シリーズ最後の作品は、海ちゃんのお話!
本編では主人公をめぐって、平野に惜敗したれんれんと海ちゃんにも幸せを!と言うことで、まずはれんれんをハッピーエンドにしたので、今度は海ちゃんにも素敵な恋を… ♡
でも内容は、かなりと拍子もない設定のヤバめな話!
海ちゃん、失恋してやけっぱちになっちゃったの~!?
私の小説では、キンプリの曲の歌詞をモデルとしてストーリーを構成しています。
今回のテーマ曲は「フルタイムラバー」です。
フルタイムラバーって、そういう意味だったの…!?
こちらのお話はシリーズ作品「 koi-wazurai」のスピンオフ作品となりますが、単体で楽しめる内容となっています。そんなに長くはならない予定です。(一応4話くらいでの完結を目指しています…)
時系列としてはこのお話よりももっと後↓
高校卒業して大学生になった海ちゃんの話です。
なかなかハッピーエンドになれない海ちゃんのために、スピンオフ2作目です!
人生初の一目惚れ
「あれ?新人さん?」
カシャーン!
「わ、わぁっ…!すいません…っ!」
居酒屋のバイトを始めて、初日に早速グラスを割るミスをしてしまったのは、目の前に現れたその男の子が、あまりにも美形すぎて、さらに私のタイプのど真ん中だったからだ。
「失礼しまっしたーっ!」
客席に向かって威勢のいい声を飛ばし、ほわほわの栗色の髪が、私の足元に沈む。
「あ、すいません…!」私も慌てて、その場にしゃがみ飛び散ったガラスの破片を集めようとする。
パシっと手首をつかまれた。
「いいよ、怪我するから」
長めの前髪の下から、大きな瞳と長いまつげが覗く。
腰からのエプロンを巻き、無地の白のTシャツをまくしあげて、ノースリーブみたいにしている。首元からゴールドのネックレスがチラリと覗いていて、浅黒い肌に映えている。
い、色気…。
「え、でも、私が割っちゃったので…」
「じゃぁ、ほうきとちりとり取ってきてくれますか?」
にこっと微笑んだ瞬間、完全に私の目には、少女マンガでよくあるキラキラ~っと舞い散る粒子が見えた気がした。
やばいやばい…。
落ちる、…ていうかもう完全に落ちたかも。
“一目惚れ“なんて、初めてだった…。
「あやちゃんあやちゃん!やばい!すごいイケメンがいた!私…一目惚れした!」
ちょっと手が空いた隙を見て、今日は2階のフロアを担当しているあやちゃんのところに、急いで駆けつける。
このお店は2階は宴会場になっていて、予約の時間になるまではお客さんがいないのでちょっとした話ができるのだ。
「えっ!?一目惚れ!?海ちゃんに!?」
「海ちゃん…ていうの、あの子?」
「うん、隣の大学のうちらの一個下だよ」
「年下かぁ~!うん、でもそんな感じだったかも!可愛かったもんなぁ~。
てか、一目惚れした相手誰か言ってないのに、なんでわかったの?」
「そりゃ、この店に入って一目惚れするって言ったら海ちゃんでしょ。今までだって何人の女の子が海ちゃんに惚れて、辞めていったか」
そっか~、やっぱそりゃモテるよね。うんうん、それはあの顔だもん。モテないはずがない!
ん?でも「辞めていった」ってなんで?
「でもさぁ、舞が一目惚れって驚きなんだけど。舞、一目惚れ断固反対派じゃん?顔だけで好きになるなんてありえない!て」
そう、今まで私は一目惚れなんてしたことない。
時間をかけて人となりを知っていかなきゃ、その人の本当のことなんてわからないし。
「でも、でもね!海ちゃんは、ただ顔がタイプってだけじゃないの!
なんかあのほわぁ〜っと出ている癒しオーラっていうか、滲み出る優しさ?ミスした新人へのスマートなフォローとか、そして極めつけはあの笑顔!やばくない~!?
でもま、顔もめちゃくちゃタイプなのは事実なんだけどね!ど真ん中!もうあの外国人みたいな二重幅とかやばい〜!ほんとかっこいい~!好きすぎる~!
てか、あやちゃん、なんでもっと早くバイト紹介してくれなかったの!?あんなかっこいい人いるならもっと早く…」
「あ、ちょっと、舞…」
あやちゃんの視線が私の肩越しに通り過ぎてるのに気づき、そっと後ろを振り返りギョッとする。
両手に宴会準備用の荷物を抱えた海ちゃんが立っていた。
き、聞かれたーーっ(ㅇㅁㅇ;;)
「海人せんぱーい!ちょっと来てくださーい」
同僚のバイトが呼んでる声がする。
海ちゃんはニコッと微笑み言ってしまった。
「あやちゃんやばいよ、今の絶対聞かれたよね!?ヽ(´Д`;≡;´Д`)ノ」
「まあ、大丈夫じゃない?海ちゃん、そんなの慣れっこだよ。それに…海ちゃんはやめといたほうがいいよ」
「なんでよ、人がせっかく運命の人に出会えたっていうのに!」
そりゃあんなかっこいい人に恋したって、見込みはないし、辛い思いするのはわかりきってるかもしんないけどさ!
でも、好きになっちゃったんだから、もうこの気持ちは止まらないよ!
告白
「あやさん〜、海人先輩、、あ〜たお客さんから呼び出しっすよ!」
さっき海ちゃんを呼んでいたバイトくんが、ニヤニヤしながら戻ってきた。
見れば、この子もなかなかのイケメンだ。でも、海ちゃんのほうが断然タイプだ。
「マジで!ちょっと、ここから見えるんじゃない!?」
窓を開けてひょっこりと3人揃って顔を出すと、ちょうど真下に、海ちゃんとヒラヒラのモテ系ワンピに巻き髪ロングの女子大生っぽいかわいい女の子が向き合っているのが見えた。
「あ、あのっ…!月曜日空いてるって聞いたんですけど!付き合ってもらえませんか…!?」
「あー、ごめん、月曜日ねぇ、実はついこないだ埋まっちゃったんだよね。ほんとごめん。また空いたら、ねっ?」
「えぇ〜〜、そんなぁ〜…。ずっと空くの待ってたのにぃ」
女の子が、大失恋でもしたかのように両手で顔を覆い泣き始める。
「ほんとごめんね…。先週までは空いてたんだけど。こればっかりはタイミングで…」
「こらー!海人どこだー!?忙しいのに何やってるー!」
中から店長の呼ぶ声がして、「本当にごめんね」と彼女も肩にそっと触れてから、海ちゃんはなぜか嬉しそうに店の中へと入っていった。
彼女はまだ涙を拭っていた。
「大袈裟だなぁ、デートの約束断られたくらいで。次の月曜日とか他にも空いてる日とかを聞けばいいのに。ねぇっ?」
窓から出していた顔を部屋の中に戻し、そう言うと、あやちゃんとバイトくんが顔を見合わせて呆れたように眉を上げ首を振る。
「いや、そういうことじゃないんだよね」
「えっ、どういうこと?」
そこからのあやちゃんの話は、衝撃的過ぎるものだった。
日替わりの恋人
「海ちゃんにはね、日替わりの恋人がいるの」
舞「へっ!?」
ひ、日替わりの恋人ぉ~~っ!?
「月曜から日曜日まで1人ずつ全員違う、7人の恋人が。誰か1人が撤退すると、その曜日が空いたという噂を聞きつけた海ちゃんのファンが、新たに立候補する。
そういうシステムなの」
じゃあ、さっきのお客さんが「月曜日空いてるって聞いたんですけど」というのもそういう意味…?
「だけど順番待ちしている子はいっぱいいるから、空きが出たとなったら、すぐに立候補しないと、他の人に取られちゃうってわけ」
「え、早いもん順なの…?」
「みたいね」
「タイプじゃなくても、彼女にしてくれるの?」
「そういうこと。ブスでもデブでもかなりの年上でも、とにかく告白した時に空きがあればオッケーしてくれるって話」
は、はぁ~~っ!?
なんだそれ!?じゃあ、私もちょっと惜しかったんじゃん!さっき「先週までは空きがあった」って言ってたから、バイトに入ったのが1週間早ければ私も……じゃなくってぇ〜〜!
なんっなんだっ、その恋愛観は!?
舞「てか、それ、恋愛じゃないよね!?ただのセ(ピー)だよね!?その7人の彼女たちは、それでいいのかな!?」
あや「ただ7分の1でもいいから彼女にしてほしいっていうぐらい好きってことなんじゃない?普通だったら絶対に手の届かない人が、その変なシステムでハードル下げてくれてるおかげで、彼氏になってくれるって言うんだから」
舞「え~~でもさぁ、本気で好きだったら尚更辛くない」
あや「そうなんだよ。だから最初は、”せめて1日でも”って申し込んできた子が、やっぱりそういう関係に耐えられなくなって去っていく。だから、定期的に空きが出るわけ」
舞「あ、もしかして、さっきバイトの子が何人も海ちゃんに惚れて辞めていったっていうのも?」
あや「そ。入ってきた殆どの子が海ちゃんに惚れてそういう関係になって、結局それが耐えられなくなって別れて、バイトも辞めていった。今残っている女の子は、海ちゃんの本性を知って、ドン引きして最初から海ちゃんの沼にハマらなかった少数精鋭だけだから」
そっか、だからあやちゃん、こんなに私好みのイケメンがいること、今まで黙ってたんだね。
そんなやばいやつとは知らずに、まんまと一目惚れしたとか騒いで私、恥ずかしっ。
あや「店の子にも手を出してどんどん辞めさせちゃうから、店長的にはそれは困ると思ってるんだろうけど、でも海ちゃんのおかげで女性客半端ないからね。」
あやちゃんがぐるりと店を見渡す。
確かにちょっとした高級店に似つかわしくない若い女の子たちが半数以上を占めている。
私が大学に入って、引越し先のアパートまでタクシーで向かった時に、タクシーの運転手さんが、「ここは地元の名店だから、アルバイトしてちょっとお金が貯まったら来てみるといいよ」と教えてくれたのがこのお店だった。
大学生が飲み会に使うチェーンの低価格の居酒屋とはちょっと違う。
あや「こうやって若い女性客が集まれば、自動的におじさん客も集まるから、店長的にはウハウハだよね。失うものよりも得るものの方が断然大きいってこと」
まぁ、今の話を聞く限りじゃ、店の女の子に手を出すっていうか、海ちゃんの方が手を出されてるってことになるのかもしれないしねぇ。
まぁ、何はともあれ、バイト初日に一目惚れしたと思ったその男は、決して関わってはいけないヤバいやつだと判明し、私の恋はあっという間に終わった…。
クズ男
「疲れた?」
カウンターごしに、海ちゃんがにょきっと顔を覗かせる。
入ったばかりの新人は忙しい時間帯で戦場のようなホールではまだ戦力にならないので、カウンターの中でドリンク作りに徹するように言われているので、私はさっきからカウンターの中に張り付きでせっせとドリンクを作っていた。
「うん、めっちゃ忙しい!」
「ね。俺は、だからこの仕事好き」
「えー?ひっきりなしにあちこちから呼ばれてしんどくない?」
さっきから見ていると、海ちゃんはけっこうベテランで仕事ができるらしく、店長や板さん、お客さん、方々からひっきりなしに呼ばれていた。
「なんか、自分が求められてる気がするじゃん?」
そういうもんかな?
私なんて怠け者だから、仕事なんて少ない方が楽でいいって思っちゃうけど。
「でも、初日にこの忙しさはしんどいよね。そんながんばってる舞ちゃんに、いいもの持ってきたんだ!当店名物、かぼちゃのプリン!通称”かぼP”!」
「え?どうしたの、これ?」
「厨房でちょっと失敗したやつとか、時々もらえるんだよね。」
海ちゃんはその場にしゃがみこみ、「しゃがんでしゃがんで!」というようにジェスチャーをする。
カウンターの外をキョロキョロと気にしながらも、戸惑いがちにその場にしゃがみ込む。
「ほら早く早く!パクッといっちゃって!」
「い、いいの〜!?ありがとう(´>ω<`)♡」
正直お腹ペコペコだったし、本当に嬉しい!
パクリと口に入れると、濃厚な甘みが口の中に広がる。疲れた体にたまんない!その甘みを味わって目を閉じる…。
するとふんわりと唇に暖かさを感じた。
ん?
ゆっくりと目を開けると、ちょうど目の前で、長いまつげがふぁさぁっとゆっくり持ち上がっていき、美し過ぎるくっきりとした幅の広い二重線が折り込まれていくのが見えた。
間近で見ると余計に、くっきりとしたキラキラお目目で、にっこりと微笑んだ海ちゃんは、さも当然のご褒美をくれたかのような口調で言ってのけた。
「俺のこと好きなんでしょ?」
………え?
……………は!?
「カシスレモンお願いしまぁーーっす!…あれ?ドリンクー?」
「あっ!は、はいっ!ドリンクいますー!」
注文の声に慌てて立ち上がると、海ちゃんも続いて立ち上がる。
「海人、ドリンク入ってたのかー!忙しいんだから、ベテランはホールに出てこい!」
「はーい!」
忙し好きな海ちゃんは、店長の呼び出しにまた嬉しそうに答え、カウンターから出ていった。
その背中を見送りながら考える。
ちょっと待って、君、君〜?
君は、7人の日替わりの彼女がいるんだよね…?
それで更に8人目の私に、今キスしたんだよね…?
ク、クズ男じゃん…っ!?
続きはこちら!
「koi-wazurai」の小説一覧はこちら!
徐々に挿絵追加中!
岸くん回↓
じぐいわ回↓
海ちゃん回↓
岸くん回↓
岸くん回↓
岸くん回↓
岸くん回完結!第1章完結!↓
第2章始まり!海ちゃん、平野くん回↓
平野くん回↓
平野くん回↓
れんれん回↓
れんれん回↓
れんれん回↓
平野くん回↓
平野、廉、三角関係回↓
平野、廉、三角関係回↓
平野、廉、三角関係回↓
平野、廉、三角関係がついに完結!↓
アフターストーリー
①はわけあって、別の小説サイトに載せてます。
スピンオフ作品
れんれん
海ちゃん
コメント