二階堂ふみ版ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」では2話3話で前後編で描かれた「ソウルケイジ」。
竹内結子版では最終回まで3話分かけて描かれました。
こちらでは、主に竹内結子版のドラマ「ソウルケイジ」のあらすじのネタバレを書いていきます。二階堂ふみ版と原作小説との違いも!
目次
- 1 原作小説、竹内結子版、二階堂ふみ版ドラマ「ストロベリーナイト~ソウルケイジ~」設定の違い
- 2 「ソウルケイジ」竹内結子版、二階堂ふみ版ドラマのキャスト(俳優女優)
- 3 「ソウルケイジ」のあらすじが簡単にわかるパパっとネタバレ!~二度びっくりする!~
- 4 三島耕介には高岡賢一を殺す動機があった?
- 5 高岡賢一と内藤和敏の入れ替わり
- 6 中川美智子の過去
- 7 高岡の左手首と戸部のDNAが一致したトリックは?
- 8 姫川は最初の聞き込みでホームレスの小屋で高岡に会っていた
- 9 結局高岡賢一の保険金を三島耕介や内藤君江は受け取れたのか?
- 10 日下(遠藤憲一/神保悟志)の父親としての顔
- 11 姫川玲子の母親との確執
- 12 「ソウルケイジ」竹内結子版ドラマオリジナルシーン
- 13 「ストロベリーナイト~ソウルケイジ~」の感想
原作小説、竹内結子版、二階堂ふみ版ドラマ「ストロベリーナイト~ソウルケイジ~」設定の違い
原作の小説と竹内版ドラマはほぼ設定の変更がないが、二階堂版ドラマはなぜか意味もなく会社の名前などを変えている。(わかりにくくなるからやめて欲しいんだけど)
一応最初に確認しておこう。
主な設定変更はこの3つ。
- 悪さをしている会社→中林建設(小説・竹内結子版ドラマ)・坂林建設(二階堂版ドラマ)
- その下請け企業で、悪さをするための隠れ蓑的なポジションの鳶職の会社→木下興行(小説・竹内結子版)・鴨下総業(二階堂ふみ版)
- 内藤和敏の親子の事故→交通事故(小説・竹内結子版)・爆発事故(二階堂版)
その他、年齢などの細かい設定変更はあるかもしれません。
ここからの説明は、基本的には原作の小説の変更でしていきます。
「ソウルケイジ」竹内結子版、二階堂ふみ版ドラマのキャスト(俳優女優)
竹内結子版 | 二階堂ふみ版 | |
高岡賢一 | 石黒賢
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寺脇康文
|
三島耕介 | 濱田岳
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堀井新太
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中川美智子 | 蓮仏美沙子
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山谷花純 |
戸部真樹夫 | 池田鉄洋
出典:日本タレント名鑑 |
波岡一喜
出典:日本タレント名鑑 |
「ソウルケイジ」のあらすじが簡単にわかるパパっとネタバレ!~二度びっくりする!~
※わかりやすくするために相関図を入れますが、「サーガ」版で写真は入れました。説明は小説に基づいているのでちょっとわかりにくいですが、すみません…。
ポイント1:左手首のみの発見”死体なき殺人事件”
事件の始まりは、切断された左手首のみが発見されたこと。
- 指紋から左手首は高岡賢一のものだと判明。
- 高岡賢一の営む工務店のガレージが血の海になっていた。
- 左手首とガレージの血のDNAが一致。
- その出血量から考えると到底生きているはずはない。
よって、被害者・高岡賢一の殺人事件として捜査開始。
この物語のサブタイトルが”遺体なき殺人事件”となっているのもそのため。
ポイント2:相次ぐ転落死と保険金詐欺疑惑
この物語は高岡賢一と三島耕介の本当の父と息子のような固い絆と愛情を描いている。
物語の始まりは三島耕介の父親が借金を苦に飛び降り自殺したこと。
その後、高岡賢一は身寄りをなくした三島耕介に対して、本当の息子のように世話を焼いてきた。
しかし、この自殺にはからくりがあった。
- 貧困者に多額の金を貸す。
- 追いつめられたところで木下興行と言う鳶職の会社に入社させる。
- 足場から転落したことを装い、飛び降り自殺をさせる。
- その保険金を奪い取る(受取人は木下興行になっている)
これらを手引きしているのは、中林建設(二階堂ふみ版ドラマでは坂林建設)の戸部真樹夫。
一応補足…
- 戸部は中林からの出向で木下興行(二階堂版では鴨下総業)の保険担当をやっていた。
- 木下興行は中林建設の下請け会社で、悪さをする隠れ蓑として使っていた会社。(鳶職なので、転落死させるのにちょうどいい)
- ちなみに戸部は、暴力団 田島組の組長の愛人の子。中林建設は田島組のフロント企業。
三島耕介の父は、このからくりの被害者。
他にも被害者多数。
のちに中川美智子の父も被害者となる。
また、中林建設社員の高岡賢一はこのからくりを知っていた。
知っていて父の自殺を止めなかったのは、耕介にとっては裏切りなのでは…?
今まで親切な顔をしてそばにいたからこそ、よりショックは大きい。
ポイント3:三島耕介(濱田岳/堀井新太の彼女・中川美智子(蓮佛美沙子/山谷花純)と戸部真樹夫(池田鉄洋/波岡一喜)の関係
- 中川美智子の父親(2ヶ月前)
- 三島耕介の父親(耕介が小学校5年生の時)
↓
木下興行の現場から転落死。
同じ保険金詐欺のからくりの被害者。
真相を知っている耕介の方から美智子にアプローチしてふたりは出会った。
戸部は美智子の父親の保険金を全て搾取。
さらに学費や家賃を出してやる代わりに、美智子に体の関係を強要。
それを知った耕介が美智子を守るために戸部に反撃。
耕介は、警察には美智子の関係を恋人と言っていたが、実際はまだそこまでの関係ではない。が、耕介は美智子のことを守ってあげたいという強い思いと、好意もある。
なので恋人という表現も嘘ではない。
高岡賢一には彼女として紹介していた。
ポイント4:高岡賢一(石黒賢/寺脇康文)と内藤和寿の入れ替わり
実は高岡賢一の本当の正体は内藤和敏。
13年前に入れ替わりが行われていた!!
【13年前の内藤和敏】
内藤和敏は家族でドライブ中に交通事故を起こして妻を死亡させ、当時5歳だった息子の雄太を全身まひ、意識障害の重体にしてしまった。
この時内藤和寿は建設作業員で、中林建設の現場に入っていた。
【13年前の高岡賢一】
同じ頃、本物の高岡賢一は、中林グループの不動産によって地上げにあっていた。(中林グループは高岡家にある土地一体にマンションを建てたい)
土地を引き渡さない高岡家は、ひどい嫌がらせにあっていた。
高岡賢一は精神を病んで自殺。
土地の持ち主が死んでしまうと、その土地が手に入らなくなり困る中林グループ。
※ここの土地を受け渡さない理由については小説と竹内ドラマで少し違いがあったが、あまり重要なところではないので割愛。
ふたつの事情を把握している戸部真樹夫が、内藤和寿と高岡賢一の入れ替わり案を実行。
【偽・高岡賢一】
本物の内藤和敏は、自分が死んだことにして保険金を得て、その保険金を姉に受け取らせ、息子の入院費に当ててもらった。
自分は、偽の高岡賢一として生きる。
【偽・内藤和敏】
本物の高岡賢一の自殺遺体は、内藤和敏のものと細工して処理される。
※遺体確認は身内が行うため、戸部が姉の君江に事情を説明して嘘の証言をさせた。身内が「間違いありません」と言えばDNA鑑定などは行わないため、遺体が別人でもバレない。
【入れ替わりトリック】
内藤和敏→保険金のために死にたい!
↑
利害の一致!
↓
高岡賢一 →自殺。でも、中林建設は高岡賢一が死んだことを隠したい!
↓
- 本物の高岡賢一の遺体を高岡の家から運び出し、内藤和敏のものとして中林建設の現場に運ぶ(内藤和敏は中林建設の現場で働いていたため)。
- 内藤君江(姉)に話を通し、遺体確認で嘘の証言をさせる。
- 内藤君江に保険金を受け取らせる。
- 本物の内藤和敏に、高岡賢一の戸籍を譲渡する。
- 偽・高岡賢一を中林建設に入れて、職の面倒も見る。(自分の支配下に置く)
その後、高岡賢一は何人もの人が戸部に仕組まれて飛び降り自殺に追い込まれていくのを見ていたけど、どうすることもできなかった。
三島耕介の父の時もそう。
戸部には反抗できないし、自分も今も息子への仕送りを続けているから、借金まみれの人を助けるお金なんてないしね…。
しかし、戸部にとっても高岡賢一は自分の悪事を全て知っている人物。
保険金詐欺の罪を暴露されそうになって高岡を殺した、という動機が成立する。
ポイント5:本当は殺された人→戸部真樹夫、殺した人→高岡賢一だった!
そして、ラストに明かされる驚愕の真実!!
なんと、今までは
- 殺された被害者→高岡賢一
- 高岡を殺した犯人→戸部真樹夫
と思われてきたけど、実は逆だった!
高岡賢一が戸部を殺していたのだ!
美智子を戸部から解放してあげたい耕介は、戸部をボコボコにするが、そのことで戸部は耕介にも目をつける。
高岡は、戸部から耕介と美智子を守るために、戸部を殺害したのだ。
さらに耕介と再び自分の本当の息子・内藤雄太に保険金を残してやるために、死んだのが自分だと偽装する必要があった。
そのために、高岡は自分の左手首を自ら切り落としたのだった!
その後、ホームレスから小屋を買い、戸部の頭部の遺体を小屋の下の土に埋め、切断した左手の治療もせずにいたため、一人小屋の中で絶命した…。
- 高岡賢一が内藤和敏と入れ替わっていた!
- 殺されたのは高岡賢一ではなく、戸部真樹夫だった!
ここからはストーリーの中でちょっと分かりづらかったポイントについて詳しく書いていきます。
三島耕介には高岡賢一を殺す動機があった?
最初は視聴者に、耕介が高岡賢一を殺したのではないかと思わせるミスリードがあったと思う。
確かに父親が死んで傷心の子供に「お父さんの友達だったんだよ」と言って近づいてきた人がそれからもずっと親切にしてくれて、心を開いていたのに、実はその人物が全てのからくりを知っていた!父親が死ぬ時に何も言わずに見ていた!と分かったら、かなりの裏切りだと感じると思う。
(このからくりを知っている人が高岡に話をしているところを、耕介に聞かれてしまったため事実が耕介に知れてしまった)
でも高岡の罪は
「お父さんを止めることができなくて、すまなかった」
ということで解決している。
あくまでも実行犯は別の奴で、高岡は”傍観者”としての罪、というスタンス。
この時はまだ高岡がなぜ戸部に反抗できないのかという事情を耕介は知らないはずだが、意外とあっさりとこの謝罪を受け入れている。
本当ならもっと告発とか、できることあったんじゃない?って私なら思いそうだけどなぁ。
でも、高岡が直接保険金詐欺グループとグルだったわけではないし、借金していた父の責任は父の責任だし、たまたまその会社にいて真実を知っていたってだけでそこまでの裏切りではないと捉えられたのだろう。
耕介の父親は自殺するために木下興行に入って、ほとんどすぐに飛び降りているため、この時点では高岡と耕介の父は友達でも何でもなかったのだから、必死に自殺を止めたところで借金を助ける義理もなければ、高岡にそんな経済力もなかったわけだから。
小説では、まぁまぁ止めようとしていたし。自殺の直前に父親の耕介への愛ある言葉を聞いていて、それを後に耕介に伝えてあげたのも高岡。
高岡賢一と内藤和敏の入れ替わり
高岡と内藤の入れ替わり。ここが一番のポイントであって、けっこうわかりにくいところ!
姫川が、高岡の知り合いに聞き込みをしていくうちに、人物像が全然重ならないことに違和感を覚えていくところが面白い!
最近の高岡賢一の知り合い→
誰に聞いても「色男」とか「イケメン」とかいう表現をする。
昔の高岡賢一の知り合い→
ひょろっとしてていじめられるようなタイプ(←→大工やっていてガタイの良かった高岡賢一のイメージと重ならない)
この歳でずっと独り身で全く女っ気もなさそうだったのが不思議なほど、高岡賢一の印象はみんな共通して「色男」だったので、それを石黒賢さんがやっていて本当にはまり役だった!
大工だしお金もないということで、小汚くしていたけど、それでも十分イケメンだったから!
石黒賢さんって最近では犯人役とか嫌な役もすごくやっているけど、やっぱり人情派の役やらせたらいい味出すなぁ~!
人情派で子供思いっていったら、寺脇さんもかなりあり!
でも「色男」具合はやっぱり石黒賢だ。
中川美智子の過去
中川美智子は、お金のために戸部に自分の体を捧げなければいけなかった。
この物語のテーマは”父性”だが、もう一つのテーマとして”貧困”が描かれている。
まっとうに生きたいのに、貧困のためにどうにもこうにもできなくなっている人間たち。
自分の大切なものを守るため(高岡賢一は自分の息子、中川美智子は美容師になるという夢、それからアパートを今すぐ出てけと言われているので目先の生活も守る必要があった)ダメだとわかっていることに手を出すしかなかったやるせなさ。
そう、この作品は本当にやるせないんです!!
中川美智子が戸部からの暴力に怯えて、大きな物音などに敏感になっている様子、キョドっている感じ、暗さ、蓮佛美沙子さんは演技派なのですごくリアルに演じていました。
大きな物事に対して過敏に反応してしまうという症状は、姫川が高校生の時にレイプされた直後にも同じ症状が出ていたため、姫川は美智子が何かしらの暴力を加えられていることに直感で気づきます。
ドラマでは姫川は自分の過去を美智子に打ち明け、逆に美智子に真相を打ち明けさせています。
小説では姫川が自分の過去を打ち明けるというシーンはなかったけど、逆に美智子から聞いた真実を調書に残さず、美智子の人権を守ろうとする姫川の気遣いが描かれていました。
ストロベリーナイト事件でも犯人のエフが父親から性的虐待を受けていたことで姫川に同調したことが事件の結果を大きく変えた。
今回も戸部が美智子に肉体関係を強要していたことが、高岡が戸部を殺さなくてはいけない直接の引き金となった。
その他映画化された「インビジブルレイン」でも、やはり性的虐待が話の核となったストーリーになっています。
そういうネタばっかりで、女性としては読んでいてかなりしんどくなるんだけど、姫川玲子シリーズにとって姫川のその背景はすべての作品に通じてくるものなので、どうしても省けないネタでもあるんですよね。
とにかく小説の方では戸部という人間が最悪で、美智子に対する暴言(体のこと侮辱したりとか)が本当にクズで、耕介がボコボコに殴っちゃった気持ちも分かる。
あんなクズに出会いさえしなければ高岡も耕介も、お金はなくてもひっそりと幸せに暮らして行けたのにと思うと…。あ、でも戸部がいなかったら高岡と耕介は出会っていなかったんだけど。
高岡の左手首と戸部のDNAが一致したトリックは?
このトリックはドラマ内でも結構分かりやすく説明してくれていたので簡単に…。
高岡は自分の左手首を、ビニール袋に入れた戸部の血液に浸しておいた。
左手首の切断面から戸部の血液が左手首に浸透していたため、切断面から採取したDNAは戸部のものだった。
※冒頭で橋爪管理官が科捜研をせっついたという描写があり、急いで作業させたためこのようなミスが生まれたという偶然の産物でもある。
姫川がこのトリックに気づき、指先の方からDNAを採取してもらい再鑑定を行なったところ、DNAの不一致が認められた。
高岡に特別なDNAの知識があったとは考えづらく、素人だからこそこんなすぐバレるような危ういトリックを利用したと考えられる。
でもそこがまた切羽詰まった状況で、子供のために必死になった親が正常な判断をできなくなっている感じが伝わってくる。
このストーリーは知能犯による難しいトリックを解いて「お~!」となるのではなく、 どうしようもなく馬鹿で間違っていて盲目的な無償の父親の愛を描いているからこそ衝撃的で感動的なのである。
姫川は最初の聞き込みでホームレスの小屋で高岡に会っていた
最初の方のシーンで姫川たちがホームレスの小屋に聞き込みに行くシーンがあった。
ひとつだけ離れたところに小屋があり、姫川らが中を覗いたがかなりの異臭がしたため早めに退散。
小屋の主のホームレスは具合が悪いらしく、ほとんど話を聞けなかった。
実はこれが瀕死の状態の高岡だった。この時点ではまだ生きていたのだ!
ラストシーンでホームレスが高岡だと気付いたのは、井岡の手柄。
ホームレスの小屋は川のこっち側には一つだけ、川の向こう側にはたくさんあった。
ホームレスの仲間からのけものにされていたホームレスが一人寂しく川のこっち側に住んでいたが、高岡はそのホームレスに200万円を渡し、小屋を譲ってもらった。
大金を手にしたホームレスは川の向こう側に渡り、金をばらまくことで他のホームレスの仲間に入れてもらった。
ホームレス達が最近急に羽振りが良くなったこと、ホームレスの一人が「自分を売った!(金をもらって、高岡に自分の小屋と素性?を売ったという意味)と言っていたという証言などに井岡が目をつけて姫川に連絡。
だけど姫川と耕介が駆けつけた時にはもう高岡は一人息絶えていた。
このシーンは本当に切なくて号泣した。
高岡は耕介にもらったマフラーを巻いて、満足そうな安らかな表情をして死んでいたから。
やり方は間違っていたかもしれないけど、父として愛する息子を守り通したのだ。
高岡にとっては死んで悔いなし!という感じ。
ちなみにこのマフラーのエピソードは小説になかったのでびっくり!
高岡の黒くなった遺体の首にマフラーが巻かれていたことで涙腺が崩壊したのに〜!?
このマフラーは一瞬で高岡の耕介への愛を物語る、親子の絆を象徴する大切なアイテムだと思っていた。
高岡は何も言わずに耕介の前から姿を消したけど、このマフラーを見て耕介は瞬時にすべてを悟ったはず。
自分への大きな大きな愛を。
ちなみに原作では、高岡はまだ耕介が小さい頃に一緒に遊園地に行った時の写真を握りしめて死んでいた。二階堂版ドラマではこっちでしたね。
それにしても姫川たちが生きている高岡に会っていたということで、あの時気づけていれば…と本当に悔やまれる…。
結局高岡賢一の保険金を三島耕介や内藤君江は受け取れたのか?
意識があるまま自分の左手は電動ノコギリで切断するなんて考えただけでも恐ろしい常軌を逸した行動とも言える。
高岡賢一がここまでしたのは、耕介や自分の息子である雄太に保険金を残してあげたかったから。
だけど戸部を殺してしまった以上、今後自分が死んでも保険金を残すことが出来なくなってしまったと考えて、なんとか自分が死んだことにはできないかと細工したのである。
実際に高岡賢一は左手首からの出血と、治療しなかったことでのウイルス感染で死亡してしまったのだが、この死亡が確認されたことで保険金は下りたのだろうか?
生前に殺人を犯したことがバレてしまったので、保険金が下りなくなってしまったのではないのかな?
犯罪を犯したことで保険金を受け取る権利を剥奪されるかどうかはよく知らないけど、高岡がそれを危惧して自分が死んだように細工したのだから、そうなのかなあと。
でもドラマでも小説でも、その後耕介や内藤君江が保険金を受け取れたのかどうかという説明はなかった。
もし事件の真相が解明されてしまったことで保険金が受け取れなかったのだとしたら、高岡があんなに痛い思いをしてまでムダ死ににしたのかと思うと本当にやるせなくて…。
13年前に偽装して受け取った保険金も底をついてきて、今後も雄太の世話をし続ける姉の君江は困るだろうから、それだったら生きて働き続けて月7万円の仕送りを続けてあげた方が雄太のためだったし、高岡自身もこれからも耕介と一緒に過ごす生活を守れたのになぁ。
そのためには戸部殺しを完璧に隠蔽しないといけないけど。
でも死ぬよりは良かったんじゃないかなと思う。
妻と息子の人生を奪ってしまって、それでも自分だけ生きているのは死ぬよりつらかったかもしれないけど、耕介に会えたことでやっと生きる意味や喜びを再び感じられた高岡だったからこそ、自ら死ぬことを選んでしまったこの結末は本当に本当に悲しかったです。あぁやるせない、本当にやるせない…。(この感想で何回やるせないって言ってんだろ私…)
日下(遠藤憲一/神保悟志)の父親としての顔
姫川と敵対する日下刑事の役は、竹内結子版では遠藤憲一さん、二階堂ふみ版では神保悟志さんが演じている。
私の中では今のところエンケンさんの圧勝かな。生真面目で愛想がなくて何を考えているかわからない感じがしていたのに、このソウルケイジのエピソードでは、息子を心配する意外と家族思いな一面が描かれていて、エンケンさんの得意とする”ギャップ萌え”を見事に表現していた。
日下は、今回の捜査中、家庭では息子がいじめにあっているという問題を抱えていて、ちょくちょく妻から電話で親身に話を聞いていた。
事件が解決した際には、「息子がいじめに耐えかねて爆発して学校でトラブルを起こしたらしい!」と言って、慌てて家に帰る様子が描かれている。
これ、やっぱりエンケンさんだから出せた味じゃないかなぁ~。今回の神保さんバージョンにもこのエピソードあるかな?
姫川玲子の母親との確執
この作品は”父性”がテーマとなっているため、姫川の父親のエピソードも入っている。
玲子は高校生の時の事件の後、犯人のことが憎くて「殺したい」と思うようになっていた。
人を殺したいと考えるなんて自分がおかしくなってしまったのではないかと、自分に恐怖を感じていた。
しかしある夜、玲子の父親がキッチンの包丁を握りしめて「殺してやる殺してやる」と震えているのを玲子は目撃する。
それを見て、「そうか、これは当たり前の感情なのか」と玲子は救われた思いだった。
さらに、竹内結子版ではソウルケイジのエピソードを最終回に持ってきていること、内容が父と子供の”親子愛”を描いている作品だったことにより、ずっと描かれてきた玲子と母親との確執の雪どけも一緒に描いている。
※ちなみに以下のエピソードは、原作の小説では「ストロベリーナイト」の事件中に起こっていること。
- 母親が倒れて入院。
- 玲子が襲われた事件のことを「自分がその日留守をしていたからだ」とずっと自分を責め続けてきたこと。
- 玲子の事件のことがあるから、「結婚結婚」と母親がうるさいこと。
- 親戚から玲子の結婚についてずっとプレッシャーをかけられていて、その心労がたたって今回倒れたこと。
「ソウルケイジ」竹内結子版ドラマオリジナルシーン
ということで、ドラマと小説と両方見て、私がめちゃくちゃ感動したシーン。
- 日下の「子供を思う父親ほど不器用な生き物はいない」というセリフ
- 高岡賢一が耕介にもらったマフラーを巻いて死んでいたシーン
- 高岡賢一の左手がが息子の病室に飛んで行って頬を撫でたシーン
この三大号泣シーンが全てドラマオリジナルシーンだったのです!
映像化が原作を超えてくるパターンてあんまりないのでびっくりしました。
竹内版「ストロベリーナイト」制作陣は、本当に演出がすごくセンスあったと思います。
やっぱり竹内版「ストロベリーナイト」は名作だなあと改めて思いました。
セリフとかは二階堂版のほうが原作にかなり忠実だったけど、なぜだろう…。全然竹内版の良さに追いつけていないんだよなぁ。
やっぱり姫川と日下、姫川とガンテツのいがみ合ってる関係性が全然出てないし、日下の化け物感やガンテツのゲス感も足りない。普通に仲良しに見える。
亀梨君はセリフなさすぎて存在感なさすぎ。姫川と出会ったばっかの設定に変えられちゃってるから、あの姫川&菊田の感じも当然出せないし…。
「ストロベリーナイト~ソウルケイジ~」の感想
高岡の遺体と思っていたのが本当は戸部だったとか、高岡がそもそも内藤と入れ替わっていたとか、ちょっとトリックが難しいっていうのも見ごたえあったけど、やっぱり最後の自分で左手を切り落としていたっていうところの衝撃がすごすぎて…。
父の愛、執念、すごいなと。
三島耕介は、父親に保険金のために自殺されて、父親代わりだった高岡にも同じようなことをされて。2度も父親の自己満足によって一方的に守られた形になってしまった。
確かに、高岡が自分の左手首を自分で切り落とすっていう覚悟はすごいんだけど、戸部の血に左手首を浸けておけば、切断面からとったDNAが戸部のものになるっていうトリックはずさんすぎる。実際、指先のほうからとったDNAで真実はバレちゃったし。
そんなすぐバレることに自分の命を懸けるなんて、考えが薄すぎるとも思うけど、それが最後の日下の言葉で全部回収されているのかな~と思う。
日下は、愛するものを守るためには、確かにもっと別な方法があったのかもしれないと認めながらも
「人間ってそんなに利口じゃない。無条件で、ただただ守ってあげたい、ただただ愛している、そう思っている時の父親ほど不器用な生き物はいなくてな。自分勝手で、かっこ悪くて、上手く抱きしめることもできない。気持ちはあふれるほどあるのに、できない…」
と語っている。これは日下の自分の息子に対する思いである。
いつもはロボットみたいに一つ一つ事実確認をこなし理路整然と捜査を進め、感情で推理をする姫川のやり方に反発している日下だが、この話では日下のすごく人間らしい部分、温かい父親の部分が描かれている。
ちゃちゃ
高岡もまた、本当に自分勝手で不器用な愛情だったかもしれないけど、本当に溢れるほどの愛を耕介にも自分の息子にも持っていたんだよな。
石黒賢さんの演技すごく良かったし、二階堂ふみ版では寺脇さんか、こっちもいいな。
「ストロベリーナイト」ってグロい作品ってイメージが強いけど、この「ソウルケイジ」は本当に温かくて切ない丁寧な心理描写の作品。(でも切断された左手首とか、戸部の遺体をバラバラにするとか、グロい描写はあるので注意)
私は、とっても好きな作品でした。姫川玲子シリーズの中で一番好きかも。小説止まらなくて、2日で読み切った!