キンプリ妄想歌詞小説「koi-wazurai」3話~君を待ってる~世界を変える人

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キンプリメンバー6人の所属する高校のサッカー部のマネージャーになったら…?という妄想紅一点設定小説です。

「世界を変える人」とは、一体6人の中の誰の事でしょう~?

 

またこちらは”音楽小説”といって、毎回何かしらのキンプリの曲をストーリーと絡ませて紹介していくスタイルとなっています。

3話のサントラは「君を待ってる」です!

高橋優さん作詞のこの曲は、「岩橋くんの曲!」とも言われています。歌詞、めっちゃリンクしていますよね。

 

2話はこちら→『koi-wazurai』2話~Sha-la-laハジけるLove~年上キラーと爽やか王子とわがまま姫

 

「そうだろ?玄樹」

 

平野の鋭い視線に、岩橋くんがビクっと一瞬体を硬直させる。

 

やめて…。それ以上言わないで…。

 

横目に見えてるけど誰も声をかけない

目に見えない大きな壁が 人と人の間にあるらしい

 

「必要ないです」と言われながら生きてるようだ

ひとりぼっちで

その少し遠く 世界は今日も輪を描いて騒いでいる

 

King & Prince「君を待ってる」

作詞:高橋優 作曲:Susumu Kawaguch・草川瞬・佐原康太

 


 

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新人いびり

結局グランドが水浸しになってその日の練習はできなくなり、「今日は部活なし!」とみんなが喜んだのもつかの間、怒った河合先生が外周と筋トレを命じ、余計にきつい練習メニューとなってしまった。

 

風「皆さん、ごめんなさい。岸くんも、私のせいで先生に怒られてごめんなさい」

平野「岸くん、うまく場を収めてくれたもんね?」

岸「うまくっていうか、普通に俺、罪を着せられて怒られただけだったけどな!」

風「岸くん、私のせいで怒られちゃって…。本当にごめんね…」

 

廉「大丈夫大丈夫!岸くんはいつもそういう役回りやから!なぁ~?ゆ~たぁ~!」

しょんぼりする私を見て、すかさずれんれんが岸くんの肩に腕を回し、陽気にフォローしてくれる。

 

岸「どういう役回りだよ!あ、でもホントに大丈夫だよ~」

岸くんがれんれんにツッコミながらも、私には優しく手をふる。

 

平野「でもさぁ、マネージャー初日の舞川は、自己判断でスプリンクラー出したりしないよな?出すように指示されたからだったんだろう?」

岩橋くんがビックっと小さく体を硬直させた。

 

風「あの、それは…」

平野「そうだろう?玄樹」

 

 

一瞬、部室が沈黙に包まれる。

 

 

岩橋「えーっと…ごめんなさい舞川先輩。スプリンクラーが壊れてるっていうの、僕忘れてて…」

平野「そんなはずないだろ?昨日だって、先生に”誰かが間違って出さないようにレバーをロープで固定しとくとかしたほうがいい”って、先生に言ってたのお前だろ?お前のいつもの仕事ぶり見てたら、うっかり忘れてて、なんてことあるはずないだろ?

どうしてこんなこと?」

 

 

岩橋くんは答えない。

 

「じゃぁ理由とかはいいから、とりあえず舞川にはちゃんと謝れよ」

 

みんなの視線が、岩橋くんに集中する。

 

 

「も、もういいからいいから!」

緊迫した空気とみんなの刺さるような視線に耐えられなくなって、結局私が沈黙を破った。

だけど、それは岩橋くんを助けるためじゃなかった。

 

それ以上、真実を追求してほしくなかった。

 

たぶん私は新人いびりされた。わかってる。

だけど認めたくなかった。

岩橋くんの態度からして、たぶん出会った瞬間から私のことを嫌ってた。

自分が、何もしていないのに出会った瞬間に人から嫌われるような人間だなんて、そんな悲しい事実を”また”受け止めるのが怖かったんだ…。

 

見えない壁

夜。

なんか、転校2日目から、大変な日だったなぁ。

食事の時間になり、食堂に降りていくと、サッカー部員たちはもう食事を始めているところだった。

 

あ…。

端の角の席に岩橋くんと神宮寺君が2人で座っている。

その周りだけが輪を描くように少し空いていて、他の部員たちが座っている。

 

みんないつものように、ガヤガヤと楽しく喋りながら食事をとっているけど、岩橋くんと神宮寺君2人だけが無言でポツポツと箸を口に運んでいた。

その空間だけ、見えない壁で囲われているみたいに。

 

さっき平野が、みんなの前で岩橋くんを責めたことを、みんな引きずっているんだろう。

平野みたいなタイプって影響力があるから、本人がみんなを巻き込むつもりはなくても、勝手にみんなが平野の意見に追随しちゃうというか。これだからイケメンは…。

 

「ここ、座っていい?」

私は神宮寺君の隣にお盆を置いた。

 

「なんでここに来るんですか?他にも席空いてますよ」

岩橋くんがジロリとにらむ。

 

「ほら玄樹、そういうこと言わないんだぞ!どうぞどうぞ」

神宮寺君が岩橋君をなだめ、ちょっと自分のお盆をずらしてくれる。

 

なんとなくいたたまれない気持ちになってここに座ってみたものの、特に会話を盛り上げる術もなく…。

それなりに話しかければ、神宮寺君はにこやかに答えてくれるけど、岩橋くんは相変わらずムスッとしたまま。

やっぱり嫌われてる…。

 

だけど、なんとなくほっておけなかった。

 

周りが楽しそうにすればするほど、自分の周りにだけぽっかりと空間があること、それを誰もがわかっていながら声をかけてくれないこと。

そのすべてが、自分の存在を「必要ないです」と言われているようで、この世界で自分は一人ぼっちなんだと知らしめられているようで、どうしようもない孤独と悲しみに押しつぶされそうになる。

その気持ちは、誰よりも私が一番よくわかっている。

 

 

 

世界を変える人

「あー腹減った~!あ、ここ空いてる?」

 

「空いてる?」と質問したときにはすでにお盆をそこに置いて、岸くんは岩橋くんの隣にどかっと座った。

 

「イワゲ~ン!お前、また紅しょうが残してんのか!?俺が食べてやろうか?」

それもまた答えを聞く前に、岩橋くんのお皿から勝手にとって、もうすでに口に入れている。

「あー!俺、最近食べれるようになったのにぃ!」

「そうなの!?」

岸くんが慌てて噛むのをやめて、おろおろしながら口をふくらめている。

 

神宮寺「いや、今さら返せないから飲み込んで!」

岸「うほっ!喉詰まった…!グハッ!」

神宮寺「もう何やってるんですか…」

神宮寺くんがやれやれと言った感じで豪快にむせている岸くんの後ろに回って背中をさすってあげる。

岸「だって出せとか飲めとか、混乱するだろうが!」

神宮寺「いや、出せとか誰も言ってないし…」

 

そのやりとりを見ていて、周りにいて座っていた部員たちがギャハハと笑い、

「岸くん大丈夫?」と水を持ってきてくれたり、「玄樹、じゃぁ俺の紅しょうがやるよ」と自分の皿から紅しょうがを移してくれたりした。

 

いつの間にか、見えない壁はなくなっていた。

 

大人数でご飯を食べに行ったときとか、教室の中でも起こる現象だけど、自分の輪の話題があまり盛り上がってないと、あぁあっちは楽しそうだなぁ、座る席間違ったなぁとか思ったりすることがある。

または、どこの輪からも外れてぽつんとしている人がいたりすることがある。

 

そういう時に、多分3種類の人間がいる。

 

自分が輪の中心にいて、寂しそうな人に気づかない人。

自分が中心にいたとしても、寂しそうな人に気づいて、中心の輪から出て、その寂しそうな人に寄り添ってあげる人。(多分私はこれくらいの優しさと気づきを持っていると思う)

 

そしてもう1種類の人。これは特別な人種だと思う。

 

いつも輪の中心にいて、どこに移動してもその中心ごと持ってきちゃう人。寂しそうな人のところにその人が声をかけると、周りも巻き込んで今度はそこが輪の中心になっちゃう。

孤独に寄り添うんじゃなくて、孤独に包まれていた世界ごと変えちゃう人。

 

 

岸くんは、多分この3番目の人なんだ。

 

私が岩橋くんに寄り添ったところで、その見えない壁の中に私も入っただけ。

見ないふりして他の輪に入ってワイワイやるよりはいいと思うけど、結局寂しそうにしている人を救ってあげるだけの力は私にはない。

だけど岸くんは、救ってあげるつもりもなくて、ただ自分が話したいから岩橋くんに声をかけて、そしたら岸くんの周りにみんなが集まってくるから自然と岩橋くんもその輪の中に取り込まれていく。

 

 

そういえば昨日の私の転入挨拶の時もそうだった。私が足が震えて困っていた時、岸くんが教室に飛び込んできてみんなの注目をかっさらっていったんだった。

その後岸くんの横断歩道の話を聞くことで、私もクラスの笑いの中の一員になれていた。

すごく不思議な力を持った人。

 

食事が終わってお皿を片付けていると、神宮寺くんが後ろからこっそり声をかけてきた。

「舞川先輩、ありがとうございました、玄樹のこと気遣ってくれて」

「ううん、私は何も。神宮寺くんこそ、いつでも岩橋くんのそばにいてあげてて、ほんと仲良いんだね」

「入学式の日からずっと一緒にいるんで。あいつ、ちょっと性格奇抜なとこあるから、俺がそばにいてやんないとって思うんですよね。じゃぁ、行きますね。おい、玄樹待てよー」

神宮寺君がペコっと頭を下げて、岩橋君を追いかけて階段を上っていった。

 

 

「舞川、お前はいいのかよ?あいつちゃんと謝ってないだろ?」

食堂の入り口を出ると、腕組みをしながら壁に寄りかかって平野が立っていた。

 

 

「俺、中途半端なの、すげーやだかんな!」

いや、そんな駄々っ子みたいな言い方されても…。

 

 

「わかった。今度ちゃんと話してみるから。心配してくれてありがとう」

「別に心配してるわけじゃないけど…」

ぶつくさ言いながら、平野が部屋に戻る。

 

「舞川ちゃん舞川ちゃん!」

今度は後ろから岸くんが追いかけてきた。

 

「ありがとね、玄樹のそばに来てくれて」

なんかみんなして、岩橋くんの事すごい気にしてる。どれだけ愛されてるんだ、あの姫は(笑)

 

「舞川ちゃんのおかげで、玄樹がみんなの輪の中に戻れたよ」

「え?それは岸くんのおかげでしょ?」

「俺?違うよ。舞川ちゃんが玄樹のことを許してるって意思表示してくれたから、みんな玄樹に話しかけやすかったんだと思うよ。部室で紫耀が玄樹に怒ったじゃん?紫耀はただ自分の思ってることを素直に言ってるだけなんだけど、紫耀ってカリスマ性があるっていうか、影響力あるからさ、みんなも気にしちゃうんだよね。

でも当事者の舞川ちゃんが玄樹に話しかけてくれたから、みんなも話しかけていいのかな?って空気になったんだと思うよ。

紫耀は正義感強いからさ、曲がったことを許さない!ってとこあるけど、玄樹の事はすごい可愛がってるんだよね!あの時批判しているようで、”いつもの玄樹の仕事ぶり見てたらうっかりなんてあり得ない”って言ってたでしょ?玄樹の仕事がいつも完璧なこと、一番認めてるのは紫耀だから」

 

なにげに平野のフォローもしてる。

いじめられっ子を助けると、形成逆転していじめっ子が悪者みたいに見える現象がある。

そういう集団の構図とか全部わかった上で、いろんなところに気を使いながら行動している人なのかも。天然って言われてたけど、実はそういうところではすごく周りのことが見えていてリーダーに向いているタイプなんかな?

 

「これからも玄樹と仲良くしてやってよ。多分玄樹には舞川ちゃんみたいな理解者が必要だと思う」

 

え?

 

「それどういう…?」

「あ…いや別に深い意味はないんだけど…」

岸くんはちょっとあたふたしたように頭をポリポリかきながら、どこか観念したように上目遣いで伺うようにこちらを見ながら話し始めた。

 

「昨日、転入の挨拶してる時、みんなに質問攻めにあって足震えてたでしょ?もしかしたら、何か人間関係に関するトラウマ的なこと抱えてる子なのかなあって…。実は玄樹も、ちょっと人間関係苦手なところあって。そういうのを感じて、さっきもすぐに玄樹のところに行ってくれたのかなあって思ってさ。俺なんてすげーずぼらだからさぁ、そういう繊細なところわかってやれなくて。だから舞川ちゃんが、玄樹の弱い部分に理解して寄り添ってくれるような存在になってくれたらいいなって思ったんだ!全然違ってたらごめん!じゃ!」

 

この人、全部見抜いてた。

私が足震えていたことも。

岸くんはあの時、遅刻して教室に飛び込んできた。

走ってきて飛び込んできたなら、私がみんなに質問攻めにあって笑われて、足が震えていた経緯は見てないはず。

多分岸くんは、もう完全な遅刻だと分かっていたから、教室に入るタイミングを廊下から伺っていたんじゃないかな?そしたら、転校生が挨拶をしているところで、よく見たら足が震えてた。

それでわざと勢い良く教室に飛び込んで、みんなの視線を自分に集中させるように仕向けた…?

 

 

そうだとすると、この質問にもきっと…

 

「岸くん、私やっぱり明日河合先生に私がやったって話すよ」

「あーダメダメ!言っちゃダメ!」

 

そう答えると思ってた。

岸くんが罪をかぶってくれたのは、瞬時にあの場のいきさつを悟って、岩橋くんをかばうためやったんや。

 

「そうすると、なんで入ったばっかの舞川が勝手にスプリンクラー出そうって判断したんだ?って話になって、結局”玄樹が舞川ちゃんをイジメてた”って先生にバレちゃうから!だから、舞川ちゃんも、言っちゃダメだぞ!」

 

ぎゃふっ…(*_*)「イジメ」ってワード、極力避けてたのにまさかここで突然爆弾投下されるとは…。

 

だけど、あまりの悪気のなさについ「ふっ」と笑ってしまった。

天然なようですごく周りが見えていて瞬時に誰かが傷つかないように行動できる能力を持っていたり、そうかと思えば突然地雷ワードを投下するやっぱり天然な部分と、そのちぐはぐさがきっとこの人の魅力なんだろう。

 

 

日本に帰ってきたら、少女漫画みたいな胸キュンな恋をすると決めていた。

転入早々イケメンになぜだか一目惚れされるような王道少女漫画みたいな恋じゃなくて、

水しぶきの中、手と手を取り合いながら駆け抜けちゃうようなトレンディーな恋じゃなくて、

紳士的な執事風年下イケメンから尽くされちゃうような恋愛ゲームアプリみたいな恋じゃなくて、

心の中がホワッとあったかくなるような、内面から「好きだ」って言う気持ちが湧き上がってくるような。

 

多分さっき、岩橋くんは取り囲む輪の中心にいる姿を見た時から、

昨日の朝、「足、大丈夫?そっか、よかった」と言ってニカっと笑った顔を見た時から、

もしかしたら横断歩道で知らない運転手さんのことを思ってボタンを押せずに頭を抱えている姿を見た時から、

多分…

 

「あのっ!」

 

すでに階段に向かって歩き始めていた岸くんが振り返る。

 

 

「好きになっちゃいましたー!!」

 

 

この人のこと、好きになっていたのかもしれない…。

 

 

岸くんがギョッとした表情でキョロキョロと周りを見回している。

 

 

でもそれよりヤバいのは、その後ろで階段を上っていた途中の平野もまた呆然とこっちを見ていたことやった。

ヤバい…関係ない人にも聞かれた…。めっちゃ恥ずかしいやーん!

 

 

その場にいられなくなって、思わず逃げ去った。

取り残された岸くんが、あわあわしていた。

 

続きはこちら!

キンプリ妄想歌詞小説「koi-wazurai」4話~Prince Princess~イジメ

 

この小説のモデルとなっているキンプリちゃんたちの本当にあったエピソードについては、こちらにまとめています!↓

【本当にあったエピソードkoi-wazurai1話~4話】私の中のキンプリメンバーのイメージ

 

「koi-wazurai」の小説一覧はこちら!

徐々に挿絵追加中!

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岸くん回完結!第1章完結!↓

第2章始まり!海ちゃん、平野くん回↓

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平野、廉、三角関係回↓

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平野、廉、三角関係がついに完結!↓

アフターストーリー
①はわけあって、別の小説サイトに載せてます。


 

スピンオフ作品
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