完全新作!Doll続編になります!
というか、Dollが「Seasons of Love」の続編だったので、続続編ってことになりますね。
Dollでの悲しい終わり方からどうしても前に進めなかったのですが、あの悲しい出来事から8年後のお話…。
~シリーズ紹介~
高校生編(前編)
高校生編(後編)
続編・再会編

「2番テーブル、生2つです!」
カウンターを覗き込むように声を放つと、「うぃー!喜んで!」と威勢の良い掛け声がかえってくる。
廉があんなことになってから、私は咲人と一緒にずっと実家に住んでいた。
経済的にもその方が助かるということもあったけれど、それよりも両親に逆らえないから、という理由が強かったように思う。
両親、特に母親は、咲人と離れるのをとても嫌がった。
小さな町だ、私のした事で起こった不幸、そのせいで、両親達は近所の人達から、後ろ指を指され本当に辛い思いをさせてしまった。
そして何より、咲人から父親を奪った。咲人に一番辛い思いをさせた。
そんな大きな十字架を背負いながら、親の希望に反発することなんて不可能だった。
あの小さな町の小さな部屋の中で、息を潜めて暮らす、それが自分のした事への贖罪のように思えた。
転機が訪れたのは、咲人が中学生になるタイミングだった。
咲人は、小学校の途中からサッカーを習い始め、それがメキメキ頭角を現し、中学生になったら、強豪のジュニアユースのチームに入りたいと言い出し、見事セレクションに合格したのだ。
実家からは通えない距離だったので、咲人と二人で家を出ることとなった。
今は二人で質素なアパート暮らしを始めて1年と少しが経った。
私は近くの定食屋で働いている。
最初は咲人が学校に行っている昼間だけ働くつもりだった。
しかし、チームの練習が始まってみると、平日は週に三度は、チームの練習が夜9:00過ぎまであることが分かった。
土日もかなりの確率で、遠征が入る。
チームのバスで行ってくれるので、送迎なしなのがありがたいが、月謝以外にも、遠征費用がかかるということもわかった。
咲人が練習でいないのならば、昼間だけではなく、夜も働ける。お金はいくらでも必要だ。
幸い、うちの店は夜は居酒屋になる。
昼と夜、平日と土日、咲人のスケジュールに合わせて、柔軟にシフトを入れてもらえるのは、すごく助かっている。
仕事は疲れるし暮らしは質素だが、今までの実家で暮らしていた時よりも、気持ちは楽になっていることは明らかだった。
自分の罪の大きさを考えれば、楽になんてなってはいけないのかもしれないけど、それでもやはりホッとしている自分がいた。
実家を出ると決めた時には、経済面で不安があったが、良い職場に恵まれたと思っている。
これからもずっとここで働いていきたいと思っている。
しかし、最近はちょっとした悩みがある。
「三番テーブル、焼き鳥盛り合わせお願いします!」
「うぃー!
花凛さんのためなら、喜んで」
元気な掛け声の後に、カウンターから身を乗り出しながら、少し声を抑えて変なことを付け加えて言ってきたこの子。
最近入ってきたアルバイトの男の子、27歳だというけど、もう少し若くも見える。
「…お願いしまーす」
「もぉ~、花凛さん、今日も冷たいっすね。でも可愛いっす!」
なんだか知らないけど、こういった絡みをひてくるのだ。
10歳近く年上のおばさんに、一体どういうギャグなのだろう?
ニヤリと片方の口角を上げ振り返りながら、厨房に去っていく。
その顔を見ていると、なんだかクラクラとめまいを起こしそうになる。
だって、この子…
「花凛さん、はい、これ五番テーブルね」
彼がアルバイトに入ってきた時、思わず息を呑んだ。
綺麗な二重のくりっとした猫目。
すっとした鼻筋。
キュッと尖った綺麗な顎のライン。
誰もが目を引くその整った顔立ちは、8年前に亡くなった私の元夫、廉に瓜二つだったのだ。
しかもそれだけじゃない。
「あ、花凛さん、忘れてる。これも持ってって。」
「え?」
お皿を持って歩き出した私が振り返ると、
「俺の愛♡」
と投げキッスをする仕草を見せ、またニッと笑った。
「もぉ~、ほんとそういうの反応に困るから、やめてよね…、廉くん」
なんと、彼は名前まで同じ、”廉”だったのだ。
次のお話はこちら。




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