事務所も世間も何も文句は言えねえはずだ!それを条件に、俺が事務所に話つけてやるから」
中居は、俺の手を取る。
「俺が絶対にお前を守る。お前が大切と思うものを、一緒に守るから」
俺は、この笑顔に応えたい。
いつだって、ギリギリのところで耐えている俺を支えてくれるこの太陽みたいな笑顔のために。
だから、俺はまだやれる。
絶対に、俺は自分の力でSMAPを、そして俺を信じてくれたコイツを守ってみせる・・・!
しかし、事務所に話を通して公式に発表する前に、スポニチにすっぱ抜かれてしまう。
「キムタクデキ婚!!」
あれは、ツアーの日だった。
周囲は騒然とし、俺は少しの間の記憶を失っている。
あの日、俺を心配してツアー会場に駆けつけた母親が、後で電話でこう語っている。
「あんたを見つけて、大丈夫?って声をかけても反応がなくて、しっかりしなさいと手を握ったら、びっくりするくらいあんたの手が冷たくて・・・。私もどうしたらいいのかわからなくて途方にくれていたら、中居さんが来て私の手を力強く握ってくれたんだよ。それで“大丈夫です。木村のことは、俺が全力で守りますから!!”って言ってくれたんだよ。あんた、あの人のことは絶対に大事にしないといけないよ」
中居が隣りに来てくれてからは、俺は平常心を取り戻し記憶を取り戻している。
緊張はしたけど、ステージからみんなに結婚宣言をすることもできた。
後ろでは中居が見守ってくれていた。
その後行われた記者会見には
「お前は一人で大丈夫だよな?」
と声をかけてくれた。
森の脱退の時には、一人で記者会見に臨むなんて不安で仕方のなかった森のために、事務所の「メンバーは記者会見に出てはいけない」という命令に背き乱入した中居。
その言葉は、俺に対しては面倒見てあげなきゃという思いが強い下の4人とは違う対等な信頼感を持ってくれているという証拠で、嬉しかった。
俺が記者会見から帰ると、メンバーみんなが待ってくれていた。
そして、みんなで焼肉を食べに行った。
「かんぱーい!木村くん、結婚おめでとー!」
あの時のビールの味は、忘れない。
ちょっぴり涙の味がした。
それがこの店、この角の個室。
あの時と同じ場所だ。
結婚宣言後すぐに放送されたドラマ「HERO」は、全ての回が30%を超える大ヒットドラマとなった。
ヒットの勝因は、俺の演じた久留生検事のちょっと変わったキャラクターだろう。
実は、役作りでイメージしたのは他の誰でもない中居だ。
それに気づいた視聴者は、どれくらいいるかな(笑)
通販グッズを試しているときのまったり感と、正義のこととなると目の色変えて突っ走るところ、誰かの気持ちに寄り添えるところ。
いつもはおちゃらけた顔して全然そうゆうところ見せないのに、ここぞって時に必ず助けてくれる俺にとっての“ヒーロー”。
それが中居だ。
こんなこと、ぜってー本人には言ってやんねーけどな!
そして、今回もまた二つの大切なものを選べないでいた俺を助けてくれる。
「俺が絶対にお前を守る。お前が大切と思うものを、一緒に守るから」
気づいているか?13年前と全く同じ言葉で、俺を救ってくれたことを。
お前は、あの頃からずっとずっと同じ気持ちで、SMAPを、俺を、大事に思ってくれている。
いつも甘えてごめん・・・。
いつかお前が泣くことがあったら、絶対に俺が助けるから。
俺と中居の関係を、みんなはいろんな形で表現しようとする。
“友情”?“信頼”?“絆”?“理解者”?
どれも合っているけど、なんか足りない。
そうだ、やっぱり“愛”だろ、“愛”。
この言葉しかない。
こいつは世界一大きな愛を俺にくれる存在。
こんなに大きな愛に溢れた男を、俺は他には知らない。
ギリギリのところでいつでも戦っているキミが
「まだやれる、ありがとうね」って笑う そんな姿に
心の底から最上級の尊敬とエール送り続けるよ
キミの願いが叶いますように
出典:SMAP「Fine,Pease!」作詞:佐原けいこ、作曲:日比野元気
「頑張って」そういう言葉に耳を塞ぎたくなり
「今だって十分やってる、だからもう認めてくれよ」と
そう言って叫びたいことも何回もあったけど
「もういい」って投げ出したくなる雨な日もあったけど
本気の優しさ ジーンと胸を突くから
そんなあなたの思いに応えることが叶いますように
出典:SMAP「Fine,Pease!」作詞:佐原けいこ、作曲:日比野元気
僕は僕の人生において起こって欲しいこと
全て起こさせて見せるのさ
I will 自分の力で
出典:SMAP「Fine,Pease!」作詞:佐原けいこ、作曲:日比野元気
このお話のもとになった本当にあったエピソードはコチラ!↓(エピソードがたくさんありすぎたので、記事を分けました)
【本当にあったエピソード3話①】背中合わせの2TOP 中居と木村ステキエピソード盛りだくさん!
【本当にあったエピソード3話②】絶頂期だった木村拓哉がテレビで「彼女います」宣言!詳細レポ
3話のイメージソングとなっているSMAP「Fine,Peace!」についての曲紹介はコチラ!↓