キンプリ妄想歌手小説「かた結び」(Doll続編)2話

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居酒屋で働くシングルマザーの花凛。なぜだか同じアルバイトの年下の超イケメン君になつかれて、困惑中…。
イケメンだからってわけだけじゃない、その彼は元夫の廉にそっくりだったのだ…!

前のお話はこちら


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年下イケメンが言い寄ってくる理由とは?

「廉くん、今日私まかない当番なんだ!どんなの食べたい?」

うちの店では、順番にまかない当番が回ってくる。
その日残った食材で、みんなの分のまかないを作る。即席創作料理と言うことになる。

今日は若いアルバイトの女の子が当番のようで、廉くんにまとわりついてキャピついている。

「私、明日当番だよ!私も廉くんの好きなものを作ってあげたい!」
「ちょっと!私が先に聞いてるんだから!廉くん、何食べたい?」

廉くんが店に入ってきて、店の女の子たちの数名は一目惚れしたらしく、その他にも、彼氏がいてもやっぱり廉くんほどのイケメンとなるとキャーキャー言いたい!と言うライトなファンも含めると、店のほとんどの女の子が、廉くんを取り合うような状態となっている。

「俺は何でもいいよ?」

廉くんは優しくにこっと微笑んで、すぐにその子のそばを離れて私の隣にやってきた。

「俺は、花凛さんの作ったご飯食べたいなぁ」

またこの子はそういうこと言う…。

廉くんの向こうに、さっきの若い女の子たちの能面のような顔が見える。

「は?廉くんの花凛さんに対するあれって何なんだろうね?」
「あれじゃない?特定の女の子と仲良くしちゃうと角が立つから、“絶対ないところ“に優しくしてる分には店の平和が保たれる的な?」
「あー確かに!」
「でも、廉くんは冗談で言ってるだけなのに、まさか本気にしちゃったりしてないよね?」

えぇえぇ、もちろん、本気になんてしてませんよ。
ていうか全部聞こえてるんですけど。もうちょっと小さい声で言ってくれませんかね。
あ、わざと聞こえるように言ってるのか。このおばさんが変な勘違いしないように。

でも、こういった無駄ないざこざが生まれるから、廉くん、変に私に絡むのはやめてほしいなぁ。

「いいね、あんなイケメンに言い寄られて」

廉くんがいなくなった後、そっと私の横にきて囁いてきたのは、この店で唯一同年代で仲良くしているパートの幸子さん。

花凛「からかってるだけだって」
幸子「それはわかってるよ。あんな若い子が、私らみたいなおばさん、本気で好きになるわけないって!」

あ、そうですよね。幸子さんは結構毒舌で、はっきりものを言う。だけどそういうところが付き合いやすくて、仲良くしている。

幸子「でもさぁ、冗談でも何でも、悪い気はしないよね?あんなイケメンに、ちょいちょい声かけられるなんて。うらやましいっすわ!」

常連さん

「すいません!注文いいですか!」

お客さんから声をかけられハッと仕事モードに戻る。

「お待たせしました!」

小走りでそのお客さんの席に近づく。あ、いつもの常連さんだ。ここ最近、よく来てくれる同年代位のサラリーマン風の男の人。

「えっと、刺身の盛り合わせと~、釜揚げしらすの豆腐サラダと〜、釜出し卵焼きで!」
「はい、いつもありがとうございます」
「え、もしかして僕たちのこと覚えてくれてます?」

「いつもありがとうございます」と言う私の言葉に、お客さんが反応してぱーっと表情が明るくなる。

「はいもちろんです!よく来てくれてますよね!」
「うほー!お前よかったじゃん!」

1人がもう片方の肩を小突く。

ん?何がよかったんだろう?

「こいつ、お姉さん目当てでこの店通ってるんですよ」
「お前…っ!」
「え?あはは、そうなんですね。ありがとうございます〜」

飲み屋のお客さんに、こういうこと言われるのは、特に珍しいことではない。
軽くあしらって、厨房へと注文を通しに行く。

すると、カウンター越しにこちらを見ていた廉くんと目があった。
もともと猫目だが、今はさらに目つきが鋭い。

廉「花凛さん、何、あの客。迷惑な客だったら、俺、注意しますよ?」
花凛「え?全然!常連さんが気さくに声かけてくれただけ。何も迷惑なことなんてされてないよ?」

廉くんは「ふーん」と不満そうな顔をして厨房に戻っていった。

それからも何度か、あの常連さんの席から追加注文を受けるために呼ばれ、最後のデザートの注文の時に、「あのこれ…」と小さな紙を手渡された。

受け取ってから紙を開いてみると、そこには電話番号が書いてあった。

「よかったら…今度、お食事でも、…行きませんか!」

顔真っ赤にしたお客さんが、まるで高校生が勇気を振り絞って告白するみたいな言い方で、そう言った。

いちど手にしてしまった紙を、テーブルに置いて帰るのもさすがに失礼だと思い、「うふふ〜そうですね…」と曖昧に濁して、テーブルを去った。

「見ーちゃった」

洗い場に入っていると、幸子さんがニヤニヤしながら隣にきた。

「さっき、お客さんから口説かれたでしょ?何か紙もらってたよね?電話番号でも渡された?」

お客さんから電話番号渡されると言うのも、たまにあることなので、遠くから見ていた幸子さんはすぐに悟ったようだ。

「あ、うーん、まぁね」
「へ~やっぱ花凛さん、モテモテですね~。さっき”あたしらオバサン”なんて言ったけど、一緒にしたら失礼だったわ~。さすが年下イケメンにも言い寄られるほどの花凛さん!私とは違いますわ~」
「もー、何言ってんの。これだって、酔っ払いがからかってるだけじゃん」
「そうかなぁ~?まぁ廉くんはともかくとして、あのお客さんは案外本気なんじゃない?年も同じくらいっぽいし、なんか誠実そうだったし。花凛さんだってさ、ずっと女手ひとつでがんばってきたんだし、誰かいい人いれば、恋くらいしてもいいと思うよ~?ぶっちゃけ、お客さんとくらいしか、出会いないじゃんね?ここのアルバイトは若い子ばっかりだしさ~」
「はいはい、もういいから。この年で恋愛なんてね、考えてないから」

確かに出会いはないけど、そもそもそんなの求めてもない。
今は、咲人がサッカーがんばってくれればそれでいいし、そのための生活費を稼ぐので精一杯。
恋愛なんて考えられないし…

私には、そんな資格はない…。

本気ですよ

店の外に出てゴミをまとめる。
これが一日の最後の仕事。
ふーっ、今日も一日仕事がんばった。

カタン…。

物音に振り返ると、後ろに廉くんが立っていた。

「あぁ、お疲れ様」

いつもなら、「花凛さん、おつかれぇ~っす」と軽い声が飛んできそうだが、なんだか廉くん機嫌が悪い?

「さっき、幸子さんと話してるの聞こえちゃったんですけど、あの常連客に電話番号渡されたんすか?」
「え?あぁ…まぁ」

幸子さん、通常の声がデカめだからなぁ。普通に洗い場で話してたから、後ろ通りかかったら聞こえててもおかしくない。

「だから、俺が言ってあげますよ!そういうこと迷惑ですって!」
「えっ別にいいよ!そこまでしなくても」

常連客とトラブルなんて起こしたくない。慌てて私が否定すると、廉くんは、ムスっと黙り込む。

「連絡…するんすか?」

「えっ!?しないよ!」

それでも、廉くんの私をにらむような目つきは和らがない。

「じゃあ、電話番号の紙、いらないよね?俺が捨ててあげる。ちょうだい」

廉くんが手を出す。

「え…」

別に連絡する気はなかったからいいんだけど…人の電話番号を勝手に他の人に手渡すのも気が引けるので、少し戸惑う。

「嫌なの?」
「嫌…とかじゃないけど…」
「じゃあ、ちょうだい」

廉くんが、さらに前に手を伸ばす。
なんだか、その静かな圧に抗えなくて、エプロンのポケットからさっきの紙を取り出して、廉くんに差し出した。

廉くんは私の手から紙を受け取った。
と同時に、私の腕をグッと引いた。

「わっ…!」

思わず廉くんの胸に飛び込むような形になってしまい、廉くんに抱きとめられる。

「俺、本気ですよ?」

そう言って、廉くんが私をギュッと抱きしめた。

「ちょっと何してんの!?」

思わず、グイっと手を突っ張って、廉くんの体を突き放す。


「だって…!花凛さん、いつも俺の言うこと、本気に受け取ってくれないから!」
「そりゃそうでしょ!本気じゃないでしょ!なんで廉くんみたいな若くてイケメンな子が、私みたいなオバサンを本気で好きなのよ!誰が見たって冗談だってわかるでしょ!」
「なんでっ!なんで歳だけで、決めつけるんだよ!
さっき、幸子さんも、俺はナシだけど、あの客なら年齢も近いからいいって。なにそれ、あの客のこと何にも知らないのに、なんで俺より花凛さんを本気で好きだってわかんの?
俺が年下だからって、なんでそれだけで恋愛対象外なの!?」
「だってそれは…でもそうじゃん…!9歳も年違うんだよ!?」

「だから…っ!あーっもぅっ!
じゃあ、これで俺の気持ち、信じてくれる?」

そう言って、廉くんがもう一度私の腕を掴んでぐっと引き寄せ、キスをした。

ドンッ。

今度は思いっきり廉くんの体を突き飛ばした。

「なっ…!何してんの!?サイッテー…!だから、そういうところが子供だって言ってんの!!」

そう言うと、やりかけだったゴミ袋もそのままに、店の中へと走って逃げ帰った。

廉「くっそ…なんっで……」

信じらんない信じらんない!

ここ職場だよ!?そこでいきなりキスとか、もうガキ!ガキ過ぎるでしょ!

どうせ、自分がゲーム感覚でからかってた女が、他の男にちょっかい出されてるの見て、男の狩猟本能に火がついたの、自分が本気出せば簡単にこっち向かせられるぜっていうマウントなのか、どっちにしても、そんなのそっちのプライドが満たされるかどうかの問題に私を巻き込まないでほしい。

私だって…

そんなことされたら、平常心じゃいられないんだから…。

つづく

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