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キャスト富田くん役が田中圭で納得!映画「スマホを落としただけなのに」小説原作からあらすじ犯人をパパっとネタバレ! 君と僕の6ヶ月 3話「ヴィーナス」 (SMAP「オレンジ」恋愛三部作)

君と僕の6ヶ月 3話「ヴィーナス」 (SMAP「オレンジ」恋愛三部作)

このお話は、SMAP「オレンジ」恋愛三部作をモデルにした音楽小説です。

君と僕の6ヶ月 2話 「性悪な女」(SMAP「オレンジ」恋愛三部作)




金星。
英語で言うとヴィーナス。
ギリシャ神話で言うところの「愛と美の女神」。

その美しさから全ての男を虜にしていたー。

「えっ!それ、まさに私のことじゃん!愛と美の女神!
どれどれ?金星って」

彼女はワクワクしながら身を乗り出す。

藍沢美華。
優介より3つ年上の23歳。
OL兼キャバ嬢。

清楚で整った顔立ちと、笑うと途端にちょっと幼くて人懐っこくなるところ、すらりと伸びた華奢で白い手足、そのどれもが男たちを惹きつけてやまない。

そんな高嶺の花と、二人で会える時間を優介は奇跡的にゲットした。

楽しい時間をあげると豪語した以上、何かしらの話のネタを持って行かなければと、優介は彼女と会う前の日までに雑学を予習していくのが日課となっていた。

今日は夜空を見上げながら、星にまつわるギリシャ神話の雑学を披露している。

「探すまでもないよ。ほら、あそこにひときわ明るい星があるでしょ?」

金星は、 他の星の追従を全く許さないほどに、圧倒的な光を放っている。
周りとの差は歴然。
確かにその美しさは、彼女の美しさに例えられる。

「だけどね、愛と美の女神、ギリシャ神話で言うとアフロディーテという名前なんだけど、アフロディーテにはその美しさとは裏腹に、知られざるとんでもない一面があったんだよ」

彼女が「はて?」と首をかしげる。

アフロディーテはその見た目の美しさとは裏腹に、かなりの性悪女だったらしく、結婚してからも浮気グセが治らなかった。
あらゆる美しい男に手を出していた。

アフロディーテがむりやり結婚させられたのはヘパイストスという醜い男。
その容姿を嫌悪するように、美しい男とばかり浮気を繰り返していたアフロディーテ。
中でも一番のイケメン、アレスをひどく気に入ったアフロディーテは、ヘパイストスの留守中に家に連れ込み情事に及んでいた。

ヘパイストスはある日、アフロディーテの 浮気現場を押さえるため、ベッドに見えない網を仕掛ける。
アフロディーテとアレスが裸でベッドで抱き合っているところを、縛り付けて動けないようにしてしまった。
そしてそんな二人の姿をたくさんの神に見せつけ、愛するアフロディーテを辱めたのだ。

「なにそれ〜! その男めちゃくちゃ陰険じゃん! さいってー!キッモ!いくら浮気されたからって、本当に愛している人にそんなひどい仕打ちできなくない!?」

「そうかな、 逆に本当に愛していたからこそ解放してあげたんだったりして」

最初にこの話を図書館で読んだ時、優介も子供ながらにヘパイストスのやり口が汚いなと思った。
悪いのはもちろんアフロディーテだが、こんなやり方で懲らしめなくてもいいではないか。
それにこんなやり方をしてしまったら、絶対にアフロディーテの心はヘパイストスに戻っては来ないだろうと。

しかし、結局その事件の後、ヘパイストスはアフロディーテに離婚を突きつけ追放する。
どうせ別れるなら、どうしてそんな女々しいことをしたのか?

もしかしたらヘパイストスは、自分とはかけ離れたあまりにお似合いな美しい二人の姿を見せつけられ、二人の関係をみんなに見せつけることで自分の気持ちへの区切りとしたのではないか?

卑怯な手を使って彼女をモノにしたが、ずっと自分に自信がなくて。

だけど本当に彼女のことを愛していたから。
彼女とアレスの姿をわざと目の当たりにすることで、もっと深読みするならば、卑劣な方法で完全に自分を嫌わせることで、彼女を解放することを決意したのではないか?

自分だったらどうするだろうか?と優介は考えた。

以前は美華がキャバクラのバイトをするのは週に2、3度だったが、最近は「指名が多くてさばききれない」という理由で、週に5日もバイトに入っている。
そのおかげで優介はほぼ毎日彼女に会えるようになったわけだからそれは嬉しいことなのだが、自分と会っている時間の前に男たちに媚びて笑う彼女の姿を想像すると、やはり複雑だ。

時にはアフターをすることもあるらしく、美華がなかなかコンビニに現れない日は、 今頃どんな男と何をしているのかと想像しては胸がかきむしられる。

でもだからといって、それを咎めて嫌われるのも怖いし 、ヘパイストスのようにスパン!と見切りをつける潔さもない。

アレスと愛し合ったと知っているそのベッドで、その事実には目をつむって美華を抱くのかもしれない。

それくらいに見境なく彼女に恋に落ちていた。

「相手を幸せにするために、自分が嫌われるように仕向けるなんて、私だったら絶対ありえなーい!自分の好きな人が他の誰かと幸せになるなんて、絶対嫌!なんで自分が幸せにしてやる!何が何でも離さない!って思わないのよ!その時点で愛が足りないのよ!」

美華は鼻息荒く怒っている。

「だけど、あーんなに綺麗なのに、もったいなーい。ヴィーナス、愛と美の女神ってところまでしか知りたくなかったなぁ~。夢が壊れちゃった~」

その言葉、本当にそっくりそのまま美華にお返ししたい。

優介は、美華が見上げている金星を一緒に見上げた。




その時二人の視線の先に、ピューン!と明るい光が伸びていった。

美華「あ?!あ、あ、あ、あぁーーっ…」

二人「…流れ星!!」

二人の声がシンクロした。

二人は思わず手を取り合って、飛び上がるように立ち上がった。

「み、見た今!?」

「見た見た!すごかった…!!」

「私、あんな長いの初めて見た!」

「僕だって!それにすごい明るかった!最初、何か人工的な明かりかと思うくらいに…」

「でも最後シュンッ!て消えたもんね!?絶対流れ星だよね!?」

「うんすごかった!本当にすごかった!!」

二人はあまりの興奮に、かわるがわるしゃべった。

はたと我に返ると、きつく握られた両手と、あまりに近くにあった美華の顔に、驚いて優介は飛び退いた。

「わわっ!ごめん…っ。僕としたことが取り乱しました…!」

両手をバタバタさせてアワアワする。

「そりゃ取り乱すでしょ今のは!」

まだ興奮冷めやらぬ美華が、優介の背中をバチーンと叩き、再びドサっとベンチに座った。

「あ〜ぁ、あんまりびっくりしたから願い事言うの忘れちゃったー。あの長さだったら絶対願い事3回言えたよね!?優介は何か願い事した?」

「 願い事?いや…。今落ち着いて考えても、特に思いつかないや」

「そっかー、医大に合格している時点でもう医者になるっていう夢は叶うんだもんね。何も星に願わなくてもいいってことか」

「いや、別に僕は医者になるのが夢ってわけじゃないです。前に話したと思うけど。

美華さんは?何か星に願って叶えたい夢があるんですか?」

「私の夢はねー…歌手になること!」

まさかそんな現実感のない夢が飛び出すとは思ってなかったので、優介はしばらく絶句した。

「ねぇ!今、23歳で歌手とかもう遅いだろ、とか思ったでしょー!」

「え、あ、いや…」

「あのねー、私はちょっと顔がかわいいからってアイドル歌手目指してるわけじゃないのよ!?私がなりたいのは、もっとちゃんとした本物の歌手なんだから!」

優介がまだ本気で聞いていないようで不満だったのか、美華は突然ジャングルジムに登り始めた。

頂上に立つと、手を挙げて高らかに宣言した。

「藍沢美華、歌いまーす!」

そう言って、美華はエアギターで歌いだした。

そのブッ飛んだ行動に呆れる間もなく、優介は思った。

あ…、また見つけてしまった。

彼女を好きな理由。

公園の静寂の中に、美華の通る声がどこまでも伸びていく。

それは、本当に本格的な歌手を目指せるほどの歌声だった。

勉強なんかで手に入るものではなくて、彼女にしかない才能。

そして、「これが私の夢です!」と言える確固たるものを持っている輝き。

やっぱり彼女は自分とは違う。

だから惹かれるんだ。

その時、美華がバランスを崩し、ジャングルジムにかけていた足が外れる…。

「痛ってぇ~~~…っ!」

「わわわ!ごめん優介!大丈夫!?」

優介は、見事に落ちてきた美華の下敷きになっていた。

「慰謝料期間、あと1ヶ月延長でお願いしまーす…」

帰り道。

優介は、ボディガードをするという約束のため、美華の家の方向まで送っていくことが日課になっていた。

「ね?歌、なかなかうまいでしょ?」

「うん、すっごくよかった!びっくりした!本気で歌手になれるよあれなら!なんかトロンボーンみたいな声っていうか」

「は?トロンボーン?」

美華が決して嬉しくなさそうな顔で聞き返す。

「そう、フルートやクラリネットみたいに細くてフワフワした声じゃないんだよ。金管楽器なんだよね。でも、ホルンみたいにくぐもってなくて、かといってトランペットほど強すぎない。なんかこう丸みがあって、存在感があって、ボーンって伸びるような…」

力説する優介に、美華は呆れたように言う。

「優介ってさぁ…、ほんっとに知識は無駄にあるんだけどさぁ、口下手っていうか、言うことズレてるっていうか、女心がわかってないっていうか。モテないのわかるわぁ~」

「えっ!?いや、今めちゃくちゃ褒めてたんですけど…ごめん、何か気に障ったんなら…」

「わ~かってる!言ってることはおかしいけど、いつもすごく一生懸命なのは伝わる。最初はすごく変な人かと思ったけど、一緒にいてなんか最近わかってきた。褒めてくれてんだよね。ありがと」

美華はニッコリと笑う。

「それにしても今日のあの流れ星、すごかったよね~!」

前を行く美華は、ピョンピョンと跳ねるように歩く。

なんか、今行けるかも…。

もうちょっと、距離を近づけたい。

あと一歩だけ。

前を歩き始めた美華の背中に、思いを込めてその一言を投げかける。

「美華」

「え?」という表情で美華が振り向く。

「…って呼んでいい?」

実は、それは一度挑戦して断られている。

自己紹介をした翌日から、美華は自然と優介のことを「優介」と呼び始めた。

あまりの急な距離感の詰め方に戸惑ったが、嬉しかった。

そこで、優介もさりげなく「美華」と呼んでみようとしたが

「彼氏でもないくせに、100年早い!」

と怒られた。

では、なぜ自分は彼女でもないくせに馴れ馴れしく「優介」と呼ぶのか…。

もちろんそんな理屈は自分至上主義な彼女には通用しないから、「私は特別だからいーの!」でふっ飛ばされてしまったのだが…。

だけど、今ならそんな彼女にもう一歩近づけるのではないか。

そんな願いをこめて。

「だから~!呼び捨てで呼んでいいのは彼氏だけって言ったでしょー!優介のくせに生意気~~!」

美華は優介の口を両手で掴みビヨビヨする。

「は、はから〜、はれひ(彼氏)になるっていう、はのえへい(可能性)は…?」

「ないよ!」

食い気味で美華が答える。

「だって私、彼氏いるもん。一緒に住んでるし」

美華はマンションを指差す。

優介は、美華の言葉を頭の中で反芻し、数秒かけてやっと言葉の意味を理解する。

「えぇーーーーっ!!?か、彼氏いんのーーーっ!!?」

「うん、言ってなかったっけ?」

美華がキョトンとして答える。

ない、ない!!

言ってないって!そんな大事なこと!!

それで、やっと理解する。

美華がいつも買っていたのは、彼氏の分の食料や酒やタバコだったのではないか?

どうりで随分量が多いと思ったが、大食いの大酒飲みだったのではなくて、単に二人分だったのだ。

マ、マジかぁ~~~~・・・・!!

「えっと…、じゃあ僕と会ってくれてたのは、本当に単純にボディーガード代わりと慰謝料のため?」

実は、美華が自分といる時、けっこう楽しそうにしてくれていると自負していた。

自分は貢ぎ物を餌に会ってもらっている他の男たちとは別格なんだと。

「う〜ん、それもあるけど…だって私たちって友達じゃん?私、そういや友達って優介しかいないんだよね。女友達はみんな妬みっぽくて付き合うの面倒だし、男友達はみんな私のこと好きになっちゃうし」

美華に女友達も男友達もできない理由は妙に納得できた。

でも、待て待て。

僕も美華のことを好きになっちゃってる男の一人なんだけど。

子供扱いされているのか、なぜだか勝手に優介は友達枠に振り分けられているようだ。

「優介といると楽しいから!」

ニコニコと美華が言う。

彼氏がいるって事実を聞く前なら、半ば告白と受け取って勘違いしてしまうぞ。

これは天然で言っているのか、それともこれこそが男を手玉に取る彼女のテクニックなのか。

「彼は、どんな人?」

やめとけばいいのに、気が動転してそんなことを聞いてしまう。

美華「彼はね、一緒にいると夢が見られるの。

彼ね、画家の卵なの。それでいろんな場所に行って、いろんなキレイな景色を見せてくれるの。

絵って無限大だよ~。私、生まれてからずっとこの街で育って狭い世界で生きてきたけど、彼の絵は私をいろんな世界に連れて行ってくれる。

いろんな世界を見ると、どんどん歌詞も湧いてくるし。だから、彼は私を夢に向かって引っ張ってくれる人なの」

確固たる夢を持っている人間へのリスペクト。

俺が一番持ってないものを持っている人。

完敗だ・・・。

そんな相手に空っぽな自分が叶うわけがない。

キラキラとした瞳で彼氏のことを語る美華を見て、優介は自分の勘違いを心から恥じた。

今、この心にぽっかりと空いた穴は、美華に彼氏がいたことを知ったからではない。

その彼氏が自分とは比べ物にならないほど、素晴らしい夢を持っている男だったから。

そして、彼と同じく素晴らしい夢とその才能を持っている美華もまたあまりにも輝いていて、彼女のことをただ外見だけが取り柄の女だなんて思い込んでいた自分が心底恥ずかしかった。

さきほどの美華の歌声を聞き、そして美華と彼氏の関係性を知り、自分が憧れていたのはあまりにも高嶺の花過ぎて、何も持っていない自分なんかが、振り向いてもらえるような相手ではなかったのだという事実が、何よりも優介を傷つけていた。

自分と彼女の間にはものすごい格差があるのだと。

「じゃあね!今日もありがと!おやすみ優介!」

美華は手を振り、マンションに入っていく。

今までこんな簡単なことにも気づかないほど浮かれていた。

もし彼女が一人暮らしなら、彼女がマンションに入っていったすぐ後に、どこか暗かった部屋に灯りがつくはずじゃないか。

その日、こんな時間に窓から灯りがこぼれている部屋は一つだった。

そして、その他の部屋に灯りがつくことはなかった。

自分がへバイストスだったら美華の浮気を許せるか?なんて、真剣に考えていたことが笑ってしまう。

優介はヘパイストスですらなかった。

浮気相手のアレス?

いや、友達枠なんだからアレスにも及ばない存在だったということか。

恋人になった気でいた

君は今 誰かの腕の中…

SMAP「ひとりぼっちのHappy Birthday」作詞作曲:久保田洋二

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